DPP-4阻害薬の特徴と使い分け

各DPP-4阻害薬の比較 HbA1c低下作用の強さや膵炎リスクは?

現在出回っているDPP-4阻害薬は以下の9種類。

・エクア(ビルダグリプチン)
・オングリザ(サキサグリプチン)
・ジャヌビア/グラクティブ(シダグリプチン)
・スイニー(アナグリプチン)
・テネリア(テネリグリプチン)
・トラゼンタ(リナグリプチン)
・ネシーナ(アログリプチン)
・ザファティック(トレラグリプチン)※
・マリゼブ(オマリグリプチン)※

※ザファティック、マリゼブは週1回の製剤

代謝経路による使い分けはなんとかく思いつくのですが、その他特徴的なものはあるのでしょうか。

週1製剤以外のものについて調べてみました。


基本情報


商品名 エクア オングリザ ジャヌビア スイニー テネリア トラゼンタ ネシーナ
成分名 ビルダグリプチンサキサグリプチン シダグリプチン アナグリプチン テネリグリプチン リナグリプチン アログリプチン
用法 1日2回
or1回(朝)
1日1回 1日1回 1日2回
(朝夕)
1日1回 1日1回 1日1回
通常用量 1回50㎎ 1回5㎎
/2.5mg
1回50㎎ 1回100㎎
/200mg
1回20mg
/40mg
1回5㎎ 1回25㎎
CCr
30-50
50㎎1日1回 1回2.5mg 1回25mg
/50mg
通常
用量
通常
用量
通常
用量
1回12.5㎎
Ccr30未満 50㎎1日1回 1回2.5mg 1回12.5mg
/25mg
100㎎1日1回 通常
用量
通常
用量
1回6.25㎎
禁忌 重度肝障害
Tmax
(h)
1.5 0.8 2.0-5.0 0.92-1.8 1.0-1.8 1.5-6.0 1.1
T1/2
(h)
1.77 6.0-6.8 9.6-12.3 α≒2 β≒6 20.8-24.2 96.9-113 17.1
※過敏症、ケトーシス、昏睡、1型糖尿病、重症感染症等は全薬剤共通
(各添付文書より抜粋)

代謝経路

腎機能による調整の必要有無が薬剤により異なりますが、禁忌となっている薬剤はない。

テネリア、トラゼンタは肝代謝型(胆汁排泄)なので腎機能障害(透析でも)でも全く調節の必要がない。

その他は腎排泄型だが、エクアは尿中未変化体が他と比べると少ないためさほど減量が必要ない。

エクアの代謝にCYPの関与はほとんどないが、市販後及び海外で重篤な肝機能障害がみられたため禁忌となっている


膵炎の発生率

DPP-4阻害薬で一時騒がれたのが膵炎発症率の上昇。
ただし、ガイドラインでは6ヵ月~2年間の使用で膵炎発症率の上昇は見られなかったとしている。

エクア、ジャヌビア、トラゼンタ、ネシーナ、オングリザとプラセボを比較したメタ解析でも、全ての薬剤で悪性腫瘍、重篤な心疾患、膵炎の発症に差はなかったとされている。(対象:53試験、33881人 24-102週間)

HbA1c低下作用の比較

エクアVSジャヌビア

メタ解析:プラセボと比較し、エクア(-0.6%)、ジャヌビア(-0.7%)だった。
低血糖リスク、体重変化は差なし。

エクアVSネシーナ

1つのランダム比較試験:エクア(-0.7%)、ネシーナ(-0.5%)だった。

エクア50㎎/dayからエクア100㎎/dayに増量する場合とネシーナ25㎎/dayに変更する場合を比較すると、ネシーナに変更のほうがHbA1c低下作用が優れていた。


以前DIオンラインでDPP-4阻害薬の結合様式の違いについて書かれており、そこでも効果不十分の場合は増量より薬剤変更のほうが改善するのではないかという意見が書かれていた。

結合様式だけで強さを判断するもの難しいようです。
(DPP-4阻害薬を構造で分類してみる 2014 12/22)


全てを比較しているものはなさそうです…
随時更新予定。


作用機序

一応作用機序についても簡単におさらい。

DPP-4阻害薬はDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)を可逆的に阻害することで、内因性のGLP-1分解を抑制し、GLP-1濃度を高める。
(通常GLP-1はDPP-4によりすぐに分解されてしまう。)


消化管のL細胞から分泌される代表的なインクレチンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は血糖依存性に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに膵α細胞からの過剰のグルカゴン分泌を抑制する。
GLP-1は血糖値が低いときにはインスリン分泌を促進せず、グルカゴン分泌を抑制しないため低血糖のリスクが少なく、極めて生理的な反応に近い状態でグルコース恒常性の維持に寄与している。

 2017年9月1日

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