鉄剤(フェロミア、フェルム、フェログラデュメット、インクレミン)の違い

フェロミア錠,フェルムカプセル,フェログラデュメット,インクレミンなどの鉄剤の比較 吐き気が出にくいのは?


経口鉄剤には以下のものがある。

クエン酸第一鉄(フェロミア)
フマル酸第一鉄(フェルム)
硫酸鉄(フェロ・グラデュメット、テツクール)
溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミン)


フェロミアの処方が圧倒的に多いのですが、最近フェルムもよく見るのでどのような違いがあるか調べてみました。

適応

全て適応は鉄欠乏性貧血のみ
なので適応による使い分けというものはない。

用法・用量

フェロミア錠50㎎
1日100~200㎎(2~4錠)、分1~2回、食後投与

フェルムカプセル100㎎
1日100㎎(1カプセル)、分1、いつでもOK

フェロ・グラデュメット錠105㎎
1日105~210㎎(1~2錠)、分1~2回、空腹時(副作用が強いときは食直後)

テツクール錠100㎎
1日100㎎(1~2錠)、分1~2回、空腹時(副作用が強いときは食直後)

インクレミンシロップ5%
以下の量を分3~4回、いつでもOK
1歳未満:2~4mL(鉄:12~24mg)
1~5歳 :3~10mL(鉄:18~60mg)
6~15歳:10~15mL(鉄:60~90mg)

※上記用量は全て鉄に換算した際の値。


鉄剤は空腹時のほうが吸収は良いが、その分吐き気の副作用がでやすい

このため各薬剤様々な工夫により、食後でも吸収を落ちないようにしたり、胃の刺激を少なくして吐き気を抑えようとしたりしている。


次はこれら用法の違いを生んでいる製剤の違いについて見てみます。


吸収・副作用(吐き気)軽減の製剤工夫

まず、鉄についての共通事項として、

・空腹時で吸収が良い
・空腹時だと吐き気が出やすい
・胃粘膜を刺激するのはイオン型
・吸収されるのは2価鉄のイオン型(Fe2+)
・胃酸により吸収される2価鉄(Fe2+)になる

これらを製剤の工夫により克服している。

フェロミア

イオン型にならなくても吸収されるように設計されている非イオン型の鉄剤

酸性~塩基性の広い範囲で溶解されるように設定されてるため食後のpHが高くなっている状態でも吸収に影響がでない。(下記グラフ参照)

pHが吸収に影響しないため、吐き気を軽減できる食後投与となっている。

塩基性でも吸収されるため胃切除患者においても吸収される

(フェロミアインタビューフォーム)


フェルム、フェロ・グラデュメット、テツクール

これらは徐放性にすることで急激に胃に鉄が放出されるのを防ぐことで胃粘膜刺激を抑制し、吐き気を出にくくしている。(各インタビューフォーム)

フェルム、フェログ・ラデュメット、テツクールはフェロミアと違い塩基性では溶解しにくいため基本は空腹時のほうが吸収はよいと考えられる。

また、胃切除者、胃酸分泌が低下している高齢者、制酸剤服用中では吸収が低下する。


溶解性について

上記で述べたようにフェロミア以外はpHにより溶解性が大きく変化してしまう。
食後の胃pHは4~5程度なので、フェロミア以外は食事により溶解度がかなり落ちる可能性がある。

インクレミン

唯一の第2鉄(酸化の鉄Fe3+)なので、胃酸によるFe2+への変換が必須。


吐き気の副作用比較

フェロミア錠50㎎
承認時以降の使用成績調査:消化器障害5.88%(3246例中)

フェルムカプセル100㎎
承認時以降の累計:消化器障害3.26%(1934例中)

フェロ・グラデュメット錠105㎎
国内文献のデータ:消化器障害4.3%(712例中)

テツクール錠100㎎
頻度不明

インクレミンシロップ5%
頻度不明

(各インタビューフォーム、添付文書)


フェロミア錠と顆粒の吐き気比較

同じフェロミア(クエン酸第一鉄)でも錠剤より顆粒のほうが吐き気が出にくいと言われている。※1

他に情報がみつからなかったので、詳細不明。




個人的な感想ですが、普段フェロミアが圧倒的に処方されているますが、吐き気がでてしまった患者さんがフェロ・グラデュメットやフェルム、インクレミンに変更となり、その後問題無く服用できる患者さんがいるので、上記値のイメージ通りな気がします。

この中でもインクレミンシロップは吐き気の訴えはほとんど聞いたことがない。

※1 日本薬剤師会雑誌2019.3 Vol71
 2017年7月26日

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