ジスキネジア、パーキンソン症状、アカシジア、ジストニアの違い

副作用としてみられる錐体外路症状(不随意運動)まとめ


抗精神病薬(D2遮断薬)やパーキンソン病治療薬(D2刺激薬)、の服用により様々な不随意運動が起こる。

通常は
遅延性ジスキネジア=動いちゃう=D2遮断の長期投与
ジスキネジア=動いちゃう=D2刺激の副作用
パーキンソン症状=動きにくい=D2遮断の副作用
アカシジア=落ち着かない=D2遮断の副作用
ジストニア=変な姿勢で固定=D2遮断の副作用

気になるのが遅延性ジスキネジアとジスキネジア。
どちらもジスキネジアなのに原因がD2刺激と遮断で真逆。

チアプリド(D2遮断)の副作用を見ると、錐体外路症状としてジスキネジア、ジストニア、パーキンソン症状、アカシジアが記載されている。

D2遮断でパーキンソン症状はわかるのですが、なぜ通常D2刺激薬で起こるジスキネジアがみられるんでしょうか。

この辺の名前の似ている副作用をPMDAの重篤副作用疾患別対応マニュアルよりまとめつつ確認。


ジスキネジア

自分では止めらない、または止めてもすぐに出現するおかしな動きをまとめた呼び名。

ジスキネジアの種類

ジスキネジアには2種類あり、1つは遅延性ジスキネジアといってD2遮断薬の長期服用によりみられ、もう一つはD2刺激薬(=パーキンソン治療薬)によりみられるジスキネジア・舞踏運動・ジストニアが混ざったもの。

①遅延性ジスキネジア=D2遮断の長期服用
②ジスキネジア(様々な不随意運動をまとめて表現※)=D2刺激薬の副作用


※抗パーキンソン病薬により出現する不随意運動には、多くの種類がある。舞踏運動、ジストニア、バリズム、常同運動、ミオクローヌス、振戦などである。時にアカシジアを伴う事もある。これらの運動を一つの動きと断定出来ないことも多く、同じ患者でいくつもの動きが出現する事もあり、時間とともに変化する場合もあるなどの理由から、全体をジスキネジアと呼んで、薬による副作用であると考える傾向がある。

発生機序

遅延性ジスキネジア
長期的にブロックされていたドパミン受容体の感受性が過剰となり、ドパミン受容体(D1、D2 受容体等)での抑制・促通のバランスに狂いを生じ、そのために上記のような症状を呈すると考えられている。
 
ジスキネジア
ドパミン受容体の感受性の亢進が原因と考えられている。 また、ドパミン含有細胞数が疾患で減少し、そこにドパミンを投与すると過剰なドパミンがあふれてジスキネジアが起きるという説もある。

発生時期・頻度


遅延性ジスキネジア

抗精神病薬投与3ヵ月~5年、10年後の人も。
抗精神病薬服用患者の30%程度(10年服用で50%との報告も)

ジスキネジア
D2刺激を飲み始めて半年~4年程度。
レボドパ服用患者の20-50%に見られるという報告あり。

症状

・繰り返し唇をすぼめる
・舌を左右に動かす
・口をもぐもぐさせる、突き出す
・歯を食いしばる
・目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている
・勝手に手が動いてしまう
・足が動いてしまって歩きにくい
・手に力が入って抜けない
・足が突っ張って歩きにくい

・粗大に上下肢を動かくパリズム様運動





パーキンソン症状

パーキンソン症候群とも言われ、パーキンソン病の時に見られる症状あるいはそれらを呈する疾患の総称。

発生機序

D2遮断薬により脳でのドパミン機能が障害されるとパーキンソン症状を出すと考えられる。
約80%のD2受容体がブロックされるとパーキンソン症状が出現すると言われる。

発生時期・頻度

数日~数週間に多くみられる。(90%以上が20日以内)
抗精神病薬で15-60%で発生するとの報告。

症状

・動作が遅くなった(無動)
・声が小さくなった
・表情が少なくなった
・歩き方がふらふらする
・歩幅がせまくなった
・一歩目が出ない
・手が震える(振戦)
・止まれず走り出すことがある
・手足が固い(筋固縮)

アカシジア

足を組んだりはずしたり、手の回内回外(ドアノブを回すような動き)を繰り返したり、椅子から立ったり座ったり等と同じ動きを繰り返さずにはいられない状態。

他の錐体外路症状とは異なり、運動亢進症状という運動過多に加え、強い不安焦燥感や内的不隠という精神症状を有していることが特徴である。

抗精神病薬の副作用として見られることが多い。

発生機序

ドパミン遮断作用が一因と考えられているが、十分に解明されているわけではなく、最近ではSSRIなどドパミン遮断作用を有しない薬剤での報告もなされており、アカシジアを起こしうる薬剤は抗精神病薬以外にも多岐にわたる。

発生期間・頻度

抗精神病薬(定型)で20-40%
(リスペリドン22.9%、ペロスピロン40%、クエチアピン5.2%、オランザピン17.6%の報告あり)

症状

・体や足がソワソワしたりイライラして、じっと座っていたり、横になっていたりできず、動きたくなる 
・じっとしておれず、歩きたくなる 
・体や足を動かしたくなる
・足がむずむずする感じ
・じっと立ってもおれず、足踏みしたくなる 




ジストニア

持続的に筋肉が収縮する運動であり、ある特定の肢位を維持し続ける様になる。

発生機序

大脳基底核の機能異常により、筋緊張調節のバランスが失われることで起こる。

抗精神病薬の副作用としてよく見られる。

症状

顔面・頭頚部、四肢・体幹筋の定型的な肢位(足)・姿勢の異常や不随意運動。


※ジスキネジア、アカシジア、ジストニアはD2関係の薬メインで記載したが、抗うつ薬や抗てんかん薬など様々な薬剤でみられている。

参考
重篤副作用疾患別対応マニュアル
(ジスキネジア薬剤性パーキンソニズムアカシジア)

まとめ


遅延性ジスキネジア:D2遮断長期 
ジスキネジア(=様々な不随意運動MIX):D2刺激 
パーキンソン症状:D2遮断 無動・振戦・筋固縮
アカシジア:D2遮断 そわそわ・イライラ
ジストニア:D2遮断 特定の姿勢

 2017年9月7日

関連記事