DOACの比較

DOACとワーファリンの有効性、安全性の比較 大規模臨床試験の結果より

DOAC同士を直接比較している試験はあまりないようですが、ワーファリンとの大規模臨床試験はおのおのある。

また、これらの結果等をもとにネットワークメタアナリシスが行われている。

各薬剤の大規模臨床試験

対象は非弁膜症性心房細動患者
イベント発生=脳卒中または全身性塞栓症

プラザキサ(ダビガトラン)

RE-LY試験
18,113例

イベント発生ハザード比(vsワーファリン)
110㎎:0.91(0.75-1.12) 非劣性
150㎎:0.66(0.53-0.82) 非劣性(優越)

大出血リスク
110㎎:2.76%
150㎎:3.11%
ワーファリン:3.36%
(110㎎:ハザード比0.80 0.70-0.93)非劣性(優越)
(150㎎:ハザード比0.94 0.82-1.08)非劣生

全死亡
110㎎:3.75% 非劣性
150㎎:3.64% 非劣性
ワーファリン:4.13%

イグザレル(リバーロキサバン)

ROCKET-AF試験
14,264例

イベント発生ハザード比(vsワーファリン)
20mg:0.79(0.66-0.96) 非劣性(優越)
※Ccr30-49mL/minには15㎎

大出血リスク及び臨床的に問題となる出血
20mg:14.9%
ワーファリン:14.5%
(ハザード比1.03 0.96-1.11) 非劣性

全死亡
20mg:1.87%
ワーファリン:2.21%
(ハザード比0.85 0.70-1.02) 非劣性

エリキュース(アピキサバン)

ARISTOTLE試験
18,201例

イベント発生ハザード比(vsワーファリン)
5㎎:0.79(0.66-0.95) 非劣性(優越)

大出血リスク
5㎎:2.13%
ワーファリン:3.09%
(ハザード比0.69 0.60-0.80)非劣性(優越)

全死亡
5mg:3.52 %
ワーファリン:3.94%
(ハザード比0.89 0.80-1.00) 非劣性(優越)

リクシアナ(エドキサバン)

ENGAGE AF-TIMI 48試験
21,026例

イベント発生ハザード比(vsワーファリン)
30㎎:1.07(0.87-1.31) 非劣性
60mg:0.79(0.63-0.99) 非劣性(優越)

大出血リスク
30㎎:1.61%
60㎎:2.75
ワーファリン:3.42%
(30㎎:ハザード比0.47 0.41-0.55)非劣性(優越)
(60㎎:ハザード比0.80 0.71-0.91)非劣性(優越)

全死亡
30㎎:3.80%
60㎎:3.99%
ワーファリン:4.35%
(30㎎:ハザード比0.87 0.79-0.96)非劣性(優越)
(60㎎:ハザード比0.92 0.83-1.01)非劣性


※試験結果は各インタビューフォームより(ダビガトランのRRは抗血栓療法トライアルデータベースより)

インタビューフォームやその他のデータベースによって若干数値が違うのはなぜでしょうか。

DOACはワーファリンより全てにおいて非劣性、薬剤によっては一部優性。


DOACのメタアナリシス

日経メディアルに記載されていたネットワークメタアナリシスの結果をまとめたもの。
※直接比較されていない薬剤を間接的に比較する。

23試験(94,656例)

ワーファリンとの比較

脳卒中または全身塞栓症発症リスク(vsワーファリン)
プラザキサ150mg :0.65(0.52-0.81)(優性)
イグザレルト20mg:0.88(0.74-1.03)(非劣性)
エリキュース5mg :0.79(0.66-0.94)(優性)
リクシアナ60mg :0.86(0.74-1.01)(非劣性)

脳梗塞発症リスクのみ(vsワーファリン)
プラザキサ150mg :0.76 (0.58-0.98) (優性)
イグザレルト20mg:非劣性
エリキュース5mg :非劣性
リクシアナ60mg :1.44 (1.21-1.71) (劣性)

