トレシーバとランタスの違い

持続型インスリン製剤トレシーバとランタスの血糖低下作用、低血糖リスクの比較

当薬局ではランタス(インスリングラルギン含む)とトレシーバの処方が圧倒的に多い。

レベミルはほとんど見なので割愛。

ランタスには濃度を3倍にし、吸収を穏やかにしたランタスXRもあるので一緒に比較してみます。

作用時間について

各薬剤の発現時間・最大濃度到達時間・持続時間・定常状態までの時間について比較。
※データは各インタビューフォームより抜粋

トレシーバ(インスリンデグルデク)

発現時間:不明(投与4時間後にはほぼ最大濃度
最大濃度:4~6時間後
持続時間:26時間
定常状態:2~3日後

初回後は常に定常状態となり、常に安定した血中濃度となる。

ランタス(インスリングラルギン)

発現時間:1.1時間
最大濃度:3~30時間とばらつきあり
持続時間:24時間以上
定常状態:1~2日後

連続投与時のインスリン最大血中濃度を見ても大きな変化はなく、こちらも24時間ほぼ安定している。

ランタスXR

発現時間:1.1時間
最大濃度:1~15時間とばらつきあり
持続時間:24時間以上
定常状態:3~4日後

血中濃度はランタスより急激な上昇、低下はなく安定しているように見える。
グルコース注入率を見ても、ランタスXRでは注入量の変動・注入量ともに少なく安定している。

これらをまとめると

安定性はランタスXR、トレシーバ
定常状態までの速さはランタス

といったところでしょうか。

あまり大きな差があるとは感じられないのですが、実際の臨床成績の違いはどうなのか、あとで見ていきます。

用法の比較

添付文書上は

トレシーバ:原則毎日一定の時間 ただし±8時間で変更可能
ランタス:毎日一定の時間
ランタスXR:毎日一定の時間

となっているが、上記血中濃度を見る限りランタスも多少ずれても問題無いような気がします。


臨床成績の比較

トレシーバとランタスの比較

ランタスからトレシーバへの変更は、血糖コントロールは維持したまま1型糖尿病患者に関しては低血糖リスクを16%、投与量を13%減少、2型糖尿病患者に対してはそれぞれ67%、11%低下させたとする報告がある。※1

また、ランタスからトレシーバへの変更でⅠ型糖尿病患者さんのQOLの改善も見られている。※2

HbA1c低下作用、体重減少に関してだけ見た場合、2剤に大きな差はなかったことがメタ解析で報告されている。※3


ランタスとランタスXRの比較

2剤を比較したEDITION試験というものがいくつか存在し、その1~3をメタ解析した結果によると、ランタスXRのほうが血糖低下作用は若干優れており(-1.0%)、低血糖リスクも小さいとされている。


トレシーバとランタスXRの比較

血糖コントロール不良の2型糖尿病患者において、トレシーバとランタスXRの血糖低下作用は同等であることが比較試験において報告されている。※4

低血糖低下作用という主要目的については達成と書かれているが低血糖などの副次目的については記載がない。
詳細なデータは2018年以降公表される予定とのこと。


まとめ

血糖低下作用:トレシーバ=ランタスXR>ランタス

低血糖リスク:ランタス>ランタスXR、トレシーバ (トレシーバとランタスXRはデータ待ち)


 2018年1月13日

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