薬局における検体測定室

検体測定を行うに当たり必要な届出、台帳、設備

2014年に臨床検査技師等に関する法改定、検体測定室に関するガイドラインが交付され、検体測定が薬局でもできるようになった。

当薬局でも年に1,2日だけ行っていた。(後で述べる臨時測定)

今回はガイドラインを元に始めるにあたって必要とされている届出、作成物(作業書・日誌・台帳)についてまとめた。
(当日の説明事項等についてはガイドライン参照)


届出・作業書・日誌・台帳

届出(ガイドライン第1-2)
以下の4つを提出(メール、郵便、FAX、郵送どれでも可)。

①届出書
②運営責任者になる者の免許書写し
③精度責任者になる者の免許書写し
④検体測定の場所を示した図面

・届出書は「開設:様式1」、「変更:様式2」、「休止・廃止・再開:様式3」を使用※ガイドラインの12-14ページにあり。
・運営責任者は複数人選択可能。この場合全員分の免許写しが必要。
精度責任者は運営責任者以外の者となっているが、精度管理を確実に行える体制が確保されていれば兼任も可。(疑義解釈問3)
・変更が生じた場合は生じた日から30日以内に変更届。
検体測定業務を3ヵ月以上行わない場合は廃止として取り扱われる。
臨時測定の場合、開設の7日前までに届出を行う。
・図面は開局時に使った図面等に検体測定室の場所を記載。(壁・パーテーションも記載)



作業書(ガイドライン第2-21、別表)
作成しなければならない作業書は以下の2つ

①測定機器保守管理標準作業書
②測定標準作業書

・①、②ともに機器ごとに作成が必要。
・①は「一常時行うべき保守点検の方法」「定期的な保守点検に関する計画」「測定中に故障が起こった場合の対応(検体の取扱いを含む。)に関する事項」「作成及び改定年月日」について記載。
・②は「測定の実施方法」「測定用機械器具の操作方法」「測定に当たっての注意事項」「作成及び改定年月日」について記載。



日誌(ガイドライン第2-22)
日誌は以下の2つを作成する。

①測定作業日誌
②測定機器保守管理作業日誌

・各作業書をもとに毎日チェックすべき項目を作成し、記録する。
・①には測定前のチェック、測定実施手順、測定後の点検、測定後の点検、②には使用前、使用後のチェックなどの項目を作成。
(具体的内容がガイドラインに書いていないので検体測定室ハンドブック参照)



台帳(ガイドライン第2-23)
台帳は以下の4つを作成する。

①測定受付台帳
②使用測定機器台帳
③試薬台帳
④精度管理台帳

・①には受検者の氏名、連絡先等を記録。(その他日付、検査項目)
・②には測定用機械器具の名称、製造者、型番、設置日、修理及び廃棄を記録。
・③には試薬の購入等の記録や数量を記載。(試薬がなければ不要と思われる)
・④には内部・外部精度管理調査の結果を記載。(やり方は後述)
・台帳は20年間保存

必須準備・掲示物

①検体測定室表示ポスター(掲示)
②研修受診観奨および連携医院、ディスポーザブル穿刺器具明示ポスター(掲示)
③受検者の体調急変時に対する救急通報体制の手順書(掲示)
④検体測定室内感染防止対策委員会設置要綱
⑤検体測定室感染症対策マニュアル
⑥申込書兼承諾書(測定時に記載してもらう)

最後に記載したガイドランの青文字部分が根拠。

注意事項

提出日から開設日まで中7日間かかる。
・届出書類に不備があっても連絡はこないため、7日間経過しても連絡がない場合はこちらから連絡。
・運営開始後1ヵ月の実績をもとに自己点検を行い、運営開始後40日以内に厚生労働省に提出。(検体測定室の自己点検について)
・臨時測定も様式1の「期間を決めて行う場合という項目」の記載内容以外は基本同じで、台帳・掲示物等も全て必要。
・検体測定室を行場合、定期的な内部精度管理の実施及び年1回以上の外部精度管理調査に参加するものとされている。




外部精度管理調査の実施機関について

外部精度管理調査とは、検査実施機関が検査結果を提供し、検査結果をまとめることで臨床検査の質・安全性等を確保するもの。

「参加登録→実施期間から試料が届く→試料を用いてサンプル提出→調査機関が調査→調査結果の公表」といったことが行われる。

外部精度管理調査実施機関
日本臨床衛生検査技師会:臨床検査精度管理調査
医師会:実施要項

その他、メーカーによっては自社製品の検査結果を収集し、報告書を作成している場合がある。(これも外部精度管理調査として扱える可能性もあり。詳しくは使用機器メーカーに確認)



