新規経口抗インフルエンザ薬 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

経口投与1回で治療が終了する? 新規抗インフルエンザの開発

塩野義製薬が開発中の新規経口抗インフルエンザの第三相試験において、主要目標を達成し、今年度中にも製造販売承認申請を行う予定とのこと。

どんな薬か気になったので調べてみました。


キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬の作用機序

今回の塩野義の薬(S-033188)はキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害する薬剤。

まずは今までの抗インフルエンザ薬について。

今までの抗インフルエンザ薬

今までの抗インフルエンザ薬はノイラミニダーゼ阻害薬。
ノイラミニダーゼはグリコシド結合を切断する酵素。

インフルエンザウイルスは細胞内で増殖後、ノイラミニダーゼにより切り離されて外に出てくる。

このノイラミニダーゼを阻害することでウイルスが細胞の外に出ないようにし、増殖を防ぐのが今までのノイラミニダーゼ阻害薬。


次にエンドヌクレアーゼの作用をウイルスの増殖機構と共に見てみます。

エンドヌクレアーゼとインフルエンザウイルスの増殖の関係

インフルエンザウイルスは自身で増殖に必要なタンパク質(要はウイルス本体を形成するのに必要な材料)を合成できない。

このため宿主のmRNAの一部を勝手に使ってタンパク質を合成し、それを材料に増殖しますが、この際に作用するのがキャップ依存性エンドヌクレアーゼです。

DNA、RNAは塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシル)がジリン酸エステル結合で結合し鎖状になっているが、エンドヌクレアーゼはこのリン酸ジエステル結合を切断する。(正確には内側の結合を切断する↔エキソヌクレアーゼは端から順に切る)

インフルエンザウイルスが持つエンドヌクレアーゼは、宿主(ヒト)のmRNAの前駆体のキャップ構造(RNAの末端についている特定の構造)を見つけて、そこから少し離れた部分を切断し、その部分から転写反応が開始される。

よって、ウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することでウイルスの転写を抑制=増殖を抑制することができる。


まとめると…

増殖に必要なタンパク質を合成するのに働くキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することで、ウイルスの増殖を抑える。

といった感じでしょうか。


用法

臨床試験では1回40㎎又は80㎎の単回投与で行われた。

イナビルと同じく単投与で、かつ経口剤なので有効性に差が出にくそうです。


有効性

タミフルとの二重盲検比較試験において、有効性は有意差なし。

副作用に関してはエンドヌクレアーゼ阻害薬のほうが少なかったとされている。



今のところノイラミニダーゼ阻害薬に対する耐性ウイルスはほとんどいないので、その辺は考えなくてもよさそうですが、経口で単回ということで発売したら人気が出そう。

臨床試験を見ると小児に対しても進められているようなので、吸入に不安がある小児に対しては重宝されるかもしれませんね。


 2017年7月25日

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