とびひや蜂窩織炎などの皮膚感染症にペニシリン系ではなく第一世代セフェムがよく処方される理由
他の薬剤ももちろん処方されますが、とびひや蜂窩織炎の患者さんにはケフラール、ラリキシンなどの第一世代セフェムがよく処方されている。
第一世代セフェム系
・ケフラール(セファクロル)
・ラリキシン(セファレキシン)
・セファメジン(セファゾリン:注射)
とびひや蜂窩織炎の原因菌として多いのは溶連菌、黄色ブドウ球菌。
どちらもグラム陽性菌なので第三世代セフェムより第一世代セフェムのほうが良いのはわかるのですが、ペニシリン系(パセトシン)でもいいいのでは?と思ったので、調べてみました。
皮膚への移行性
ケフラールは皮膚移行性が良好とされている。※1
ケフラール、ラキリシンは常用量の3倍以上の投与で良好な皮下組織への移行がみられるが、パセトシンはデータなし。※2
ちなみに、抗菌スペクトルが広くとりあえずいろいろな症例に処方される第三セフェム(メイアクト、フロモックス、バナン等)は皮膚移行性が悪い。
第3セフェム系のながでは唯一セフゾン(セフジニル)は皮膚移行性が良好。※2
皮膚移行性が良好とわかっているのは第一世代セフェムなんですね。
パセトシンに関しては不明。
抗菌スペクトルが広く万能なイメージの第三セフェムは皮膚組織への移行が悪いし、原因菌から考えても処方が少ないのは納得です。
皮膚感染症への有効性
蜂窩織炎においては経験的に第一世代セフェムが使用されることが多いとの記載※3を見たことがあるが、実際の有効性はどうなんでしょうか。
ケフラールの発売は1982年、パセトシンの発売は1975年でさほど大きな差はないので耐性菌等に関しては気にせず承認時の有効性を比較してみます。
ケフラール
深在性皮膚感染症:86%(101例)
パセトシン
深在性皮膚感染症:76.5%(68例)
経験・臨床データからもペニシリン系より第一世代セフェム系のほうが良いといったところでしょうか。
まとめ
原因菌から考えるとペニシリン系でもよさそうだが、皮膚移行性・経験則から第一世代セフェム系の処方が多いと思われる。
※1ケフラールインタビューフォーム
※2抗菌薬インターネットブック
※3感染症学・抗菌薬治療テキスト じほう