関節リウマチにおいてヒミュラやアクテムラなどの生物学的製剤、JAK阻害薬はいつ開始する?
最近関節リウマチに使用される生物学的製剤がどんどん増えていっている。生物学的製剤のエビデンスが蓄積されたことで、米国や欧州リウマチ学会において、メトトレキサートで不十分な場合は早期開始が推奨されている。
メトトレキサートで不十分の場合追加されるくらいしか知識がなく、いまいちどのタイミングで使われるのかわかっていないので日本における生物学的製剤位置づけを調べてみました。
関節リウマチに使用される生物学的製剤、JAK阻害薬
TNFα阻害薬
レミケード(インフリキシマブ):キメラ型抗体
エンブレル(エタネルセプト):おとりレセプター
ヒュミラ(アダリムマブ):ヒト型抗体
シンポニー(ゴリムマブ):ヒト型抗体
シムジア(セルトリズマブペルゴ):ヒト型抗体
IL-6レセプター抗体
アクテムラ(トシリズマブ)
T細胞選択的共刺激調節剤
オレンシア(アバタセプト)
JAK阻害薬
ゼルヤンツ(トファシチニブ)
オルミエント(バリシチニブ)
スマイラフ(ペフィシチニブ)
病態と治療方針についてガイドラインより。
関節リウマチ
多発する関節炎、進行性関節破壊を主症とする。
自己免疫疾患であり、数々の自己免疫抗体がみつかっている。
現時点では予防・完治は困難であり、寛解と憎悪を繰り返す。
生物学的製剤においても中止により憎悪がみられるため根本治療とはならない。
生物学的製剤においても中止により憎悪がみられるため根本治療とはならない。
治療方針
日本のガイドライン
早期に発見し、炎症が進行する前に初めから有効性の高い薬物を使用する。
→初めからメトトレキサート等で治療し、寛解したら副作用の少ない薬物に変えていく=ステップダウンブリッジ方式)
ということで生物学的製剤が使用されるまでの流れは以下のと通り。
①通常メトトレキサートが第一選択。
②メトトレキサート十分量(10-12mg/週)でも目標に達成しない場合はcsDMARDs(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムス、イグラチモド)の併用。
③csDMARDsで3か月以上コントロール不良の場合生物学的製剤(bDMARDs)を考慮。
生物学的製剤の代わりにJAK阻害薬も併用薬の候補となる。
(メトトレキサート診療ガイドライン2016)
欧州ガイドライン
欧州リウマチ学会のガイドライン2016でも同じく第一選択はメトトレキサート。
フェーズを3段階設定し、随時csDMARDsや生物学的製剤が追加されていく。
① メトトレキサートが第一選択薬+短期間ステロイド
② ①でダメな場合、予後不良因子がない場合、csDMARDs、ある場合生物学的製剤orJAK阻害薬を追加(=併用)
③ ②でダメな場合、別の生物学的製剤、JAK阻害薬に変更
となっている。
参考:生物学的製剤の使用基準
1.コントロール不良の目安
・圧痛関節数6関節以上
・腫脹関節数6関節以上
・CRP2.0mg/dl以上あるいはESR28mm/hr以上
これらの基準を満たさない患者においても
・画像検査における進行性の骨びらんを認める
・DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上
のいずれかを認める場合も使用を考慮する。
2. 既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、更に予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性又は画像検査における骨びらんを認める)を有する場合には、MTXとの併用による使用を考慮する。※
3.さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすことが望ましい。 ・末梢血白血球数4000/mm3以上
・末梢血リンパ球数1000/mm3以上
・血中βD-グルカン陰性
※アバタセプトには「2」の記載なし。
【関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害薬使用ガイドライン、関節リウマチ(RA)に対するアバタセプト使用ガイドライン 関節リウマチ(RA)に対するトシリズマブ使用ガイドライン (2017年3月21日改訂版) 】
各薬剤の用法
レミケード(インフリキシマブ)
初回から2週間後、6週間後に投与
以降4~8週間ごとに投与(点滴しかない)
エンブレル(エタネルセプト)
1回10-25㎎の場合:1週間に2回皮下注
1回25-50㎎の場合:1週間に1回皮下注
ヒュミラ(アダリムマブ)
1回40-80㎎を2週間に1回皮下注
シンポニー(ゴリムマブ)
メトトレキサート併用時:50-100㎎を4週間に1回皮下注
メトトレキサート非併用時:100㎎を4週に1回皮下注
シムジア(セルトリズマブペルゴ)
1回400㎎を初回、2週間後、4週間後に皮下注
以降200㎎を2週間に1回皮下注(安定している場合は400㎎を4週に1回でも可)
アクテムラ(トシリズマブ)
1回162㎎を2週間に1回皮下注(不十分の場合は1週間間隔で加可)
点滴もあり
オレンシア(アバタセプト)
初日点滴後、同日に125㎎皮下注、その後1週間に1回125㎎を皮下注
(初回から1回125㎎を1週間に1回皮下注も可)
各薬剤でメトトレキサートととの併用が必要だったり、不要だったり、有効性や安全性にも差がありそう。