同じ力価のリンデロンとデカドロン 適応や禁忌、胎盤通過性の違い
リンデロンとデカドロンは共に最強の力価、長時間作用型のステロイド。(力価一覧はこちらの記事)
最近門前の採用がリンデロンからデカドロンになった。 力価も全く同じようですが、何か違いはあるのでしょうか。
基本情報
リンデロン
用法①1日0.5~8mgを1~4回に分割経口
②小児には,1日0.15~4mgを1~4回に分割経口(シロップ)
禁忌
1~12まで添付文書参照
デカドロン
用法①1日0.5~8mgを1~4回に分割経口
②小児には,1日0.15~4mgを1~4回に分割経口(エリキシル)
③抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)の場合日4~20mgを1~2回。1日最大20mgまで。
禁忌
1~12まで添付文書参照+コントロール不良の糖尿病
抗がん剤投与時の吐き気にはデカドロンしか適応がないんですね。
リンデロンはコントロール不良の糖尿病に対して禁忌の記載はないが、コントロール不良であればあまり投与されないんじゃないでしょうか。
胎盤通通過性
リンデロン、デカドロンは他のステロイドと比べると胎盤通過性が良い。
(プレドニゾロンは胎盤で90%近く不活化される)
(プレドニゾロンは胎盤で90%近く不活化される)
2剤の胎盤通過性はリンデロンは30-50%、デカドロン70-100%とされている。
疫学ではステロイドにより口唇口蓋裂が増加したとの報告はあるが、根拠に乏しく、全ての催奇形リスクの増加はみられていない。
ただし、わざわざリンデロン、デカドロンを使わないで胎盤移行性の低いプレドニゾロンが推奨される。
(妊婦と授乳 南山堂)
ただし、わざわざリンデロン、デカドロンを使わないで胎盤移行性の低いプレドニゾロンが推奨される。
(妊婦と授乳 南山堂)
FDA、オーストラリア基準
FDA(現在はカテゴリ分類廃止)
リンデロン:C(注意は必要だが有益な場合投与可能)
デカドロン:C(注意は必要だが有益な場合投与可能)
オーストラリア分類
リンデロン:C(催奇形性なし 別の可逆的障害の可能性あり)
デカドロン:A(多数のヒトで有害事象の増加となる根拠なし)
(オーストラリア医薬品評価委員会:Prescribing medicines in pregnancy database)
他のサイトを見ているとリンデロンがオーストラリア分類でAになっているんですが、私の検索方法がおかしいのでしょうか…
胎盤通過性が高いものを選択する疾患
新生児呼吸窮迫症候群の予防
早産などで肺が未成熟のまま生まれてくると、肺がちゃんと機能せず呼吸不全を起こす。
早産リスクが高い場合に肺成熟を目的にステロイドの筋肉注射を行う。
この場合胎児に薬を移行させたいのでリンデロン(ベタメタゾン)、デカロドン(デキサメタゾン)を使用する。
リンデロン注は適応があり、オルガドロン(デキサメタゾン)には適応がないが、どちらも有効。(産婦人科診療ガイドライン-産科偏2014)
構造について
リンデロン デカドロン
リンデロン:9-Fluoro-11β,17,21-trihydroxy-16β-methylpregna-1,4-diene-3,20-dioneデカドロン:9-Fluoro-11β,17,21-trihydroxy-16α-methylpregna-1,4-diene-3,20-dione
16位のメチル基が異なるだけなんですね。 いわゆるエピマー。
これだけで胎盤通過性がこんなにかわるんですね。
グルコースのエピマーであるマンノースやガラクトースがグルコースと全然違う性質であることを考えれば普通なんでしょうかね。