刺激系下剤の耐性について

刺激系下剤は耐性ができるのか? 刺激性下剤による耐性メカニズムと耐性ができにくい刺激系下剤


プルゼニド、アローゼン、ラキソベロンなどの刺激性下剤は習慣性があり、連用すると耐性ができるといわれている。

2017年に発効された慢性便秘ガイドラインでは、刺激性下剤はエビデンスレベルB、推奨2となっており、アミティーザ、リンゼス、酸化マグネシウム(エビデンスレベルA、推奨1)より1段階低くなっている。

この理由として習慣性、依存性があげられており、連用は避けるべきとされている。

今回は刺激系下剤の耐性について、耐性がどのようにしてできるのか、どのくらいで耐性ができてしまっていると判断するのか、やめればもとにもどるのかなどについて調べてみました。

耐性メカニズム

刺激系下剤を連用すると、腸管が刺激に慣れてしまい、効きが悪くなると言われている。

刺激系下剤は結腸全体を刺激するため、結腸内が完全に空っぽになってしまう場合がある。
この状態では下剤を飲んでも出るものがないので排便は起こらないのだが、患者さんは排便がないからとさらに下剤を服用してしまい耐性を助長させることがある。※1


耐性を起こにくい刺激系下剤

刺激性下剤の中ではプルゼニド、アローゼンなどは耐性が起こりやすいとされており、添付文書にも連用による耐性に関する注意書きがある。

ラキソベロン(ピコスルファート)はプルゼニドなどと比較すると作用が穏やかであり、刺激系下剤の中で唯一耐性ができにくいと言われている※1

ただし、他剤と作用機序は同じであり、耐性を生じることもある。


耐性ができたとする目安

使っても効かなければ耐性ができたとするのでしょうが、プルゼニドの場合、ちょうど1日最大量の4錠を超えてくると耐性ができてしまっている目安となる。※1



ガイドライン上の記載

今まで耐性ができる可能性があると記載してきたが、それに関しては十分なエビデンスはないようです。

"長期間の下剤使用により,耐性(薬剤効果を維持するために増量が必要となること)や習 慣性(薬剤効果の減弱や消失)が現れる可能性が,患児・養育者や医療従事者により危惧されることがあるが,それを示唆するエビデンスはない(エビデンスレベル 1a) 重症便秘症例に対して刺激性下剤投与中に耐性獲得がみられることがあるが(エビデンスレベル 1c)24) ,大多数の下剤使用者において耐性はみられない.耐性や習慣性よりも,服薬コンプライアンス不良などにより治療が不十分な症例では,fecal impaction や排便時の肛門痛を繰り返すことで便秘の悪循環により便秘症が悪化し,薬剤を増量せざるを得ないことが問題である"※2


エビデンスのもとになっている文献3つのうち、2つは小児に関するものなので、そのまま成人に当てはまるかは何とも言えませんが、耐性形成のエビデンスは十分ではないのですね。

fecal impactionとは、便塊栓と言われるもので、これにより腸がふさがれてしまい、便秘となる。


まとめ

刺激性下剤による耐性形成の報告はあるが、大多数において耐性は見られない。

コンプライアンス不良による便秘の悪化のほうが問題。

※刺激系下剤の作用発現時間と使い分けについてはこちら



※1 中外TVフォーラム 透析患者と便秘 2009.1.20
※2 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2015


 2017年12月8日

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