以上実際の測定業務は省いて開始するにあたり必要なものをまとめましたが、正直台帳や作業書を1から作るのは困難かと。
検体測定室ハンドブックなどの書物を購入するとテンプレが全てダウンロード可能。
当店はほぼこれを使ってしまっている。



検体測定室に関するガイドライン全文
以下黒・青字はガイドライン原文赤字は加筆した説明文。


第1 検体測定室の届出等

1 検体測定室の定義
検体測定室は、以下の全てを満たした、診療の用に供しない検体検査を行う施設をいう。
① 当該施設内で検体の採取及び測定を行う
② 検体の採取及び採取前後の消毒・処置については受検者が行う

2 検体測定室の届出
(1) 検体測定室(期間を定めて運営を行うものを除く。)の届出の手続
検体測定室を開設しようとする者は、開設の7日前までに別添の様式1に必要な事項(実施期間を除く)を記載の上、医政局指導課医療関連サービス室長に届け出るものとする。
(2) 期間を定めて運営を行う検体測定室の届出の手続→臨時測定
検体測定室を開設しようとする者は、開設の7日前までに別添の様式1に必要な事項を記載の上、医政局指導課医療関連サービス室長に届け出るものとする。
(3) 届出の内容
ア 記載事項
(1)又は(2)の規定による届出(以下「届出」という。)は、次に掲げる事項を記載し、提出するものとする。
(ア) 検体測定室の開設者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
(イ)衛生管理を含めた検体測定室の運営に係る責任者(以下「運営責任者」という。)の氏名及び資格※運営責任者になることができる者は、医師、薬剤師、看護師又は臨床検査技師とする。
(ウ) 精度管理(測定の精度を適正に保つことをいう。以下同じ)を職務とする者(以下「精度管理責任者」という。)の氏名及び資格※精度管理責任者になることができる者は、医師、薬剤師、臨床検査技師とする。
(エ) 検体測定室の名称及び所在地
(オ) 測定項目の内容及び開設日
(カ) 期間を定めて運営を行う検体測定室の場合にあっては実施期間

イ 添付書類
届出には、アの(イ)、(ウ)の者に係る免許証の写し及び検体測定室の場所を明らかにした図面等の書類を添付するものとする。
(4) 届出の変更等
届出に変更がある場合は、別添の様式2を変更が生じた日から30日以内に医政局指導課医療関連サービス室長に届け出るものとする。
(5) 検体測定室の休廃止等
検体測定室を廃止し又は休止した場合は、廃止等した日から30日以に、また、休止した検体測定室を再開した場合は、再開した日から7日以内に別添の様式3を医政局指導課医療関連サービス室長に届け出るものとする。

第2 検体測定室の指針について

1 測定に際しての説明
測定に当たっては、運営責任者が受検者に対して以下の事項を明示して口頭で説明し、説明内容の同意を得て承諾書を徴収するものとする。→申込書兼承諾書に記入
① 測定は、特定健康診査や健康診断等ではないこと(特定健康診査や健康診断の未受診者には受診勧奨をしていること)
② 検体の採取及び採取前後の消毒・処置については、受検者が行うこと
③ 受検者の服用薬や既往歴によっては、止血困難となり、測定を行うサービスを受けられない場合があること(このため、運営責任者は受検者に抗血栓薬の服用の有無や出血性疾患(血友病、壊血病、血小板無力症、血小板減少性紫斑病、単純性紫斑病)の既往歴の有無をチェックリストで確認し、これらの事実が確認された場合はサービスの提供を行わないこと)
また、採血は受検者の責任において行うものであるため、出血・感染等のリスクは、基本的に受検者が負うものであること
④ 自己採取及び自己処置ができない受検者はサービスを受けられない
⑤ 採取方法(穿刺方法)、採取量(採血量)、測定項目及び測定に要する時間
⑥ 体調、直前の食事時間等が測定結果に影響を及ぼすことがあること
⑦ 検体の測定結果については、受検者が判断するものであること
⑧ 検体測定室での測定は診療の用に供するものではないため、受検者が
医療機関で受診する場合は、改めて当該医療機関の医師の指示による検査を受ける必要があること
⑨ 穿刺による疼痛や迷走神経反射が生じることがあること
⑩ 受検者が自己採取した検体については、受検者が希望した測定項目の測定以外には使用しないこと
⑪ 受検者からの問い合わせ先(検体測定室の電話番号等)

2 測定項目
測定の項目については、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準(平成19年厚生労働省令第157号)第1条第1項各号に掲げる項目の範囲内とする。
→AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、中性脂肪、HDL-C、LDL-C、血糖、HbA1c

