パルモディアとベザトールの違い

パルモディア(ペマフィブラート)ではLDLが上昇する? ベザトール(ベザフィブラート)との違い


パルモディアは2017.7月に承認された新規のフィブラート製剤。
8月販売予定だったが、薬価の面で合意に至らず現在販売延期となっている。→2018.6発売

フィブラート系製剤は何種類かあるが、ベザトール(ベザフィブラート)くらいしか処方を見ないので、今回はパルモディアとベザトールの違いについて見てみます。


基本情報

パルモディア(ペマフィブラート)

適応:高脂血症(家族性を含む)
用法:1回0.1㎎1日2回朝夕 最大1回0.2㎎
代謝:胆汁排泄型(尿中変化体5%以下※1 CYP,OATPも関与※2)
禁忌:重篤な肝障害、中等度以上の腎障害(Scr>2.5)、胆石、シクロスポリン、リファンピシン、妊婦

※1尿中に認められたペマフィブラートは、投与放射能の 0.47%以下であった。投与放射能の5%を超える成分が 1 種類認められ、ジカルボン酸体のグルクロン酸抱合体及び N-脱アルキル体の混合物と同定された(インタビューフォーム)

※2 OATPは肝臓への薬物取り込みに関与。パルモディアはこの基質であるため、OATP取り込み阻害を起こすシクロスポリンとの併用は禁忌。

ベザトール(ベザフィブラート)

適応:高脂血症(家族性を含む)
用法:1回200㎎1日2回朝夕 適宜減量
代謝:腎代謝
禁忌:重篤な腎障害(Scr>2.0)、透析、妊婦


腎機能障害時におけるスタチンとの併用はどちらも原則禁忌。

異なる部分は代謝・禁忌あたりでしょうか。
各項目および作用機序に違いについて見ていきたいと思います。

ちなみにパルモディアには注意が気にLDLのみが高い場合は第一選択としないこととの注意書きがある。誰もしないと思いますが…



作用機序

フィブラート系薬剤はPPARという核内受容体に結合することで、遺伝子の転写を調節する

転写調整により、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の合成やβ酸化に関わる物質の産生が亢進されることでトリグリセリドの分解が促進される。

PPARにはα、β、γ、(δ)があり、それぞれ以下の転写に深くかかわっている。

PPARα:β酸化の律速酵素、LPL、ApoA
PPARβ:不明な点が多い
PPARγ:LPL、FAT、TNFα、レプチン※

LPLはリポ蛋白を分解することでトリグリセリドを低下させる。
FATは脂肪酸の脂肪細胞への取り込みを促進することで中性脂肪を低下させる。
ApoAはHDL増加に関与する。

※PPARγは高度活性化又は中度活性低下によりインスリン抵抗性改善、食欲低下など良い方向に作用するらしい。

パルモディア

PPARαに選択的に作用(選択的PPARαモジュレーター)し、LPL産生・β酸化亢進によりTG低下作用を示す。

HDL増加作用も確認されている。
LDLに関しては増加する場合があり、定期的に検査するよう添付文書に注意書きがある。

(パルモディアインタビューフォーム、添付文書)


ベザトール

非選択的にPPARに作用し、LPL産生・β酸化亢進によりTG低下作用を示す。

LDL低下、HDL増加作用も確認されている。

PPARγにも作用するためインスリン抵抗性改善作用も確認されている。
(Diabetol Metab Syndr. 2014 Oct 17;6(1):113. doi: 10.1186/1758-5996-6-113. eCollection 2014.)


臨床試験

パルモディア

各臨床試験0.2㎎~0.4㎎/day投与の変化率を大まかに拾った値。
LDL低下:0~10% 又は増加
TG低下:43~51%
HDL上昇:10~16%

LDLの値はほとんど変化がみられていない。
むしろ上昇しているデータがあり注意が必要。
この結果を見るとフェノフィブラートでも増加している群があるのでパルモディアによるものなのか不明。

ちなみにベザトールやリピディル(フェノフィブラート)の添付文書に注意書きはない

ベザトール

常用量を用いた臨床試験において416/537例における変化率。
LDL低下:12~21%
TGの低下:30~57%
HDL上昇:32~48%


PPARαへの選択性が高いとTG低下も強力なのでは?と思ったんですが、今のところ差がないような…

ですが、パルモディアの勉強会の際、パルモディアのほうがベザトールよりTG低下作用は強いといったデータを見せられた気が…今後要確認してみます。

副作用

パルモディア

承認時までの臨床試験1418例中206例(14.5%)に発生。
胆石症20例(1.4%)、糖尿病20例(1.4%)、CK(CPK)上昇12例(0.8%) 


ベザトール

承認時までの臨床試験872例中85例(6.19%)に発生。
AST上昇16例(1.83%)、CK(CPK)上昇15例(1.72%)、ALT上昇1.16%(14)


パルモディア、ベザトールともに横紋筋融解の頻度は不明。
胆石はパルモディアで1%以上となっており禁忌。


日経DIの記事で横紋筋融解症や腎機能障害に対するパルモディアの添付文書について詳しく記載されているものがある。(日経DI2018.6.8 パルモディアの添付文書を縛るもの)


まとめ

パルモディアは選択的にPPARαに作用する点で異なる。

パルモディアの臨床成績、LDL上昇リスクを見る限りベザフィブラートより優れているとはあまり感じられない。

肝臓にはパルモディアは優しいが、胆石、糖尿病などのリスクが気になる。

 2017年9月24日

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