刺激感の強い点眼薬

点眼薬のpH、浸透圧と刺激感の関係は?

目薬の中にはやたら目に染みるものがある。

pHと浸透圧の基準

刺激性は点眼薬の浸透圧、pHによる影響が多い。

通常ヒトの涙液のpHは7.4前後、浸透圧は血液と同じでNaCl濃度0.9%(0.31Osm/L)とされている。※1
局法にpHや浸透圧の基準はないが、涙液に近ければ刺激性が少ないわけだが、点眼した瞬間に涙と混ざるため多少の差は問題にならないようです。

pHは5~8.5、浸透圧はNaCl濃度換算で0.6~2.0%程度ならあまり不快感はでないとの報告がある。※1

刺激感の強い薬剤

以下個人的に目に染みるといわれたことのある薬剤と添付文書上のpH、浸透圧及び副作用頻度抜粋。

インタール点眼液
pH4-7
浸透圧比0.25
刺激感:3.13%(8407例中)

キサラタン点眼液
pH:6.5-6.9
浸透圧比:1
刺激感:0.79%(3423例中)

ザラカム配合点眼液
pH:5.8-6.2
浸透圧比:1.0
刺激感:15.9%、2.6%(国内201例中、国外1536例中※)
冷所だから?でもトラバタンズはそこまででない

タプロス点眼液
pH:5.8-6.2
浸透圧比:1.0
刺激感:0.28%(3260例中)
承認時までの臨床試験では13.5%と差が大きい

トラバタンズ点眼液
pH:5.7
浸透圧比:0.9-1.1
刺激感:0.4%(眼痛0.47%)、充血:9.56%(4278例中)
充血は用量依存的に見られる。重症な物はほとんどなく、通常はそのまま使ってもらう。

ムコスタ点眼液UD
pH:5.5-6.5
浸透圧比:0.9-1.1
刺激感:2.5%(670例中※)
ムコスタは刺激感より成分による苦みの訴えが多い(15.7%) 目がしら押さえるように。

ルミガン点眼液
pH:6.9-7.5
浸透圧比:1
刺激感:1.86%(323例中※)


※:承認までの臨床試験データのため多少高値、その他は使用成績調査等含む

だいたいの薬剤は大丈夫と言われているpH,浸透圧におさまっている。

症例数によりかなり差異があるため微妙ですが、インタールは症例数が多くても刺激かんの報告が多く、実際にしみるという患者さんが多い印象。

インタール以外の抗アレルギー点眼液はどれも刺激性が少ない。
プロスタグランジン系の点眼液は刺激性が強いことになりそう。


パタノール点眼液
pH:7
浸透圧比:0.9~1.1
刺激感:0.1%(3502例中)

リボスチン点眼液
pH:6.0-8.0
浸透圧比:0.9-1.1
刺激感:0.7%(3527例中)

アレジオン点眼液
pH:6.7-7.3
浸透圧比:0.9-1.1
刺激感:0.23%(3928例中)


まとめ

pH、浸透圧比が大きくはずれているインタールは副作用報告から見ても刺激性が強い。

その他pHが類似していても薬剤により大きくことなる。
抗アレルギー薬は刺激性の報告が少なく、プロスタグランジン類は多い。



※1 医療用緑内障点眼剤の開発変遷の分析 薬剤学, 75 (1), 65-71 (2015)
 2018年2月20日

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