3 測定結果の報告
測定結果の報告は、測定値と測定項目の基準値のみに留めるものとする。

4 地域医療機関等との連携等
受検者に対しては、測定結果が当該検体測定室の用いる基準の範囲内であるか否かに拘わらず、特定健康診査や健康診断の受診勧奨をするものとし、また、受検者から測定結果による診断等に関する質問等があった場合は、検体測定室の従事者が回答せずに、かかりつけ医への相談等をするよう助言するものとする。この場合、特定の医療機関のみを受検者に紹介しないよう留意するものとする。

5 広告の規制
診療所、健診センター等の紛らわしい名称を付けてはならないものとする。また、診察、診断、治療、健診(例えば、ワンコイン健診)等と紛らわしい広告を行ってはならないものとする。

6 衛生管理
検体測定室における感染防止対策については、不特定の者の血液を取り扱うことから、「医療機関等における院内感染対策(平成23年6月17日医政指発0617第1号厚生労働省医政局指導課長通知)」に規定する「標準予防策」(全ての患者に対して感染予防策のために行う予防策のことを指し、手洗い、手袋やマスクの着用等が含まれる。)について、医療機関に準じた取扱いとし、従業員は標準予防策、手指衛生、職業感染防止、環境整備、機器の洗浄・消毒・滅菌、感染性廃棄物の処理を適切に行うことを徹底する。また、感染防止対策委員会の設置や感染対策マニュアルの整備を行い、従業員に感染防止について徹底した教育を行うものとする。
→人数が少なくても管理者が率先して感染防止に取り組むようにとのこと(疑義13)

7 穿刺箇所への処置に係る物品
血液採取前後の消毒や絆創膏等の自己処置のための物品を常備するものとする。

8 穿刺部位
穿刺器具による穿刺については、手指に行うものとする。

9 穿刺器具
検体測定室内で受検者が用いる自己採取用の穿刺器具については、薬事法(昭和35年法律第145号)に基づき承認されたものであって、器具全体がディスポーザブルタイプ(単回使用のもの)で使用後の危険が解消されているものとし、受検者に対し、穿刺器具は器具全体がディスポーザブルタイプであることを明示するものとする。
また、穿刺器具の取扱い等については、以下の点に注意して使用するものとする。
① 外観を観察し、保護キャップが外れていたり、破損していたりする場合は使用しないこと
② 保護キャップを外したらすぐに使用すること
③ 複数回、同一部位での穿刺はしないこと

10 穿刺器具等の血液付着物の廃棄について
穿刺器具の処理については、危険防止の観点から堅牢で耐貫通性のある容器に入れて排出するものとする。
血液付着物の廃棄の際には、安全な処理の確保の観点から、「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」(平成24年5月環境省作成)に基づき医療関係機関等から感染性廃棄物を排出する際に運搬容器に付けることとされているバイオハザードマークの付いた容器を原則利用するものとする。

11 検体の取扱い
受検者が自己採取した検体については、1の承諾により受検者が希望した測定項目の測定以外には使用してはならないものとする。

12 運営責任者
検体測定室ごとに、医師、薬剤師、看護師又は臨床検査技師が運営責任者として常勤するものとする。
第2の1に定める測定に際しての説明及び測定結果の受検者への報告については、運営責任者が行うものとし、受検者に対し、資格及び氏名を明示するものとする。
また、運営責任者は、本ガイドラインを遵守するとともに、測定業務に従事する者等に本ガイドラインを遵守させるものとする。

13 精度管理
精度管理については、測定機器の製造業者等が示す保守・点検を実施するものとし、検体の測定に当たっては、複数人の検体を一度に測定しないものとする。
また、検体測定室ごとに、精度管理責任者(医師、薬剤師又は臨床検査技師)を定め、精度管理責任者による定期的な内部精度管理を実施し、年1回以上、外部精度管理調査に参加するものとする。
→内部精度管理は標準試薬などを用いて、ばらつきを検査する(例:Xbar管理図を用いた管理限界の測定)、外部管理は日本臨床衛生検査技師会等が実施している外部精度管理調査に参加(疑義解釈その1-問16)

14 測定業務に従事する者
測定業務に従事する者は、医師、薬剤師、看護師又は臨床検査技師とする。

15 運営責任者の業務を補助する者
運営責任者の業務を補助する者は、運営責任者の下での実務研修の後に業務に従事させることとする。この場合、受検者に対し、補助者であること及び氏名を明示するものとする。

