漢方薬のエビデンス

漢方薬もランダム比較試験で有効性は確認されている?

今日薬局で「漢方なんてただのプラセボでしょ、量なんてどうでもいいよ」といった過激な発言をしている人がいました。

最近東北大学の方々が高齢者医療の診療ガイドラインの中で、科学的根拠に基づいた世界初めての漢方薬に関する診療ガイドラインを作成し話題となってたのに・・・

この人の前で漢方のエビデンスについて語れるようにと思い調べてみました。

高齢者医療における安全な漢方薬治療ガイドライン

この中で以下の漢方はシステマティックレビューにおいて有効性が認められている。

抑肝散
認知症に伴う行動・心理症状のうち易怒、幻覚、妄想、昼夜 逆転、興奮、暴言、暴力、徘徊に有効。
ただし意欲 減退、うつ、引きこもり、食欲不振、悲哀などの症状には無効。 

半夏厚朴湯
誤嚥性肺炎の既往を持つ患者における嚥 下反射、咳反射を改善させ、肺炎発症の抑制に有効。

大建中湯
脳卒中後遺症における機能性便秘に対して有効であり、腹部術後早期の腸管蠕動運動促進に有効。 

麻子仁丸
高齢者の便秘に有効である。 

補中益気湯
慢性閉塞性肺疾患における自他覚症状、炎症指標及び栄養状態の改善に有効。


ガイドライン上の有害事象

副作用についてはエビデンスが不十分とのこと。
以下は参考。

甘草
低カリウム血症を起こす恐れ。

麻黄
エフェドリン含有=アドレナリン様作用を有する。

附子
元々の毒性で不整脈、血圧低下、呼吸困難などを引き起こす可能性。

黄芩
間質性肺炎を生じることがある。
(インターフェロンとの併用で発症頻度が増加するため併用禁忌)

山梔子
静脈硬化性大腸炎(腸間膜静脈硬化症)を生じる恐れ。


各種診療ガイドライン上の漢方エビデンス

漢方のエビデンスについて検索すると漢方について記載のあるガイドライン一覧が出てくる。(参照:漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン)

この中からいくつかピックップしてエビデンスを確認。


認知症疾患治療ガイドライン

焦燥性興奮・幻覚・妄想
抑肝散:ランダム比較試験で有効の報告あり(エビデンスレベルの高い報告は少ない)

認知症の睡眠障害
抑肝散:ベンゾジアゼピン系、リスペリドンとならび推奨グレードC1(科学的根拠はないが行うよう勧められる)


産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編

機能性月経困難症
当帰芍薬散、加味逍遥散、桂皮茯苓丸、桃核承気湯、当帰健中湯などの漢方は鎮痙薬と並び推奨グレードC(考慮されるレベル) 

更年期障害
当帰芍薬散、加味逍遥散、桂皮茯苓丸が推奨グレードC(考慮されるレベル)
※ホルモン充填療法がグレードB、抗うつ薬はC

EBMに基づいた喘息治療ガイドライン

気管支喘息
麦門冬湯:非ランダム比較試験で有効。推奨グレードA
柴朴湯:非ランダム比較試験で有効。推奨グレードB


ランダム比較試験において有効性が示されている薬剤も多数あるわけで、これでよく所詮プラセボといったものです。

自分自身まだまだ勉強不足で偉そうなことは言えませんが、もっと勉強しなければいけませんね。
 2017年9月11日

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