家族性高コレステロールへのPCSK9阻害薬投与

2017年ガイドラインにおけるPCSK9阻害薬の位置づけは?

動脈硬化疾患予防ガイドラインが5年ぶりに改定されたという記事を最近よく見ます。

PCKS9阻害薬の登場により家族性高コレステロール治療方針が大きく変わったようなので調べてみました。

ガイドラインを調べてみたのですが、動脈硬化疾患予防ガイドライン2017(6.30発行)と同時に家族性高コレステロール診療ガイドライン2017というものが発行されています。

家族性高コレステロールとは

高LDLコレステロール血症、早発性冠動脈疾患、腱・皮膚黄色腫を3主徴とする常染色体遺伝性疾患。
LDL受容体のほか、アポリポ蛋白B-100、PCSK9の遺伝子に変異がみられる。

遺伝子は両親から1つずつもらって1組になるが、家族性高コレステロールは変異している遺伝子の数によって以下の2種類にわけられる。

ホモ接合体:染色体2つとも変異=難病指定
ヘテロ接合体:染色体の1つだけが変異

両方とも変異しているホモ接合体のほうが深刻な高コレステロール状態となる。



PCSK9阻害薬について

現在発売されているPCSK9阻害薬は以下の2剤。

・プラルエント(アリロクマブ)
・レパーサ(エボロクマブ)


PCSK9はLDL受容体を分解してしまう。

家族性高コレステロール患者では、PSCK9遺伝子変異のため、PCSK9活性が高い状態になっている。

プラルエント、レパーサはPCSK9に親和性が高く、LDL受容体のかわりに結合するこで、LDL受容体の分解を防ぐ。


PCSK9阻害薬の対象となる患者


2017年改定版の家族性高コレステロール診療ガイドラインでは以下のように記載がある。

基本的にはホモ、ヘテロともにスタチン系を最大用量で投与しても改善しない場合にPCSK9阻害薬の併用が選択肢の1つとなる。
(※ヘテロではスタチン初期投与量~できる限り最大容量まで)

PCSK9阻害薬の有効性

ヘテロ接合体患者

レパーサ(RUTHERFORD-2試験)またはプラルエント(ODYSSEY FHI および FHⅡ試験)を併用することにより、比較的安全にさらなるLDL-C低下効果(約60%)がみられている。

ただし現時点ではスタチン単独と比べて心血管イベントを優位に抑制するかは不明とのこと。


ホモ接合体患者
ホモ接合体は100万人に1人程度とされており、データが少ないようです。

ガイドライン上ではホモ接合体患者に対するPCKS9阻害薬の投与は推奨レベルAとなっているがエビデンスレベルの記載はない。

LDL受容体活性が完全に欠如している場合、PCSK9阻害薬は無効であるため、PCSK9阻害薬投与後も改善がみられない場合は投与を中止する。

 2017年9月14日

関連記事