リファンピシンとミノサイクリンの併用

術後感染 リファンピシン+ミノマイシンの併用は何の治療?

先日外来で遭遇した処方箋。

リファンピシンカプセル150㎎ 3CP 朝食前
ミノマイシン錠50㎎ 2T 朝食前

リファンピシンは結核かMACでしか見たことなかったが、ミノマイシンとの併用はされない。

患者さんに話を聞くと、術後の感染で、骨にまで感染してしまっており、骨髄までいくと大変だから治療しているとのこと。

以前MRSAに対してリファンピシン、クリンダマイシン、ミノマイシン当たりを併用する場合があるというのを見かけた覚えがある。

普段あまり見ない処方なので詳しく調べてみました。

リファンピシンの適応

リファンピシンは結核菌・非結核性抗酸菌症、ハンセン病の適応しかない。
これらはすべて抗酸菌が原因で起こる疾患。

※抗酸菌
結核菌は、抗酸菌属一つ。抗酸菌属には、結核菌以外に、非結核性抗酸菌やらい菌などがいる。

適応は取れていないが有効とされている細菌として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、オウム病クラミジア、レジオネラ・ニューモフィラ、淋菌、髄膜炎菌がある。※1

このあたりが原因菌として考えられそう。


MRSAに対するリファンピシン、ミノマイシンの有効性

「リファンピシン ミノマイシン」に関する併用についてはMRSAのガイドラインに記載がある。

"感受性
5. 抗 MRSA 薬以外のスルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST 合剤)とリファンピ シン(RFP)の MIC90 は 0.125 と≦0.06 μg/mL であるが,近年は極少数ではあるが耐性菌が認められる。 6.CA-MRSA はβ―ラクタム薬に感性を示すことがあるが,容易に高度耐性化するので使 用しない。 

7.CA-MRSA は抗 MRSA 薬以外に,クリンダマイシン(CLDM),ミノサイクリン (MINO),キノロン系薬,アミノグリコシド系薬に感性を有す場合が多い。

とのこと。
さらに詳しく見ていくと、

上記の抗MRSA薬以外にも治療効果が期待できる抗菌薬がある。ST 合剤とRFPのMIC90 は 0.125と≦0.06μg/mL である。RFP の単独使用は耐性化しやすく ST 合剤との 併用によって RNA 合成を 3 段階で阻害する結果,耐性菌出現率が抑制されると報告されている。  しかし,僅かながら耐性菌も存在するので薬剤感受性試験は必要である
~略~
いずれの抗菌薬も良好な感受性を示しているが,各施設間で特有のMRSAが存在するため,それぞれで異なった MIC値を取る場合があるの で,自施設の各抗MRSA薬に対する感受性を把握する必要がある。 CA-MRSAはβ―ラクタム薬に感性を示す場合があるが,β―ラクタム薬で容易に高度耐性化するのでβ―ラクタム薬は使用しない。CA-MRSAは SCCmec type II 以外が多いの で,多剤耐性化は type II ほど進んでいない。そのため,CLDM,MINO,キノロン系薬, アミノグリコシド系薬にも感性を示す株が存在する。
~略~
併用療法
4.VCM と RFP の併用は経験的に行われる場合があるが,VCM 単独療法を上回る高い エビデンスレベルの臨床成績はないので注意を要する(B-II)”。※2

とのことで、リファンピシンはMRSAに感受性がある。(耐性菌もいる)
ミノマイシンはCA-MRSA(市中)であれば感受性があるものが多いと。

バンコマイシンで治療する際に併用することもあるがエビデンスは不十分。
海外では普通に使われているとのこと。



では、今回のようにバンコマイシン等の抗MRSA治療後の内服は意味あるのでしょうか。


整形領域に対する有効性

"骨・間接感染症
9.RFPに対する MRSA の感受性は通常良好である。また,抗MRSA薬とRFPを併用したほうがよいとする報告がある(B-III)。併用療法に関しては,人工膝関節置換術の術後感染の治療でRFP併用群と非併用群を比較し,RFP併用群のほうが有意に再発率が低かったとする報告がある
~略~
骨・間接のインプラント感染
抗菌薬の選択・投与法は化膿性骨髄炎の項に準ずる。MRSA による PJI でインプラント を温存した場合の抗菌薬の投与期間に関して,明確な基準はない。2~6 週の抗菌薬の静脈 内投与と RFPの併用,その後感受性のある経口抗菌薬と RFPの併用を人工股関節で3カ 月,人工膝関節で6カ月間投与するとの専門家の意見もある"



MRSAの骨・間接感染症について、通常は早期に静脈投与、その後寛解維持のため経口投与が行うとする意見があるというレベルにとどまっているが、今回の処方はこれでしょうか。

今回の患者さんも入院中は何か点滴していたと言っていたので、患者さんの話とも合う。

リファンピシン+感受性のある何か(ST合剤、ミノマイシン、クリンダマイシン)が候補になるようなので今回はRFP+MINOで処方されていた模様。




※1 抗菌薬インターネットブック
※2 MRSA感染症の治療ガイドライン
 2018年5月11日

関連記事