テトラサイクリン系抗生剤ミノマイシン(ミノサイクリン)とビブラマイシン(ドキシサイクリン)の違いは?
・ミノマイシン(ミノサイクリン)
・ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
・レダマイシン(デメチルクロルテトラサイクリン)
・アクロマイシン(テトラサイクリン)
このうち古くからあるレダマイシン、アクロマイシンは耐性菌も多く、最近はほとんど使われない。
今回はミノマイシン、ビブラマイシンの違いについて調べてみました。
基本情報
ミノマイシン(ミノサイクリン)
適応
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌、梅毒トレポネーマ、リケッチア属(オリエンチア・ツツガムシ)、クラミジア属、肺炎マイコプラズマ
用法
初日100~200㎎を分1 その後100㎎を12時間毎又は24時間毎
半減期
9.5時間(200㎎投与時)
ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
適応
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、肺炎桿菌、ペスト菌、コレラ菌、ブルセラ属、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、クラミジア属
用法
初日200㎎を分1又は分2 その後100㎎を1日1回
半減期
11-13時間(200㎎投与時)
半減期は同じくらい。
用法はミノマイシンは分2もOK、ビブラマイシンは初回以外は基本分1。
代謝
ミノマイシンは肝代謝。
→腎障害でも調整不要。
ビブラマイシンは代謝されずに尿中、便中に排泄される。
→腎障害がある場合代償的に便中に排泄されるため腎障害でも用量調整不要。
→腎障害でも調整不要。
ビブラマイシンは代謝されずに尿中、便中に排泄される。
→腎障害がある場合代償的に便中に排泄されるため腎障害でも用量調整不要。
相互作用
テトラサイクリン系と言えばカチオンとの相互作用。
ミノマイシン
Ca、Mg、Al、ランタン(La)、Fe
ビブラマイシン
Ca、Mg、Al、ビスマス(Bi)、Fe
インタビューフォーム上は上記違いがある。
ミノマイシンは服用間隔を2-4時間開けるように指示があるが、ビブラマイシンは具体的な対応の記載なし。
ちなみにランタンを含む薬剤はホスレノール、ビスマスは硝酸ビスマスのみであるので、ほぼ関係なさそう。
透析でホスレノール飲んでいたらビブラマイシン?と思ったらホスレノールの添付文書ではビブラマイシンも併用注意となっている。
とりあえずどちらも2価、3価のカチオンは避けるべき。
副作用
ミノマイシン
22503例中、消化器系(10.33%)、めまい(2.85%)
ビブラマイシン
9505例中、消化器系(10.93%)
テトラサイクリン系と言えば消化器系とめまいと思っていたんですが、めまいはミノマイシンのみ。
ビブラマイシンの副作用にめまいの記載はなし。
そして有効性と副作用を考えた場合、ミノマイシンよりビブラマイシンのほうが優れていたとする報告もある。※1
テトラサイクリン系と言えば消化器系とめまいと思っていたんですが、めまいはミノマイシンのみ。
ビブラマイシンの副作用にめまいの記載はなし。
そして有効性と副作用を考えた場合、ミノマイシンよりビブラマイシンのほうが優れていたとする報告もある。※1
有効性
ニキビへの有効性
ニキビと言えばテトラサイクリン系のイメージ。
皮膚移行性もよく、ミノマイシンが処方されているのをよくみるが、ミノマイシンがビブラマイシンより優れている事が明確に示せているデータはほとんどないようです。
以下のメタアナリシスにおいて、27個のRCTについて解析した結果、ミノマイシンが他のテトラサイクリンより優れているとしているのはわずか2個。
その2個ともオープン試験で、方法にも問題があったとされている。※2
ミノマイシンでもビブラマイシンでもよさそうです。
ガイドラインでもミノマイシン、ビブラマイシンの2剤はエビデンスレベルAとされている。(尋常性挫創治療ガイドライン2016)
クラミジアへの有効性
こちらではクラミジア・トラコマチスによる感染症と思われる症例に対する有効性について、2剤は同程度の有効性とされている。
ただし、副作用に関してはビブラマイシンのほうが多かったとなっている。
(ビブラマイシン:ミノマイシン=男43%:26%、女62%:35%)※3
小児(8歳未満)への投与、安全性
「小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること」
この記載は両薬剤ともに共通。
ただし、ビブラマイシンのほうがカルシウムへのキレート作用が弱く、小児への使用はより安全である可能性が示唆されている。
2018年、アメリカの小児科学会はダニ媒介感染症に対するドキシサイクリン(ビブラマイシン)の年齢制限を解除している。
解除した理由はドキシサイクリンを使用しても歯牙変色リスク上昇がみられたなかったとする論文※4がだされたため。
ただし、ビブラマイシンのほうがカルシウムへのキレート作用が弱く、小児への使用はより安全である可能性が示唆されている。
2018年、アメリカの小児科学会はダニ媒介感染症に対するドキシサイクリン(ビブラマイシン)の年齢制限を解除している。
解除した理由はドキシサイクリンを使用しても歯牙変色リスク上昇がみられたなかったとする論文※4がだされたため。
耐性菌
テトラサイクリン系は耐性化が進んでおり、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌に対する耐性化は深刻とされている。
上記有効性をみるかぎり、アクネ菌、クラミジアに関しては耐性菌の差はないと考えられそうです。
8歳未満へはドキシサイクリンのほうが安全な可能性。
※1 Br J Dermatol. 2012 Jun;166(6):1333-41.doi: 10.1111/j.1365-2133.2012.10845.x.
8歳未満へはドキシサイクリンのほうが安全な可能性。
※1 Br J Dermatol. 2012 Jun;166(6):1333-41.doi: 10.1111/j.1365-2133.2012.10845.x.
※3 Ann Intern Med. 1993 Jul 1;119(1):16-22
※4 Ann Pharmacother. 2019 Nov;53(11):1162-1166.