前立腺がんに用いられる抗アンドロゲン剤の比較
前立腺がんの治療には外科治療、放射線治療、薬物治療があるが、薬物治療においてもっともスタンダードな治療法がホルモン療法である。前立腺がんの薬物治療
ホルモン療法で用いられる薬剤には以下のものがある。LH-RHアゴニスト
ゴセレリン(ゾラデックス)、リュープロレリン(リュープリン)
抗アンドロゲン薬
クロルマジノン(プロスタール):ステロイド性
ビカルダミド(カソデックス)、フルタミド(オダイン)、エンザルタミド(イクスタンジ):非ステロイド性
治療はLH-RHアゴニスト、抗アンドロゲン薬の単剤又は併用(CAB療法)で行われる。
非ステロイド性抗アンドロゲンはステロイド性と比べ抗アンドロゲン作用が強く、主流となっている。
抗アンドロゲン薬単剤の有効性はLH-RHアゴニストと比較すると有意差はないが、やや劣るとされている。
しかし、非ステロイド性抗アンドロゲン薬は性関連の副作用(ED、リビドー低下)などが少ない。
(前立腺がん診療ガイドライン2012)
処方頻度が高いのはカソデックスですが、非ステロイド性抗アンドロゲン2剤はどのような違いがあるのでしょうか。
基本情報
カソデックス
適応:前立腺がん
用法:1回80㎎1日1回
オダイン
適応:前立腺がん
用法:1回125㎎1日3回食後
カソデックスの半減期は5日前後と長く、1日1回の投与で済む。
オダインは食後投与(食事による影響に関するデータは記載なし)となっている。
薬理作用の比較
カソデックスはオダインの4倍アンドロゲン受容体阻害作用が強い。
1日の投与量を比較するとカソデックス80㎎:オダイン375㎎なのでちょうど4倍投与量で同じになりそう。
臨床成績
カソデックスとオダインのランダム比較試験(Horm Cancer. 2015 Aug;6(4):161-7. doi: 10.1007/s12672-015-0226-1.)
カソデックス又はオダインの単独療法を24週間行い、PSAの値を比較した結果、4~8週目においてカソデックスのほうがオダインよりPSA低下が大きかった。
副作用
カソデックス
承認時(197例)+使用成績調査(3730例)中
乳房腫脹5.4%、乳房圧痛4.9%、AST上昇4.1%、ALT上昇3.8%、AlP上昇3.0%、LDH上昇2.3%、ほてり2.2%、γ-GTP上昇2.1%、総コレステロール上昇1.3%、勃起力低下1.1%)
オダイン
承認時(201例)+使用成績調査(6192例)中
女性型乳房2.9%、食欲不振2.0%、下痢1.7%、悪心・嘔吐1.1%、AST上昇13.2%、ALT上昇13.2%、γ-GTP上昇5.9%、LDH上昇3.8%、AlP上昇3.1%、赤血球減少1.8%、ヘモグロビン値低下1.5%、ヘマトクリット値低下1.5%
オダインは肝機能障害がカソデックスより高頻度で見られる。
重篤な肝機能障害も0.5%でみられており、肝機能障害患者に対しては禁忌となっている。
カソデックスからオダインへの変更(代替療法)
ホルモン療法は長期間継続すると前立腺がんのホルモン依存性が低下し、効かなくなってしまう(去勢抵抗性)ことが多く、2-3年で効果が落ちてしまう。この際にカソデックスからオダインに変更することで効果がみられる場合がある。(代替抗アンドロゲン療法=ATT)
以下の論文ではカソデックスで効果がみられなくなった患者20人において、すぐにオダインに変更したら8人(40%)でPSAの低下がみられたと報告されている。
(Biomed Res Int. 2016;2016:4083183. doi: 10.)
臨床成績、副作用、コンプライアンス、代替療法についての論文をみるとファーストラインにされていることなどを見ると、カソデックスのほうが主流のよう。
ちなみにイクスタンジ(エンザルタミド)は去勢抵抗性前立腺がんに対してのみ適応をもっている。
まとめ
カソデックスのほうがオダインより臨床成績、副作用、用法の観点から使いやすい。カソデックスが効かなくなった場合(去勢抵抗性前立腺がん)、オダインに変更することで改善がみられる場合がある。(代替療法)