ジプレキサとセロクエルの違い

ジプレキサ(オランザピン)とセロクエル(クエチアピン)の違いは?


ジプレキサとセロクエルはMARTAに分類される非定型の薬剤。

統合失調症以外に、当薬局では高齢者の不穏・興奮(認知症の周辺症状=BPSD)に対してよくセロクエルが処方されます。

ジプレキサは躁状態の患者さんにたまに出る程度なのですが、有効性や副作用に大きな差はあるのでしょうか。


基本情報

ジプレキサ(オランザピン)

適応:統合失調症、双極性障害における躁症状・うつ症状
用法:1日1回5~20㎎ (うつ症状には寝る前)
剤形:錠剤、ザイディス錠、細粒、注射
半減:30.5h

セロクエル(クエチアピン)

適応:統合失調症
用法:1回25㎎~ 維持150~600㎎ MAX750㎎ 分2~3
剤形:錠剤、細粒
半減:3.5h

セロクエルは投与量の幅があり調整しやすそう。
半減期も短く、寝る前だけ落ち着かせたいときに使いやすいとDrから言われたことがある。
高齢者に出るときは大体25㎎~50㎎が多いです。(主観)

下記で述べるようにジプレキサのほうが体重増加作用=食欲増進作用が強い。
このため食欲不振がみられる場合などに向いている。

ジプレキサとセロクエルのシステマティックレビュー

統合失調症に対するセロクエル(クエチアピン)とその他の向精神薬を比較した試験を比べたシステマティックレビューの中で、セロクエルとジプレキサの比較試験が14個ありました。

早期脱落者

ジプレキサ:54% 
セロクエル:69% 

この差は副作用によるもの(ジプレキサ:セロクエル=12% :11%)ではなく、効果が感じられないため(14%:25%)の割合が大きかった。

有効性

数十種類の基準をもとに2剤の間に有効性を検証したが、有効性に差は見られていない試験がほとんど。(14の基準のうち、PANNS、GAFの2つだけセロクエル優勢)

再入院の低さに関してはジプレキサが優勢。

副作用

死亡:有意差なし
QT延長:有意差なし
鎮静作用:有意差なし
錐体外路症状(EPS):セロクエル群のほうが抗パーキンソン病薬の使用が少なかったが、EPS,アカシジア等の差は見られなかった。
高プロラクチン血症:セロクエル群のほうが性機能不全の数が少なかったが、抗プロラクチン血症、無月経、乳汁漏出、女性化乳房などの副作用は差なし。
空腹時血糖:有意差なし
高コレステロール:有意差なし
体重増加セロクエル群のほうが体重増加が少なかった(8 RCTs,n =1667,RR 0.68,CI 0.51 to 0.92)
ベースラインからの体重増加セロクエルのほうが増加が少なかった



添付文書の副作用(市販後)を見ても体重増加に関してはセロクエル(1.3%)、ジプレキサ(5.4%)となっており、セロクエルのほうが体重増加が少なそうです。

有効性に関しては大きな差はなさそうです。
鎮静作用も有意差なしとのことで、PMSに対して使うときも大きな差はないのでしょうか。

高齢者のBPSDに対してセロクエルが多いのは、錐体外路症状のリスクが低く、半減期が短く、容量が調整しやすいといったところなんでしょうか。

参考
セロクエルがBPSDに有効であるとするメタアナリスシ。



 2017年6月27日

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