バルトレックスとファムビルの違い

帯状疱疹に対するバルトレックスとファムビルの違いは?


1日1回で腎機能に関係なく投与できるアメナリーフがでたので、今後この2剤は減っていくのかもしれませんが、今のところアメナリーフのデータが少ないためか、まだまだバルトレックスやファムビルの処方が圧倒的に多い。

当薬局ではバルトレックスの処方が圧倒的に多いのですが、ファムビルのほうが錠剤が小さいし飲みやすそうなのですが、なぜバルトレックスばかりなのでしょうか。

有効性に差はないとアメナリーフの勉強会の際にメーカーさんがいっておりましたが、なにか違いはあるのでしょうか。


基本情報

バルトレックス500mg(バラシクロビル)
適応:単純疱疹、造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制、帯状疱疹、水痘、性器ヘルペスの再発抑制
用法:帯状疱疹には1回1000㎎ 1日3回

ファムビル250㎎(ファムシクロビル)
適応:単純疱疹、帯状疱疹
用法:帯状疱疹には1回500㎎ 1日3回


単純疱疹に使用する場合は用法が異なるが、帯状疱疹に関してはどちらも1回2錠、1日3回。

両剤とも腎機能(クレアチニンクリアランス)に合わせた用量調節が必要。(添付文書参照)
また、両剤とも透析により除去されるため透析患者は透析直後に投与。


帯状疱疹の治療成績

各薬剤インタビューフォームより。

バルトレックス
有効性解析対象症例3758例中、単純疱疹を対象とした症例の改善率は99.08%(859/867例)、帯状疱疹を対象とした症例の改善率は97.75%(2,826/2,891例)であった。

ファムビル
有効性解析対象症例3248例の全般改善度は、担当医師により本剤の投与開始時と観察期間終了時の皮膚症状と疼痛の状況変化を総合的に勘案し、「著明改善」、「改善」、「やや改善」、「不変」、「悪化」及び「判定不能」で評価した。判定不能22例を除く「著明改善」及び「改善」であった患者の割合(以下、「改善率」)は、94.4%(3,045/3,226例)であった。


判定基準がそろっているか不明ですが、どちらも90%以上有効であり、帯状疱疹に対する二重盲検比較試験においてもファムビルはバルトレックスと同等(非劣勢)であるようなので、有効性に関しては同等と思われる。


帯状疱疹後神経痛の頻度

バルトレックス
海外における帯状疱疹後神経痛(PHN)消失までに要した時間は、7日間投与群(376例)で38日、14日間投与群で(381例)44日、アシクロビル7日間投与群で51日となっている。※1

抗ウイルス薬を長期間投与してもPHN改善率は変化がないようです。

国内におけるデータでは、316例の帯状疱疹に伴う疼痛の消失推移を検討したところ、疼痛消失までの日数は35日であり、PHN移行率(皮疹発現90日後の疼痛残存率)は24.7%(78/316例)と報告されている。※1



ファムビル
ファムシクロビルで治療後、PHNの消失までの日数を1年間追跡したFAMILIAR試験というものでは、695例(50歳以上508例)における疼痛残存率は、90日後では12.4%、360日後では4%という結果になっている(コホート研究) 。※2

ファムビルに関して、母数は少ない(36例)が、消失までの期間を調べたものを見ると14日であったとの報告がある。※3


ファムビルのほうがPHN改善率がよく、時間的にも早く消失させる可能性はありそうです。


副作用の比較

バルトレックス
使用成績調査4286例中
腹部不快感8例(0.2%)、頭痛6例(0.1%)

ファムビル
使用成績調査4,013例中
浮腫4例(0.1%)、悪心4例(0.1%)


上記以外に注意すべき重篤な副作用として精神神経症状、急性腎障害がある。

急性腎障害で入院となった割合を調べた海外のコホート研究によると、バルトレックス0.27%、ファロム0.28%と、どちらもやや高頻度になってしまっているが2剤間での差は見られていない。※4

腎障害について、バルトレックスのインタビューフォームに詳しく記載がある。
高齢者では脱水になりやすく、腎機能も低下していることから注意すべきとされてはいるものの、腎障害発生頻度は高齢者と非高齢者で差は見られていない。


まとめ

帯状疱疹に対する有効性に差はないと思われる

副作用頻度も大差なし

帯状疱疹後神経痛に対しては、ファムビルのほうが改善率がよく、改善までの時間が早い可能性がある



※1 バルトレックスインタビューフォーム
※2 J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014 Dec;28(12):1716-22
※3 新薬と臨床 J.New Rem & Clin. Vol 60 No.3 2011
※4 Am J Kidney Dis. 2013 May;61(5):723-9

 2018年2月13日

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