COX-2選択性NSAIDsとアスピリン喘息

COX-2選択性NSAIDsはアスピリン喘息になりにくい? アセトアミノフェンは投与可能?

NSAIDsはアスピリン喘息の既往歴がある患者さんには全て禁忌となっています。

ただし、COX-2選択性の薬剤に関してはアスピリン喘息になりにくいといわれています。

主なCOX-2選択性薬剤
セレコックス(セレコキシブ)、モービック(メロキシカム)、ハイペン(エトドラク)


アスピリン喘息の発生機序

アスピリン喘息患者には、アラキドン酸代謝経路上あるいはアラキドン酸代謝産物が関わる生体反応に何らかの異常があり、それがNSAIDsによるCOX阻害(おそらくCOX-1阻害)で顕在化し、過敏反応として現われてくるものと考えられる。

過敏反応のトリガーとしては、防御因子としてのプロスタグランジン E2(PGE2)の減少というステップが重要であり、最終メディエーターとしてはシステイニル・ロイコトリエン(cysLTsLTC4LTD4LTE4が重要な役割を演 じているものと考えられている。しかし、その間の機序(関与する細胞やメ ディエータなど)に関しては不明な点が多い。
(厚労省 重篤副作用疾患別対応マニュアル)



まとめると、元々アラキドン代謝に異常があり、NSAIDsのCOX-1阻害によるPGE2の減少、アラキドン酸増加によるLTへの代謝亢進が起こることで発症する。

成人の喘息患者のうち、10%がアスピリン喘息であるといわれているため、喘息患者にNSAIDsを投与する場合は要注意。

COX-2選択性の安全性

同マニュアルにアスピリン喘息を起こしやすいNSAIDsとして以下の特徴が上げられている。

薬剤ごとの過敏症状の差

解熱鎮痛効果の強い薬剤=COX-1阻害作用の強いNSAIDsほど激烈な副作用を生じやすい。
② 吸収の早い NSAIDs ほど急激な過敏症状をもたらす。
NSAIDsのもつ共通の薬理作用であるCOX-1阻害により生じる副作用のため、原因となるNSAIDsに化学構造式上の共通点はない。

吸収が早いほど起こりやすいため、注射薬、坐薬>内服薬>貼付薬、塗布薬の順で症状が早くかつ強く起こると考えられている。

また、目薬でも発症報告があるため注意。

アスピリン喘息を起こしやすい薬剤

1. 非常に危険(吸収が早いため致死的反応になりやすい,絶対禁忌)
(ア)スルピリンやケトプロフェンなどの注射薬
(イ)インドメタシン,ピロキシカム,ジクロフェナックなどの坐薬
2.危険(絶対禁忌)
(ア)酸性NSAID全般(COX1 阻害作用を有する内服薬全て)
(イ)コハク酸エステル型ステロイドの急速静注(ただしCOX1 阻害作用は不明)
3.やや危険~危険(禁忌,安定例でも一定の確率で発作が生じる)
(ア)酸性NSAIDを含んだ貼付薬,塗布薬,点眼薬
(イ)アセトアミノフェン1 回 500 mg以上
(ウ)パラベンや安息香酸,亜硫酸塩などの添加物を含んだ医薬品の急速投与(静注用リン酸エステル型ステロイド
など,ただしCOX阻害作用は不明)
4. ほぼ安全(多くのAIAで投与可能.ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることあり)
特にエ,オ,カは安全性が高い
(ア)PL顆粒®(アセトアミノフェンなどを含有)
(イ)アセトアミノフェン1 回 300 mg以下
(ウ)NSAIDsを含まずサリチル酸を主成分とした湿布(MS冷シップ®)
(エ)選択性の高いCOX2 阻害薬 エトドラク,メロキシカム(高用量でCOX1 阻害あり)
(オ)選択的COX2 阻害薬(セレコキシブ,ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
(カ)塩基性消炎薬(塩酸チアラミドなど,ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
5.安全(喘息の悪化は認めない)
(ア)モルフィネ,ペンタゾシン
(イ)非エステル型ステロイド(内服ステロイド)
(ウ)漢方薬(地竜,葛根湯など)
(エ)その他,鎮痙薬,抗菌薬,局所麻酔薬など,添加物のない一般薬は全て使用可能

参考:日内会誌 102:1426~1432,2013


COX-2選択性薬剤は非選択性薬剤と比べると起こりにくいものの、発症例もあり、禁忌にもなっていることから現実的には使いにくそうです。

アセトアミノフェンに関しては投与量によって安全性が変わっている。
アスピリン感受性ありの患者に対して、アセトアミノフェン300㎎までであれば、気管支痙攣等の発症がなかったとの文献、500㎎や1000㎎では発症しているとする報告からの数値のよう。


その他注意

アスピリン喘息は後天的に発症するため、以前NSAIDsを飲めていたからと言ってNSAIDsが大丈夫という訳にはならない。(喘息発症後、NSAIDsを服用すると以前は起こらなかった人でも起こる可能性がある)


 2017年6月18日

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