総死亡(vsワーファリン)
プラザキサ150mg :0.88(0.77-1.01) (非劣性)
イグザレルト20mg:0.83(0.69-1.00) (非劣性)
エリキュース5mg :0.88 (0.79-0.98) (優性)
リクシアナ30mg :0.86 (0.78-0.96) (優性)

大出血(vsワーファリン)
プラザキサ110mg :0.80(0.69-0.93)(優性)
イグザレルト20mg:非劣性
エリキュース5mg :0.71(0.61-0.81)(優性)
リクシアナ30mg :0.46(0.40-0.54)(優性)
リクシアナ60mg :0.78(0.69-0.90)(優性)

頭蓋内出血(vsワーファリン)
全てのDOACでワーファリンより低かった

消化管出血(vsワーファリン)
→ワーファリンよりリスク増加がいくつかのDOACで見られた
プラザキサ150mg:1.52(1.20-1.91)
イグザレルト20㎎:1.47(1.20-1.81)
リクシアナ60㎎:1.22(1.01-1.49)

DOAC同士の比較(差があったもの)

全身塞栓症発症リスク(DOAC同士の比較)
プラザキサ150㎎(vsリクシアナ60㎎) :1.33(1.02-1.75)→プラザキサ劣性
プラザキサ150㎎(vsイグザレルト20㎎):1.35(1.03-1.78)→プラザキサ劣性

脳梗塞発症リスク(DOAC同士の比較)
どの組み合わせでも有意差はなし

総死亡率(DOAC同士の比較)
どの組み合わせでも有意差はなし

大出血(DOAC同士の比較)
プラザキサ150㎎(vsエリキュース5㎎):1.33(1.09-1.62)→プラザキサ劣性
イグザレルト20㎎(vsエリキュース5㎎):1.45(1.19-1.78)→イグザレルト劣性
イグザレルト20㎎(vsリクシアナ60㎎):1.31(1.07-1.59)→イグザレルト劣性

頭蓋内出血(DOAC同士の比較)
どの組み合わせでも有意差はなし

消化管出血(DOAC同士の比較)
プラザキサ150㎎(vsエリキュース5㎎):1.71(1.21-2.43)→プラザキサ劣性
リクシアナ60㎎(vsエリキュース5㎎):1.38(1.00-1.92)→リクシアナ劣性
イグザレルト20㎎(vsエリキュース5㎎):1.66(1.19-2.33)→イグザレルト劣性


これらの結果から、脳卒中または全身の塞栓症、心筋梗塞、総死亡を含む有効性のランキングでも、大出血と消化管出血の安全性のランキングでも、アピキサバン5mg1日2回が首位

脳卒中または全身塞栓症の予防効果におけるランキングの最下位はワーファリンであったとまとめられている。

原文:BMJ. 2017 Nov 28;359:j5058.


その他


まとめ

ワーファリンと比較された各DOACの大規模臨床試験より、

有効性は・・・
脳卒中または全身性血栓の予防:すべてのDOACがワーファリンと同等以上、ダビガトラン(300㎎/日)とアピキサバンは有意に低下。

全死亡:すべてのDOACがワーファリンと同等以上、アピキサバンは有意に低下。

虚血性脳卒中:すべてのDOACがワーファリンと同等以上、ダビガトラン(300㎎/日)は有意に低下。

副作用は・・・
大出血:すべてのDOACがワーファリンと同等以上の安全性、ダビガトラン(220mg/日)、アピキサバン、エドキサバンで有意に少ない。

腎機能低下者:すべての薬剤が腎機能低下に伴い出血リスクが増加するが、アピキサバン、エドキサバンはワーファリンより有意に少ない。

消化管出血:ダビガトラン(300㎎/日)、リバーロキサバンで有意に上昇。


参考
各薬剤インタビューフォーム
日経メディカル 2017/12/20 DOACのイチオシはアキピサバンか
日本内科学会雑誌第105巻第11号

 2018年6月12日

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