ムコダイン、ムコソルバン、ビソルボンの違い

去痰薬の作用機序の違いと使い分け 有効性にそんなに差はあるの?

ムコダイン+ムコソルバンの処方はよく見る。
ムコダインはムコソルバン、ビソルボンとは全然違うものだ!とDrに怒られた人がいました。

個人的にはムコダイン飲んでもムコソルバン飲んでも全然痰の切れ良くならないんですけど…

いろいろ違いはまとまっていますが、そんなに差が出るもんなのでしょうか。

とりあえず作用機序から見ていきます。


作用機序

ムコダイン(カルボシステイン)

粘液の構成成分のバランスを改善
喀痰の構成成分であるシアル酸、フコースの構成比が、健康成人の気道粘液の構成比に近いところまで回復した。(フコースが多いと粘性が大きくなる、シアル酸はサラサラ→普段はシアル酸が多いが、風邪の時はフコースが増えてしまう)

粘液線毛輸送能を改善
障害された粘膜上皮を正常化することにより線毛輸送能を改善する。

抗炎症作用
活性酵素産生を抑制する。

留液排泄促進
副鼻腔炎時の鼻汁や中耳炎時の溜液排泄を促進する。

(ムコダインインタビューフォーム)


ムコソルバン(アンブロキソール)

サーファクタント(肺表面活性物質)分泌促進作用
サーファクタントが気道を覆うことで痰の滑りを良くし、出しやすくする。

気道液の分泌促進作用
気道液により気道粘液の粘度が低下する。

線毛運動亢進作用

(ムコソルバンインタビューフォーム)

ビソルボン(ブロムヘキシン)

サーファクタント(肺表面活性物質)分泌促進作用

線毛運動亢進作用

漿液性分泌増加作用
漿液性(サラサラした液体)が分泌されることで粘度が低下する。

酸性糖蛋白溶解・低分子化作用 
リゾチーム分泌が亢進し、痰の粘度の原因となっている糖蛋白を分解する。

※ビソルボンの代謝物=ムコソルバンなのでムコソルバンと同様の作用もあると考えられる。

(ビソルボンインタビューフォーム)



特徴

ムコダイン

去痰作用以外に粘膜修復、抗炎症作用がある。

それに加え留液排泄促進作用が認められており、副鼻腔炎、中耳炎などに長期投与されているのをよく見る。

ムコソルバン、ビソルボン

去痰作用メインといったところ。

気道粘液を増加させ、痰を薄めて粘度を低下させることで排出しやすくするのだが、そのせいで一時的に痰が増えたように感じることがあるらしい。(ビソルボンその他の注意事項)

副鼻腔領域においては、組織学的あるいは粘液・線毛輸送系が重要な役割を演じている点で気管・気管支領域と共通していることから、慢性副鼻腔炎の排膿にも有効であることが確認されているとの記載もある

(ムコソルバンインタビューフォーム)

気道も鼻も同じだから効きますよと。そうなんですか。



有効性の比較

実際の有効性はどんなもんなんでしょうか。

ムコソルバンVSビソルボン
慢性呼吸器疾患による喀痰喀出困難に対する二重盲検試験

対照
患者277例【ムコソルバン45mg/日(N群)ブロムヘキシン塩酸塩錠24mg/日(B群)プラセボ錠(P群)】

結果
中等度改善以上の有効率はN群43.4%、B群29.3%、P群19.4%
ブロムヘキシン塩酸塩と同等ないしそれ以上優れている薬剤であることが確認された。

(ムコソルバンインタビューフォーム)


ムコダインVSプラセボ
慢性呼吸器疾患による喀痰喀出困難に対する二重盲検試験

対照
患者250例【ムコダイン1500㎎/日 プラセボ錠

結果
軽度改善以上の有効率はムコダイン72%、プラセボ48.8%
痰の切れの改善度はムコダイン58.5%、プラセボ40.7%
プラセボと比べ優位に改善した。



ムコダインVSムコソルバン
嚢胞性線維症26例を対象とする一重盲検ランダム化パラレル試験で,カルボシステイン相当500mg(小児では150 mg)1日3回とアンブロキソール33mg(小児では 10 mg)1日3回,80日間の投与により痰の粘稠度や弾性は両群で有意に改善したが,咳スコアはカルボシステイン群でのみ有意に改善し,改善度に群間差を認めた。 


喘息患者14 例におけるカルボシステイン 500 mg,ア ンブロキソール 15 mg および偽薬の1日3回4週間投与のクロスオーバー試験で,カルボシステインは他群と比較して有意にカプサイシン咳受容体感受性を改善させた。

(咳嗽に関するガイドライン 第2版) 



ムコダイン+クラリスロマイシンVSクラリスロマイシン単剤
慢性副鼻腔炎患者を対象とした無造作比較試験


対象
患者数不明【ムコダイン1500mg/日+クラリスロマイシン200mg群 クラリスロマイシン200㎎群】

結果
主要評価項目の12週臨床効果は併用群64.2%、単剤群が45.6%で,併用群が単独群に比べ有意に改善。

症状別では併用群が単独群と比べ、鼻汁性状、後鼻漏において有意に改善。

SNOT-20、CTスコアは有意差なし。

(慢性副鼻腔炎に対するカルボシステインの 併用効果についての検討 GETS Study)



ムコソルバン+アモキシシリンVSアモキシシリン単剤
慢性気管支炎の感染による悪化に関する二重盲検ランダム化パラレル試験で,アモキシシリン500 mg+アンブロキソール30 mg1日3回投与群(n=10ではアモキシシリン単剤治療群(n=13)と比較して喀痰の喀出困難,痰の膿性度,咳症状のいずれも改善度が有意に高く かつ迅速であった。  

急性あるいは閉塞性の気道疾患群(喘息や気管支拡張 症は除外)の急性悪化60例の二重盲検ランダム化パラレル試験で,アンブロキソール1日120mg10 日間投与群では,偽薬群と比較して,痰量,痰の粘稠度,喀出困難と並んで咳症状の改善度が有意に高かった

(咳嗽に関するガイドライン 第2版)



RCTにおいてカルボシステイン、アンブロキソールどちらも喀痰、咳症状の改善はプラセボと比較して有効性が証明されている。

個人的はあまり効果を感じませんでしたが、客観的なデータでは有効性は証明されているようですね。

カルボシステインとアンブロキソールではカルボシステインのほうが咳の改善作用はあるかもしれない。

 2017年8月28日

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