ホスレノール、カルタン、キックリン、レナジェルの使い分け

リンやカルシウム値に合わせたリン吸着剤の使い分け

以下の4剤は高リン血症治療薬のうち、鉄剤を含まない薬剤。

・ホスレノール(炭酸ランタン)
・カルタン(沈降炭酸カルシウム)
・キックリン(ビキサロマー)
・レナジェル(セベラマー)


これらの薬剤は併用されていたり、急に切り替えになったりすることがありますが、どのような場合に薬剤変更がおこなわれるのでしょうか。


腎不全(透析患者)のリン・カルシウムの変化

腎不全になると腎臓でビタミンDが活性ができなくなり、低カルシウム血症となる。
さらにリンの排泄不足により高リン血症となる。

高リン血症及び低カルシウム血症になると、血中カルシウム値を上昇させようと副甲状腺からパラソルモン分泌が亢進し、骨吸収を促進させる。

この状態が長く続くと、副甲状腺は肥大化し、やがてカルシウム値に関係なくパラソルモン(PTH)分泌が起こる。

この状態を2次性副甲状腺機能亢進症と呼んでいる。

腎不全による高P・低Ca → 2次性副甲状腺機能亢進 → 高P・高Ca

高リン血症治療薬はP,Ca,PTHの値で使い分ける。(補正の優先順位はP>Ca>PTH)※1



リン、カルシウム、PTHに合わせた薬剤選択

ガイドラインに9分画図というものがある。

※管理目標値 P:3.5~6.0  Ca:8.4~10.0
※活性型ビタミンD製剤は、カルシウム値を上昇させることで、2次性副甲状腺機能亢進症となるのを防ぐ。

カルシウム含有P吸着剤:カルタン(沈降炭酸カルシウム)
カルシウム非含有P吸着剤:ホスレノール、キックリン、レナジェル

高リン血症のうち、ルシウム値が高い場合カルタンは減量ないし中止、逆に低い場合はカルタンの増量となっている。


各薬剤の特徴

カルシウム値でカルタンの調整をすることはわかりましたが、その他の薬剤にも特徴があるので、使い分けができそうです。


ホスレノール(炭酸ランタン)
・消化器系副作用の発現率がやや高め(使用成績調査3074例中 悪心6.6%、便秘1.95%)
胃内pHによる影響が少ない(リン除去率はpH3:97.5%、pH5:97.1%、pH7:66.6%)※3
・蓄積性について、重金属のランタンはほとんど吸収されず、、吸収されたとしても糞便から排泄されるため安全と言われているが、エビデンスが十分とは言えない。


カルタン(沈降炭酸カルシウム)
・カルシウムを含有するためカルシウム値が低い場合に適している。
胃内pHにより効果が減弱する(リン除去率はpH3:0%、pH5:90%以上、pH7:6.2%)※2,3
・食欲低下時に服用するとカルシウムの吸収がよくなり、高Caになりやすくなる。※1
・消化器系副作用は他と比べると少ない(使用成績調査3658例中 便秘0.05%)


キックリン(ビキサロマー)
・レナジェル同様非金属性であり、レナジェルより膨張性がないため消化器系SEが少ない。
・消化器系副作用は透析患者への臨床試験502例中便秘15.9%、腹部不快1.8%
・相互作用が多い(ACE、ARB、シプロフロキサシン、チラーヂン、その他全般注意)


レナジェル(セベラマー)
・非金属であるため蓄積性は問題にならない。
・胆汁酸も吸着し、コレステロールの異化促進LDLコレステロールが低下する。※1,4
・消化器系副作用がかなり高め(使用成績調査1025例中 便秘21.9%、腹部膨満8.9%)
・胃内pHによる影響は少ないとされている。
・相互作用が多い(シプロフロキサシン、チラーヂン、その他全般注意)



リン吸着剤は食事からのリンを吸着するため食直前・食直後(食事中という処方も見る)だが、pHによる影響も大きいようです。

空腹時の胃内pHは1~1.5(食後は4~5、その後2~3時間程でもとにもどる)のため、カルタンは用法を適当にすると効果が全然でない。


まとめ

カルシウム値によりカルシウム含有(カルタン)、非含有(その他)を使い分ける

ポリマー系(レナジェル、キックリン)は蓄積性がないが、消化器系副作用・相互作用が問題

カルタンは消化器系副作用が少ないが、pHの影響が大きい、高Caには使いにくい

ホスレノールは消化器系副作用服やや高め、pHの影響は小さい、蓄積性はほぼないがデータ不十分


※1慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン
※2カルタンインタビューフォーム
※3ホスレノールインタビューフォーム
※4レナジェルインタビューフォーム
 2018年2月9日

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