アナストロゾールとタモキシフェン 適応や有効性の違い
作用機序による適応の違い
乳がんの原因はエストロゲン。
エストロゲンは閉経前は卵巣から分泌されるが、閉経後は卵巣からの分泌が減少し、代わりに副腎から分泌されるアンドロゲンがアロマターゼにより代謝されることで産生される。
アナストロゾール
適応:閉経後乳がん
作用機序:アロマターゼを阻害する
→卵巣からのエストロゲンは抑えられないため閉経後のみ使用可能。
→卵巣からのエストロゲンは抑えられないため閉経後のみ使用可能。
タモキシフェン
適応:乳がん
作用機序:エストロゲン受容体を阻害
→閉経前・後に関わらず使用可能。
→閉経前・後に関わらず使用可能。
有効性の比較
閉経後の場合、アナストロゾール、タモキシフェンどちらも使用可能であるが、ガイドラインに記載されているATAC試験において、タモキシフェン、アナストロゾール、2剤併用の3群の比較試験の結果、アナストロゾールのほうが優れているとされていた。※1
しかし、タモキシフェン、アナストロゾールの5年投与に関するメタナナリシスの結果では、再発はアナストロゾールで23%減少したものの死亡率に有意差はなかった。※2
これらの試験結果より、ガイドラインではアナストロゾールのほうが優れているが、副作用等で投与困難な場合はタモキシフェンへの切り替えを推奨している。
2剤の併用は有効性がみられないため避けるべきとされている。
※1Lancet Oncol. 2010 Dec;11(12):1135-41
※2Lancet Oncol. 2011 Nov;12(12):1101-8
しかし、タモキシフェン、アナストロゾールの5年投与に関するメタナナリシスの結果では、再発はアナストロゾールで23%減少したものの死亡率に有意差はなかった。※2
これらの試験結果より、ガイドラインではアナストロゾールのほうが優れているが、副作用等で投与困難な場合はタモキシフェンへの切り替えを推奨している。
2剤の併用は有効性がみられないため避けるべきとされている。
※1Lancet Oncol. 2010 Dec;11(12):1135-41
※2Lancet Oncol. 2011 Nov;12(12):1101-8
LH-RHアゴニストとの併用
LH-RHアゴニストは視床下部から分泌されるLH-RHを抑制することで最終的に卵巣からのエストロゲン分泌を抑制するため通常閉経前乳がんに用いられるが、アナストロゾールとの併用試験も行われている。
タモキシフェンとLH-RHアゴニストの併用
共に閉経前に使用できる薬剤のため相乗効果が期待できる。
ホルモン受容体陽性乳がんに限ったメタナナリシスではタモキシフェンにLH-RHアゴニストを追加することで再発率、死亡率ともに有意に低下した。※1
ただし、タモキシフェンにLH-RHを併用しても優位性が証明できなかったメタアナリシスも存在しており、ガイドラインではC1(併用してもよい)となっている。※2
これはホルモン受容体の評価等がちゃんとされていなかったことなど問題があったと指摘されている。
ただし、タモキシフェンにLH-RHを併用しても優位性が証明できなかったメタアナリシスも存在しており、ガイドラインではC1(併用してもよい)となっている。※2
これはホルモン受容体の評価等がちゃんとされていなかったことなど問題があったと指摘されている。
アナストロゾールとLH-RHアゴニストの併用
アナストロゾールは閉経後、LH-RHアゴニストは閉経前でないと効果はないが、閉経前の患者に対し、LH—RHアゴニストにより卵巣機能抑制を行い、それにアロマターゼ阻害薬を加えエストロゲンレベルをさらに低下させることで、LH—RHアゴニストにタモキシフェンを併用するよりも、より高い治療効果が得られるのではないかという考えがある。※3
これに関して、LH-RHアドニストにタモキシフェン又はアナストロゾールを併用した場合の比較試験(ABCSG-12)では、無病生存期間について両群に差はなかったが、全生存期間に関してはアナストロゾールで不良であった。※4
しかし、閉経前ホルモン受容体陽性乳癌を対象とした2つの第Ⅲ相試験(SOFTとTEXT)では別のアロマターゼ阻害薬であるエキセメスタンで5年生存率が有意に改善した。※5
これらの結果を踏まえ、ガイドラインではアナストロゾールとLH-RHアゴニストの併用はC1(併用してもよい)となっている。※3
※3乳がん診療ガイドライン2015 (薬物療法・初期治療ID10060)
※4Lancet Oncol. 2011 Jul;12(7):631-41
※5N Engl J Med. 2014 Jul 10;371(2):107-18
タモキシフェン→アナストロゾールへの切り替え
多数の臨床試験、メタナナリシスでタモキシフェンからアナストロゾールへの切り替えにより死亡率や再発率の改善がみられている。※1~3
ガイドラインではタモキシフェン2~3年投与後のアナストロゾールへの切り替えは有用であり、グレードAとなっている。
※1J Clin Oncol. 2010 Jan 20;28(3):509-18
※2Lancet. 2007 Feb 17;369(9561):559-70
※3Lancet Oncol. 2006 Dec;7(12):991-6
※1J Clin Oncol. 2010 Jan 20;28(3):509-18
※2Lancet. 2007 Feb 17;369(9561):559-70
※3Lancet Oncol. 2006 Dec;7(12):991-6
副作用の比較
アナストロゾール、タモキシフェンは共に血栓・塞栓症に注意が必要な薬剤である。
静脈血栓症は、タモキシフェンでアロマターゼ阻害薬よりも1.5~2倍増加するとの報告がある。(深部静脈血栓症の発症率はタモキシフェンで1~2.5%程度)※1~3
日本人においては、タモキシフェンによる静脈血栓症の明らかな増加は観察されていないが注意が必要である。
また、ほてり、内分泌異常などの副作用報告もタモキシフェンのほうが多い。※1~3
日本人においては、タモキシフェンによる静脈血栓症の明らかな増加は観察されていないが注意が必要である。
また、ほてり、内分泌異常などの副作用報告もタモキシフェンのほうが多い。※1~3
※1N Engl J Med. 2004 Mar 11;350(11):1081-92
※2Lancet. 2005 Jan 1-7;365(9453):60-2
※3N Engl J Med. 2005 Dec 29;353(26):2747-57
※2Lancet. 2005 Jan 1-7;365(9453):60-2
※3N Engl J Med. 2005 Dec 29;353(26):2747-57
まとめ
閉経後
有効性はアナストロゾール>タモキシフェン
タモキシフェン→アナストロゾールへの切り替えで再発率・死亡率低下
閉経前
単剤ならタモキシフェン
LH-RHアゴニストを併用する場合はタモキシフェン、アナストロゾールどちらもグレードC1。ただし、アナストロゾールは全生存率が悪化した報告もある。
副作用
タモキシフェンのほうがほてり、内分泌異常、血栓症の報告が多い。
副作用
タモキシフェンのほうがほてり、内分泌異常、血栓症の報告が多い。