アリセプトやメマリーでは認知症を予防できない?

MCI(軽度認知症)にコリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンは無効?


先日アンケートにMCIと記載されており、処方内容を見たらアリセプト3㎎が処方されていた。

MCIとは軽度の認知症を示し、ガイドラインでは認知症とも知的に正常とも言えない中間の状態と表現されている。

記憶障害の有無、障害領域の数によって4タイプに分けられる。
診断基準は以下の通り。


軽度認知症の予後

軽度認知症患者837名を5年間追跡した調査では、352名(42%)がアルツハイマー型認知症となったと報告されている。(Neurology. 2011 Apr 26;76(17):1485-91. )



ガイドラインには以下のように記載がある。

41の研究をまとめたレビューによれば、軽度認知障害から認知症へのコンバージョンは専門医による追跡では 9.6%/年、地域研究では4.9%/年とされた。

その他の研究でも同様の範囲にコンバージョン率は入るため、おおよそ5-15%/年程度がコンバージョン(=移行)すると言う数字が正しいと考えられる。

認知症のサブタイプ別では,専門家による診断では Alzheimer型へが8.1%、血管性認知症が1.9%、地域研究ではそれぞれ6.8%、1.6%でAlzheimer型の方がコンバージョン率は高かった。

一方で軽度認知障害から正常へのリバージョン(=回復)は 16-41%と幅が広い。

との記載がある。


治療薬の有効性

コリンエステラーゼ阻害、メマンチンによる認知症への進展率低下作用の科学的根拠は示されていない。

以下各薬剤のエビデンス

ドネペジル(アリセプト)

270名、757名を対照としたRCTにおいて一部ノスコアにおいて認知機能の改善がみられたが、進展率についての評価はなし。

769名を3年間追跡したRCTでは12か月時点までは発症率を優位に低下させたが36ヵ月以降は有意差なし。(ハザード比0.8 95%IC:0.57-1.13) (1)

リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)

1018名を4年間追跡したRCTにおいてアルツハイマー発症率に有意差なし。(ハザード比0.85 95%IC:0.64-1.12)

副作用(悪心、嘔吐、下痢、めまい)についてはリバスチグミン群がプラセボ群の2-4倍となってしまった。(1)

ガランタミン(レミニール)

990名、1058名を2年間追跡したRCTにおいてアルツハイマー発症率に有意差なし。(1)

メマンチン(メマリー)

システマティックレビューとメタアナリシスにおいて、コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンが軽度認知障害者の認知機能障害の進行を抑制する効果は明らかではないとされた。(2)

1)認知症治療疾患ガイドライン2010 第4章 経過と治療計画
2)認知症治療疾患ガイドライン2017 追加部分


まとめ

コリンエステラーゼ阻害薬、メマリーで軽度認知症から認知症への進行を抑制できる科学的根拠はなし。

 2017年10月29日

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