クラビットとジェニナックの違い

ニューキノロン系抗生剤2つの使い分け 

キノロン系で圧倒的に処方数が多いのはクラビット(レボフロキサシン)ですが、たまにジェニナック(ガレノキサシン)の処方を見かけます。

呼吸器、腎機能障害があるとジェニナックの処方が多い印象があったので詳細を調べてみました。


適応症の比較

クラビット(レボフロキサシン)

割愛(感染症全般)

ジェニナック(ガレノキサシン)

咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎

クラビットは感染症全般適応となっていますが、ジェニナックはほぼ呼吸器系の疾患のみ

尿路感染と言えばとりあえずクラビットの処方を見ますが、ジェニナックは適応なし。(排泄経路が関わってくる)


耐性菌の違い

肺炎、中耳炎、副鼻腔炎を起こす主要な菌として肺炎球菌がいるが、耐性化が進んでおり、高齢者で分離された肺炎球菌のうち15%がキノロン系耐性(時期的にジェニナックはまだ販売されていない)を持っていたという報告もある。
(感染症誌 78 428-432 2004)

一方ジェニナックはクラビットに耐性を獲得している菌に対しても抗菌作用を示し、その抗菌力もレボフロキサシンより強力とされている。

この試験では、103株の肺炎球菌に対して感受性試験を行い、ジェニナックに対する耐性菌は0%クラビット含む他のキノロン系に対する耐性菌は2.8%となっている。

ちなみにこの時の肺炎球菌のうち、47%がペニシリン耐性、マクロライド及びテトラサイクリンには80%が耐性を示した。
(日本化学療法誌 OCT 2007)

薬物動態の違い

次は腎機能障害時にジェニナックの処方が多い理由について。

クラビット

代謝:24時間後までの尿中未変化体80%→腎代謝

腎障害の用法
20Ccr50で 初日500mg1回、2日目以降250mg1日1回。
Ccr20初日500mg1回、3日目以降250mg2日に1回。

透析除去:血中濃度62%に低下(40%除去)

ジェニナック

代謝:硫酸抱合、グルクロン酸抱合、24時間後までの尿中未変化体34%→肝・腎代謝

腎障害時の用法
低体重(40kg未満)の患者でかつ透析等を受けていない高度の腎機能障害(Ccr 30mL/min未満)の患者への投与は、低用量(200mg)を用いることが望ましい。

透析除去:血液透析11% 腹膜透析3%


クラビットはほぼ腎代謝であり投与量の大幅な減量が必要。
経験ですが、これでも血中濃度が上がりすぎてしまい、めまい、意識障害で入院になり、激怒した腎臓内科の先生がいました。

ジェニナックは肝・腎代謝であり、重度の腎障害でAUCが51%上昇したため、投与量が半量とされているが、重大な副作用はみられていない。
(ジェニナックインタビューフォーム)

尿路感染でキノロン系を使いたいなら腎排泄のクラビットになりますね。

Fe,Caとの相互作用の比較

キノロン系と言えば鉄、カルシウム、アルミニウムなどのとの相互作用があります。

クラビット

添付文書の記載
Mg、Al含有の制酸剤、鉄剤

Cmax,AUCの低下率
Fe:Cmax45%低下、AUC19%低下
Al:Cmax65%低下、AUC44%低下
Mg:Cmax38%低下、AUC22%低下
Ca:相互作用なし

参考:第一三共ホームページ

ジェニナック

添付文書の記載
Mg、Al、Ca、Fe、Znを含有する製剤、制酸剤、ミネラル入りビタミン剤等

Cmax,AUCの低下率
Fe:不明
Al:AUC58%低下
Mg:AUC58%低下
Ca:不明

FeやCa、Znについては詳細なデータがありませんが、避けるように記載はあり。


まとめ

多剤耐性肺炎球菌(肺炎、副鼻腔炎、中耳炎の原因菌)にはジェニナックが有効。

クラビットは腎排泄、ジェニナックは肝・腎排泄。

相互作用が少ないのはクラビット(Fe,Mg,Alは×)。


 2017年6月5日

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