低ナトリウム血症時のNa補正速度

低ナトリウム血症の種類、ナトリム補正速度、利尿剤の投与について

利尿剤はNaやKの排泄を促進するため低ナトリウム血症や低カリウム血症を引き起こす場合がある。

ただし、低ナトリウム血症のタイプによっては逆に利尿剤(フロセミド)を投与する場合がある。

低ナトリウム血症の種類と治療

低ナトリウム血症は細胞外液の増減によって治療方針が異なる。

細胞外液減少型
細胞外液、Naの共に減少するが、Naの減少が大きい…外液↓ Na↓↓
原因:嘔吐、下痢、利尿剤

→生理食塩水


細胞外液正常型
細胞外液、Naは正常で、TBW(総体液量)が増加している状態…外液- Na‐
原因:SIADH、甲状腺機能低下

→原因疾患の治療、利尿剤


細胞外液増加型
細胞外液、Na共に増加するが、外液の増加が大きい…外液↑↑ Na↑
原因:腎不全、心不全、肝不全

→水分制限、利尿剤、生理食塩水


※型に関係なく重度の低ナトリウム血症になっている場合は生理食塩水(+利尿剤)、3%NaClで治療

Naの投与速度

血清Na値の補正速度
0.5mEq/L/hを超えない。※1
6~10mEq/L/dayを超えない。※2

※1:急性期は1~2mEq/h
※2:~15mEq/h等の記載もあり


点滴速度
3.0%NaCL:0.6ml/kg/h (初期投与量)
(同時に維持輸液として生理的食塩水を時間あたり20〜40ml投与する)

その後は1~2時間おきにNaをみつつ、補正速度0.5mEq/Lになるよう調整。




※3%食塩水の初期投与量0.6ml/kg/hの根拠

0.9%NaC(生食)=154mEq/L=0.154mEq/mL
3.0%NaCl=3.33×0.154=0.51mEq/mL

1時間当たりの補正は0.5mEq/L
血清Na:120mEq/L→120.5mEq/L にすると考えると

0.5mEq/L上昇させるのに必要なNa
(120.5 − 120)×体液量(体重× 0.6)mEq  ※体重の60%が水分のため

ここで体重60㎏とすると、上記式より必要Naは18mEq/hとなる。

つまり、3%NaCLをXml用いて18mEq摂取できるようにすればいいので
3%NaClは0.51mEq/mlより
X(mL)×0.51(mEq/ml)=18(mEq/h)
X=35ml/60kg/h

これを体重1㎏当たりに直すと0.58ml/kg/h≒0.6ml/kg/h


生食で治療する場合は水分過剰にならないように利尿剤の追加を考慮



※補正を徐々に行う理由
急速にNa補正を行うと、浸透圧性脱髄症候群を起こす危険あるため。


参考
日本内科学会雑誌 105 巻 4 号 675
Vol.2 No.4 2009/4 レジデント 163
日本内科学会雑誌 104 巻 5 号 916
 2018年6月14日

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