エリキシル剤は乳幼児・小児に投与しても大丈夫?
以前問合せをいただいていたエリキシル剤の小児への投与。まだブログを始めたばかりのころで問合せの確認方法がよくわからず最近発見致しました。遅くなり申し訳ございません。
デカドロンエリキシルはクループ咳の時に数日分で小児に処方されたりする。
エリキシル剤はアルコール分を含んでいるが小児に投与できるのか?というご相談でした。
気になる内容でしたのでいろいろ自分なりにしっかり調べてみました。
エリキシル剤のアルコール度数
エリキシル剤は局法にて以下のように定義されている。
(1) エリキシル剤は、甘味及び方芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口液剤である。
(2) 本剤を製するには、通例、固形の有効成分又はその浸出液にエタノール、精製水、着香剤及び白糖、そのほかの糖類又は甘未剤を加えて溶かし、ろ過又はそのほかの方法によって澄明な液とする。 (第十六改正日本薬局方)
このように定義されており、お酒と同じくエタノールを含んでいる。
具体的にどの程度エタノールを含有するかについては規定されていないようです。
※某メーカーいわくエリキシル剤は4~40%とのことでした。どこかに記載あるんでしょうか。
エリキシル剤はそんなに種類がなく、デカドロン(デキサメタゾン)、ジゴシン、フェノバールくらい。(あとKCLエリキシル)
それぞれのアルコール度数は以下の通り(添付文書、IF)
デカドロン:エタノール(95)を5%含有
デキサメタゾン:局法エタノールを5%(w/v)含有
ジゴシン:記載なし(メーカー回答:10%未満)
フェノバール:記載なし
※エタノール(95)は95%(v/v)のエタノール=局法エタノール
※局法エタノールとは15℃においてエタノール95.1~96.9%(v/v)含有
エリキシル剤の禁忌
上記のようにエタノールを5%含んでいるため、これらの薬剤は嫌酒薬との併用は禁忌となっている。
エリキシル剤の禁忌:ノックビン(ジスルフィラム)、シアナマイド(シアナミド)
フェノバールではこれに加えプロカルバジン(抗がん剤)も併用禁忌となっている。
プロカルバジンはジスルフィラム様作用を持っているため、アルコールとの併用は禁忌となっている。なのでデカドロンエリキシルも避けたほうがいいのかと…
悪性リンパ腫でプロカルバジン+大量ステロイド(デキサメタゾン)とかありますが、エリキシル剤は選択してはダメですね。
ジスルフィラム様作用を示す代表としてメトロニダゾールがありますが、メトロニダゾールは禁忌ではなく、避けるようにとの文言でおさまっている。そこまで強くないってことでしょうか。
デカドロンとお酒のアルコール度数の比較
デカドロンエリキシルのエタノール5%と聞くとビールとか酎ハイと同じくらいと思ってしまうのですが、5%と5度は同じ意味なんでしょうか。
KIRINのHPに漫画で解説されていますが、%も度数も表現が違うだけで意味は同じだそうです。お酒の度数も15℃の時に測定するので局法と同じですね。
ということで、デカドロンエリキシルはビール並みのアルコール分なわけで、300mlとか飲めば間違いなく酔いそうですが、小児用量なら問題ないんでしょうか。
※デカドロンの投与量
小児には1日0.15~4mg(本剤1.5~40mL)を1~4回デカドロンエリキシルによる副作用報告
デカドロンエリキシルの使用成績調査は行わされていないため頻度は不明だが、小児において顔面紅斑、吐き気、嘔吐などはみられているが、高頻度ではなく、お酒によるものかは不明とのこと。
また、アルコール中毒の報告はなく、いくつかの文献によるとデカドロンに限らずエリキシル剤において通常の使用量で用いられる場合にアルコール中毒が起こることはまずないとされているとのことでした。(メーカー回答)
そうとうお酒が弱い体質の場合起こることはあるのかもしれませんが、まず問題にならないと思って大丈夫そうですね。
実際しょっちゅう小児科で出ますが一度もアル中の話は今のところ聞いたことないです。
まとめ
デカドロンエリキシル剤はアルコール分は5%含有
小児において添付文書の投与量ではアルコール中毒の心配はほぼなし