抗精神病薬で生じる薬剤性パーキンソニズムにはD2遮断薬は効きにくく、抗コリン・抗ヒスタミン薬(ヒベルナ)が有効
コントミンなどのD2遮断薬はパーキンソン症状(錐体外路症状)を起こす可能性がある。
錐体外路症状が発現した場合、通常はD2遮断薬の変更・減量となるが、減量が困難な場合は抗コリン(アキネトン、アーテン)や抗ヒスタミン薬(ヒベルナ)が処方される。
なぜD2刺激は無効で、抗コリンや抗ヒスタミン薬になるのか?
抗コリン薬が有効なのはわかるのですが、なぜ抗ヒスタミン薬も有効なのか?
この2点について調べてみました。
薬剤性パーキンソン症状
症状・無動、固縮、振戦、突進現象、姿勢反射障害、仮面様顔貌などの症状
・動作が遅くなった、手が震える、方向転換がしにくい、走り出して止まれない、声が小さくなった、表情が少なくなった、歩き方がふらふらする、歩幅が狭くなった、一歩目が出ない等と訴える事が多い
発症経緯
・D2遮断→アセチルコリン過剰→神経伝達異常→パーキンソン症状
・90%の症例が20日以内で発症している。ブチロフェノン系、フェノチアジン系、ベンザミド誘導体といった抗精神病薬では、数日から数週間が多い。
(ガイドランでは1ヵ月以内が60%、3ヵ月以内が90%との記載)
パーキンソン病との比較
・薬剤性のほうが進行が早く、抗パーキンソン病薬が効きにくい。
※重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性パーキンソニズム
薬剤性のパーキンソンには抗パーキンソン病薬が効きにくいため抗コリン薬、抗ヒスタミン薬が使用される。
ただし、重篤な場合はドパミンの点滴等も行われることがあります。
また、抗精神病薬により発症した薬剤性パーキンソニズムで、原因薬剤中止後も症状が出ている場合には抗パーキンソン病薬も有効と考えられている。※1
ドパミンニューロンの変性が起こっているが、まだ症状は出ていないパーキンソン病になりかけている状態という場合があり、ここに原因薬剤が投与されることでパーキンソン病を発症したと考えられることがあり、このような患者では抗パーキンソン病が有効となる。※1
※1パーキンソン病 治癒総論 日本神経学会
D2刺激薬は効きにくく、抗コリンが有効な理由
薬剤性パーキンソニズムはD2遮断によって生じるため、抗パーキンソン病薬(D2刺激薬)を投与しても拮抗しあうだけで効果はない。※1
ただし、前述したように薬剤が引き金となり「パーキンソン病」症状を発症する場合もあるためこのような場合は有効。
抗コリン薬はドパミン受容体の下流でアセチルコリン受容体を遮断するため、D2遮断薬によって過剰になったアセチルコリンの作用を抑制できる。
抗ヒスタミン薬のヒベルナが有効な理由
ヒベルナ(プロメタジン)は抗ヒスタミン薬であるが、パーキンソニズムに適応を持っている。
これは抗ヒスタミン作用によるものではなく、よく副作用として問題となる抗コリン作用をうまく利用している。
ヒベルナの作用部位は線条体におけるコリン作動性終末であり、受容体へのアセチルコリンの取り込みを阻害する事によるとされている。※2
その抗コリン作用はアーテン(トリヘキシフェニジル)の2.8倍と言われている。※2
※2ヒベルナインタビューフォーム
その他情報
非定型抗精神病薬は薬剤性パーキンソニズムが出にくいとされているが、その理由ははっきりしていない。その中でもリスペリドン<オランザピン<クエチアピン<クロザピンの順で出にくい。※1
薬剤性パーキンソニズム発症時にはジスキネジアを併発している場合もあるが、ジスキネジアの症状は抗コリン薬では改善できない。※3
※3アーテン添付文書
まとめ
薬剤性パーキンソニズムの基本治療は原因薬物の中止・変更
薬剤性パーキンソニズムにはD2刺激薬ではなく抗コリン薬を使用。
抗ヒスタミン薬のヒベルナは、抗コリン作用が強いためパーキンソニズムにも有効。