16 検体測定室の環境
検体測定室では、血液を扱うことから、穿刺時の飛沫感染等の感染の防止を図る必要がある。このため、飲食店等容器包装に密封されていない食品を取り扱う場所や公衆浴場を営業する施設の一角で行う場合には、検体測定室としての専用場所として別室を設置するものとする。
それ以外の施設を検体測定室として用いる場合には、受検者の自己採取等に支障のないよう個室等により他の場所と明確に区別するとともに、十分な広さを確保することとする。
なお、十分な照明を確保し、清潔が保持されるために、防塵、防虫、換気・防臭等の措置を講ずるとともに、測定に際しての説明を確実に伝達できるよう騒音防止等の措置を講ずるものとする。さらに、測定用機械器具及び測定試薬に影響がないよう、直射日光や雨水の遮蔽等について対処するものとする。

17 研修
運営責任者は、業務に従事する者に、内部研修に留まることなく、関係法令、精度管理、衛生管理、個人情報保護等について必要な外部研修を受講させるものとする。
→研修記録は任意

18 個人情報保護
受検者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月厚生労働省作成)により、適正に取り扱うものとする。また、測定結果については、受検者の同意を得ずに、保管・利用してはならないものとする。

19 急変への対応等
受検者の急変に対応できるよう、物品を常備するとともに、救急隊への通報体制について手順書を作成し、検体測定室に掲示すること及び近隣の医療機関の把握等により医療機関との連携を図る体制を整備するものとする。なお、施設の開設等に当たり地域医療機関等に対して事前に協力依頼を行うものとする。

20 測定用機械器具等
測定用機械器具及び測定試薬については、薬事法に基づき承認されたものを使用するものとする。また、関係法令を遵守し、適切に保管・管理するものとする。

21 標準作業書
別表に定めるところにより、標準作業書を作成するものとする。

22 作業日誌
別表の標準作業書に従い、次に掲げる作業日誌を作成するものとする。
ア 測定機器保守管理作業日誌
イ 測定作業日誌

23 台帳
次に掲げる台帳を作成することとし、20年間適切に保管管理するものとする。
ア 測定受付台帳(受検者の氏名、連絡先等の保存を行うための台帳)
イ 使用測定機器台帳(測定用機械器具の名称、製造者、型番、設置日、修理及び廃棄を記録するための台帳)
ウ 試薬台帳(試薬の購入等の記録や数量管理を行うための台帳)
エ 精度管理台帳(内部・外部精度管理調査の結果の書類を整理した台帳)

24 その他
ア 検体測定室の開設者は、血液を取り扱うことのリスクを十分認識し、器具等の衛生管理や単回使用器具の再使用の防止、廃棄に至るまでの間の安全管理等について、従業者への教育・研修や自己採取者への測定に際しての説明・注意喚起を行い、血液に起因する感染症を防止する責任が伴うこと、また、穿刺器具等の不適切な取扱いを行った場合の健康影響への責任も伴うことを十分に踏まえて運営を行うものとする。
イ 測定業務に従事する者等が受検者に対して採血、処置及び診断を行った場合は、関係法令に抵触し、罰則の対象となる可能性がある
ウ 広告、廃棄物処理、個人情報保護において適切に行われていない場合は、それぞれ関係法令に抵触し、罰則の対象となる可能性がある。
エ 検体測定室は、診療の用に供しない検体の測定を行う施設であるため、医療機関から検体の測定を受託することはできないこと。また、病院、診療所内では検体測定室の運営を行わないものとする。
オ 検体の測定は受検者から直接受託するものとする。また、検体の生化学的検査を登録された衛生検査所に委託をする場合を除き、業務の一部又は全部を他の施設に委託しないものとする。なお、測定結果について
は、受検者に直接報告するものとする。
カ 他の施設と誤解されないよう、検体測定室と分かる表示を行うものとする。
キ 検体測定室では、測定結果をふまえた物品の購入の勧奨(物品の販売等を行う特定の事業所への誘導を含む。)を行わないものとする。
ク 測定の際、穿刺器具の販売・授与が行われる場合には、都道府県知事に対し管理医療機器販売業の届出を行うなど、薬事法における規定を遵守するものとする。
ケ 厚生労働省医政局指導課は、このガイドラインの運用に関して助言を行うものとする。
コ 検体測定室の開設者は、厚生労働省医政局指導課が行う調査に協力するものとする。

別表
測定機器保守管理標準作業書
一 常時行うべき保守点検の方法
二 定期的な保守点検に関する計画
三 測定中に故障が起こった場合の対応(検体の取
扱いを含む。)に関する事項
四 作成及び改定年月日

測定標準作業書 
一 測定の実施方法
二 測定用機械器具の操作方法
三 測定に当たっての注意事項
四 作成及び改定年月日



 2017年7月28日

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