ジスキネジア・遅延性ジスキネジアへの薬物投与について
ジスキネジアを引き起こす薬剤はパーキンソン治療薬(D2刺激薬)、遅延性ジスキネジアを引き起こす薬剤は抗精神病薬(D2遮断薬)の継続使用・中止。ただしどちらの薬剤でもジスキネジア、遅延性ジスキネジアは起こりうる。
先日抗精神病薬により遅延性ジスキネジアが生じており、原因薬物中止後も症状の改善がみられずとりあえずリボトリール(クロナゼパム)を投与することになった患者さんがいた。
投与2週間後、様子を確認したがあまり変化はないとのことでした。
ジスキネジアに有効な薬物はないのでしょうか。
パーキンソン治療薬によるジスキネジア、抗精神病薬による遅延性ジスキネジアに分けてみていきます。
ジスキネジアの原因
ジスキネジアは大脳基底核の障害が原因と考えられている。
(高齢者が口をもぐもぐさせている口唇ジスキネジアは薬剤性ではなく老化による大脳基底核の衰退が原因と考えられている。)
(パーキンソン治療薬による)ジスキネジアの治療方針
パーキンソン治療薬投与中のジスキネジアは主に以下の3パターンがある。
・ピークドーズジスキネジア
・二相性ジスキネジア
・オフドーズジスキネジア
各パターンごとに方針が異なる。
・ピークドーズジスキネジア
・二相性ジスキネジア
・オフドーズジスキネジア
各パターンごとに方針が異なる。
ピークドーズジスキネジア
服用中の薬の量が多いために生じる。主な対処法は以下の通り。
・極力レボドパを減量。
・エンタカポンなどのCOMT阻害薬の中止。
・レボドパの一回量を減らし、頻回服用にする。
・ジスキネジアを誘発しにくいアゴニストを使い、レボドパを減量。
・アマンタジンを加える。
二相性ジスキネジア
パーキンソン治療薬の効き始めと切れる前に起こる。主な対処法は以下の通り。
・薬が切れかける状態を作らないようにレボドパの全体の量を増やす。(ただしピークドーズジスキネジアに注意)
・受容体刺激薬がこの症状を引き起こしにくいという報告もあるのでこの場合レボドパに変更。(ただし一定の見解はない)
オフドーズジスキネジア
薬が切れている間に起こる。長期服用患者に多い。確実な治療法ではないとされているが以下のような方法がある。
・朝起きたらすぐ薬を飲む
・効果の持続の長いドパミン作動薬であるカベルゴリンを夜寝る前に飲む。
・受容体刺激薬、バクロフェンの投与。
遅延性ジスキネジアの治療方針
基本的な治療方法は以下の3種類。
原因薬剤の中止
原因薬剤を極力中止、減量する事が第一の治療である。しかし、精神症状がある場合は症状悪化に注意。
定型抗精神病薬はなるべく減らすのだが、一時的にジスキネジアも精神症状も悪化することがある。
しかし、長期的に見ると減量・中止によりジスキネジアは改善し良い効果をもたらすとされている。
他薬剤への変更
定型抗精神病薬減量中に精神症状が悪化するようなら、非定型抗精神病薬を加える。
これにより、ジスキネジアが50%くらい軽減するとされている。
不随意運動そのものへの治療
ジスキネジアは多くの場合重症化しないが、4%くらいの患者で重症化(不随意運動のため動けない・寝られない・口唇ジスキネジアのため食事摂能・誤嚥を起こす等)するとされる。また、急性ジストニアになり、悪性症候群の状態になることも重症化である。
決定的な治療法はないが、以下のような方法が試されている。(すべて適応外)
非定型抗精神病薬:あえて加える事もある。
ドパミン枯渇薬:レセルピンなどが試されている。
ドパミン作動薬:受容体を休ませるため効果があると考えられている。
抗コリン薬:効果があることもあるが、悪化させる事もある。
GABA作動薬:ジアゼパム、クロナゼパムは効果ありとの報告あり(Singh et al, 1983, Thaker et al,1990, Gardos et al, 1995)
ビタミンE:効果ありという報告もある。
カルシウム拮抗薬:急性に治療が必要なジストニアなどで使用する。
ボツリヌス毒素:重症な場合使用することがある。
外科治療:重症で他に方法がないときには考慮する。
(厚労省 重篤副作用疾患別対応マニュアル ジスキネジア)
リボトリールの投与は一応有効とする報告はあるようですね。