バイアスピリンと習慣性流産

バイアスピリンは死産や流産を減少させる? 高リン脂質抗体と低用量アスピリンの関係

妊婦さんに対してバイアスピリンやバファリンA81などの低用量アスピリンの処方をたまにみる。(適応外)

ざっくりな目的は早産、流産の防止
具体的に話すと以下のような疾患による早産・流産の防止。

処方対象となっている疾患

不育症(≒習慣流産)
妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧性腎症)

※妊娠高血圧性腎症は妊娠20週目以降に初めて高血圧が発症し、高血圧にタンパク尿を伴っている場合。

投与期間

通常妊娠初期から32週まで投与される。
※低用量アスピリンは妊娠予定日12週以内の妊婦には禁忌。

高リン脂質抗体の作用

上記疾患において、流産・早産関わっているとされているのが高リン脂質抗体という抗体。

高リン脂質抗体は自己のリン脂質に反応してしまう抗体。(厳密にはリン脂質に結合する血漿タンパクに対する抗体)

高リン脂質抗体は以下の作用により血栓形成を促進すると考えられている。

・リン脂質依存性凝固反応を抑制しているβ2-GPⅠを阻害する
・血管内皮細胞のヘパラン硫酸やトロンボモジュリンに作用し。血管内皮障害を起こす
・血管内皮細胞からのプロスタグランジン産生を抑制し、血管拡張を妨害する
・プロテイン-Cの活性化を阻害する。


低用量アスピリンの作用

抗血小板作用により、胎盤内にできてしまう血栓を予防することで不育症を予防すると考えられる。

妊娠高血圧性腎症では、血管内皮細胞でのプロスタグランジン類の産生に関する不均衡が生じていると考えられており、低用量アスピリンによるCOX阻害作用がこの不均衡を是正すると考えられている。

有効性

低用量アスピリンの有効性を調べると、一貫したエビデンスはなく、結論が出ていないようです。

以下は最近日経メディカルで取り上げられたアスピリンの投与が有効とする論文が紹介されていました。N Engl J Med. 2017 Jun 28. doi:10.1056/NEJMoa1704559

こちらの論文の内容は以下の通り。

試験:プラセボ対象ランダム化比較試験
対象:妊娠高血圧性腎症リスクが高いと判断された1776(最終アスピリン群798人、プラセボ822人)
期間:妊娠36週まで
結果:アスピリン群での早産は1.6%、プラセボ群での早産は4.3%となり、オッズ比は0.38(95%CI0.2-0.74)

副作用に関しては両群に差はなかったとされている。


こちらのメタ解析でも低用量アスピリンは早産を減らすと結論付けています。Obstet Gynecol. 2017 Feb;129(2):327-336. doi: 10.1097/AOG.
34週、37週未満での早産リスク(相対リスク)はそれぞれ0.86(95%CI0.76-0.99)、0.93(95%IC0.86-0.996)となっています。


 2017年7月24日

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