BPSDに使用される薬剤

BPSDに対する治療薬のエビデンス

BPSDは認知症にみられる周辺症状。
主な症状は幻覚、妄想、うつ、不安、焦燥、興奮、攻撃性、徘徊。

これらの症状に対して抗精神病薬や抑肝散、チアプリドなどが処方されているのを見るが、各薬剤のエビデンスはどの程度なのでしょうか。


BPSDの治療方針

まず初めは非薬物療法、それで改善がみられない場合は薬物療法。

薬物療法の第一選択はコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)及びNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)。※3

緊急性が高い場合(暴れてしまっている等)や効果がみられない場合は抗精神病薬(非定型)。

その他に抑肝散、カルバマゼピン、バルプロ酸、チアプリドなどがある。

以下※3ガイドラインより



エビデンス

コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬

認知機能進行抑制だけでなく、BPSDに対しても有効とする報告あり。※1

認知機能低下抑制作用より低用量で効果がみられることがあるとのことだが、認知機能抑制効果を期待するため、副作用が問題にならなければ通常量までもっていくべき。※4

低用量持続投与での有効性に関しては十分なエビデンスはない。※3

非定型抗精神病薬

リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、ペロスピロンで有効とする報告あり。※1

幻覚、妄想、攻撃性、焦燥において選択肢のひとつとされている。※2,3

ただし、治療効果はそれほど大きくないといった報告や有効性自体を否定する報告や、使用により脳血管障害、死亡率(1.6~1.7倍)が増加することがメタ解析により報告されている。※1,※3

定型と比べれば少ないがそれでも錐体外路症状、傾眠などがみられる。

レビー小体型認知症の場合、抗精神病薬に対して過敏性を示す場合があるためさらに注意が必要。



以下は※3ガイドラインの推奨薬剤

幻覚、妄想、不安
→リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール

焦燥性興奮
→リスペリドン、アリピプラゾール
(抑肝散、トラゾドン、エスシタロプラム、セルトラリン、カルバマゼピン、チアプリド※2)

睡眠障害、徘徊
→リスペリドン、(トラゾドン※2)

レビー小体型認知症
→オランザピン、クエチアピン

定型抗精神病薬

ハロベリドールが幻覚・妄想に使用を考慮してもよいといった報告があるが、有効性にかんして非定型抗精神病薬と差がなく、錐体外路症状や傾眠などの副作用が非定型より多いため使用は避けるべき。※1

定型、非定型ともに痙攣の閾値を下げるとの報告があるため痙攣の既往歴がある場合は注意。この場合はバルプロ酸ナトリウムなどの抗てんかん薬を用いる。※1

また、循環器系への影響が報告されているため狭心症、心筋梗塞、不整脈などの循環器系疾患を持っている場合は注意。

抑肝散

メタ解析にて興奮、攻撃、幻覚、幻聴に有効とされている。
錐体外路症状、抗コリン症状などの副作用がでない。※1

ただし、プラセボとの比較試験がない。

バルプロ酸ナトリウム

オープン試験においては攻撃性、興奮に対して有効とする報告が多数。
RCTにおいては否定的な結果が多い。※1

チアプリド

有効とする報告はあるが、どれも1980年代の報告であり、臨床で使われているより高用量での試験となっており、有効性に乏しい。※1

錐体外路症状も見られるため注意。

ベンゾジアゼピン系

認知機能悪化、せん妄、過鎮静、転倒リスクとなるためBPSDの不安症状に対しては使用するべきではない。※1

長時間作用型は短時間より副作用が出やすいため使用は避ける。
ただし、短時間の連用は反跳性不安を引き起こす場合があるため注意。※3

抗うつ薬

BPSDのうつ症状に対して三環系抗うつ薬の有効性はメタ解析で有効とされているが、抗コリン作用による認知機能悪化、せん妄のリスクとなるため使用は最低限にとどめる。※1

※3では三環系抗うつ薬は原則使用しないこととなっており、SNRI,SSRIを使用するようにとなっている。

SSRI,SNRIについてはエビデンスレベルの高い報告はない。※1

抗うつ薬全般において、向精神薬同様てんかん閾値の低下、心血管疾患の悪化が報告されているため注意。


メラトニン受容体刺激薬(ロゼレム)

入院時より内服を開始することでせん妄発症リスクを軽減したとの報告あり。※2



※1 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
※2 認知症疾患治療ガイドライン2017
※3 かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン
※4 クレデンシャル 2018 5 No.116
 2018/05/10

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