バイアスピリンとプラビックス(DAPT)の併用期間は?

ステント留置後バイアスピリンとプラビックス(DAPT)は何年継続服用すべきなのか

2020年更新

2020年4月に循環器学会より「2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」出された。




HBR日本人版にて出血リスクを評価し、上のフローチャートで期間を判断する。
DOAC服用は基本HBRに該当する。

HBR非該当で血栓リスクが高い場合のみ3~12か月。
それ以外(HBR該当、HBR非該当だが血栓リスク低値)は1~3カ月のみとなっている。

血栓リスクの評価はCREDO-Kyoto リスクスコアやPARIS スコアで判断。ただ、具体的にどうなったらリスクありとするかは書かれていない。



--------------------------以下以前の記事--------------------------------------

冠動脈が狭窄し、狭心症や心筋梗塞を起こしてしまった場合や起こる前の予防としてステント留置術が行われる。

ステント留置の予後改善効果は明らかであるが、ステント部分がむき出しになってしまうと血液の流れが乱れ血栓ができやすくなってしまう(ステント血栓)

この血栓を防ぐため一般的にバイアスピリンとプラビックスの併用(DAPT療法)が行われ、一定期間経過後アスピリンの単剤療法となるが、この2剤継続期間が患者さんや医師の考えによってばらつきがあると感じます。


心筋梗塞2次予防に関するガイドライン(2013年改定)

同ガイドライン中では、1年以上の併用の有益性はないとされている。(ステント:DESの場合

"1年以降の二剤併用療法継続の有益性はなく、糖尿病合併,心筋梗塞既往のハイリスク群で分けてみても有益性はないとの報告や、他にDES留置1年後の、二剤併用療法群とアスピリン単剤群では,死亡,心筋梗塞,ステント血栓症に有意差はなかったと報告されている"
※Park SJ, Park DW, Kim YH, et al. Duration of dualantiplatelet therapy after implantation of drug-eluting stents.N Engl J Med 2010; 362: 1374-1382.

また、6ヵ月以内の併用中止は危険としているが、6ヵ月以降のプラビックス継続に関しては有益性が明らかでないとしている。

"6か月以内のチエノピリジン系抗血小板薬の中止は大きなリスクだが,6か月以降は明らかではなく、発症機序が早期、遅発性、超遅発性で異なる可能性が指摘されている※"
※Airoldi F, Colombo A, Morici N, et al. Incidence andpredictors of drug-eluting stent thrombosis during and afterdiscontinuation of thienopyridine treatment. Circulation2007; 116: 745-754




安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011)

こちらのガイドラインでは分なエビデンスがないとの注意書き付きで1年としている。

"現時点で必ずしも十分なエビデンスはないが、欧米のガイドラインを参考として、2剤による抗血小板療法の投与期間を1年とした。1年以後の抗血小板薬の投与については、その有用性を示唆する報告がある一方、ステント血栓症とアスピリン/チエノピリジンの2剤の抗血小板療法との関連性を認めないとする報告がある。また、症例数はやや少ないものの、1年時点で、2剤の抗血小板薬を投与する群とアスピリン単剤とに割り付ける無作為比較試験で、その後のイベントに違いがなかったとする報告もされている"

以下同ガイドラインで参考にされていた論文より
Kimura T, Morimoto T, Nakagawa Y, et al. Antiplatelettherapy and stent thrombosis after sirolimus-eluting stentimplantation※. Circulation 2009; 119: 987-995

※DES(薬剤溶出性ステント)にはSES(シロリムス)、EES(エベロリムス)PES(パクリタキセル)などがある。

一年以降はプラビックス併用(青)とアスピリン単剤(橙)では差がない。


一方で、内視鏡でステント留置1年後の血管を見たときに、まだ血管組織に覆われず、ステントがむき出しになっている場合があるため、2年は必要とする意見もあるよう。

ちなみに米国PCIガイドラインでは最低12か月、欧州は2014年、ST上昇型心筋梗塞例以外では6か月となっている。


1年以上は継続で、その後はやめるほうが主流といったところでしょうか。
※血栓ハイリスク群は別(ハイリスク群の見極めはDAPTスコア等を利用:こちらにまとめてあります。)



急性冠候群ガイドライン2018

急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞)のDAPT後の2次予防として、ガイドラインではアスピリン+クロピトグレル(又はプラスグレル)の6-12か月投与が推奨クラスⅠ、エビデンスレベルAとなっている。



H29.7.7追記
DESによるPCIを受けた患者では、6カ月間と24カ月間のDAPTで、予後に差は認められなかったITALIC試験の最終結果で、JACC Cardiovascular Interventions626日号に論文が掲載された。(日経メディカルオンライン)


 2017年6月27日

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