エフィエントとプラビックスの違い

エフィエントとプラビックス 有効性、出血リスク、作用時間の比較

最近たまにPCI後にプラビックス+アスピリンではなく、エフィエント+アスピリンの処方を見る。

エフィエント(プラスグレル)は以下の点がプラビックス(クロピトグレル)より優れているとされている。

・個人差が小さい
→プラビックスはCYP2C19による活性が必要なためPMで効果低下。エフィエントはCYP3A、カルボシラーゼで代謝され活性化。

・抗血小板作用がすぐに発現する
→エフィエントのほうが定常状態までの時間が短い。
(エフィエント、プラビックスインタビューフォーム)

これらは理論上考えられることですが、有効性に差は出ているんでしょうか。
いくつか文献を調べてみました。


有効性の比較

エフィエント、ブリリンタ、プラビックスの比較①

方法
ACS-PCIを施行1年未満で心筋梗塞(AMI)で入院(又は入院中にAMIと診断された人)となるまでの期間を比較。
対象
条件に合致したエフィエント群7128人、ブリリンタ群2376人、プラビックス群9504人

結果
・全入院
エフィエント、ブリリンタはプラビックスと比較し、相対リスク0.84(0.78-0.91)
・AMIによる入院
エフィエント、ブリリンタはプラビックスと比較し、相対リスク0.78(0.61-1.03)
・入院後AMIと診断
エフィエント、ブリリンタはプラビックスと比較し、相対リスク0.88(0.77-1.00)

※ブリリンタのエフィエントに対するの全入院の相対リスクは0.97(0.84-1.13)で差はなし。

プラビックスよりエフィエント、ブリリンタのほうがやや優勢。

エフィエント、ブリリンタ、プラビックスの比較②

方法
エフィエント、ブリリンタ、プラビックス服用中の心血管イベント、心筋梗塞の再発、出血リスクについて比較。


対象
9つのRCT(106288人)について解析。


結果

・心血管イベント、心筋梗塞の再発
エフィエント、ブリリンタがプラビックスより抑制。
エフィエント、ブリリンタでは差なし。

・ステント血栓症発症率
エフィエント>ブリリンタ>プラビックスの順で改善。

・心血管イベントによる死亡及び総死亡率の改善
エフィエント、プラビックスで差なし。

・出血に関する副作用
エフィエントのほうがプラビックスより多く発生。

(Am J Cardiol. 2017 Jun 1;119(11):1723-1728.)


脳梗塞ガイドライン上の記載

エフィエントは心疾患にしか適応がないが、急性冠症候群の患者を対象にしたランダム比較試験(TRITON-TIMI38)のサブ解析において、脳卒中の既往歴がある患者において、エフィエントはプラビックスと比べ優位に出血合併症(頭蓋骨出血やその他全般)を増加させてしまった。

また、心血管死や致死性脳卒中の発症も多かった。

このため欧米では脳卒中やTIAのある患者に禁忌となっている。
(ただしこの試験でエフィエント維持料は10㎎)




作用発現・消失時間

発現時間

定常状態までの時間を見ると
プラビックス:1日(ローディングあり)
エフィエント:8時間(ローディングあり)
(エフィエント、プラビックスインタビューフォーム)

プラビックスはローディングドーズ(300㎎)を投与することで投与2時間後から定常状態と同じレベルの抗血小板作用を示すが、診療ガイドラインをみると以下の記載が。

ステント留置例では欧米では500mgのチクロピジンと比較して75mgのクロピドグレルは300mgのローディングの施行の有無にかかわらず同等の有効性と安全性が確認された。
(循環器病の診断と治療に関するガイドライン)

ローディングドーズなしでも効果は変わらないため、定常状態までの時間はそんなに気にしなくていいのでは…。


消失期間

プラビックスは8-10日(=血小板の寿命)。
手術前は14日以上投与中止が望ましいとの記載。
(プラビックスインタビューフォーム)

エフィエントは7日で凝集能回復。
手術前は14日以上投与中止が望ましいとの記載。
(エフィエントインタビューフォーム)

どちらも非可逆的に阻害するため、回復までの時間は同じと考えていいと思いますが、記載には若干の違いあり。

ガイドラインではプラビックスは大手術の7-14日前の中止(クラスIa`)となっている。


まとめ

心血管イベント抑制作用はエフィエント>プラビックス
出血リスクもエフィエント>プラビックス


その他メモ

・不安定狭心症
クロピトグレル:アスピリンに次ぎ選択薬(クラスI)

・PCI
アスピリンとクロピトグレルの併用(クラスⅠ)

・脳梗塞後再発予防(非心原性)
クロピトグレル:アスピリン、シロスタゾールに並びクラスⅠ

・その他の抗血小板薬(脳梗塞再発予防)
アスピリン:有効とするエビデンスは十分
ジピリダモール:海外の大規模臨床試験で有効性否定
シロスタゾール:メタ解析にて虚血性心疾患、RCTにて脳梗塞に有効
 2017年9月2日

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