膀胱炎、腎盂腎炎の原因菌と抗生剤の選択
感染症治療ガイドライン(尿路感染症)2015より抜粋※重症を除く、外来治療のもの。
代表的な尿路感染症
・膀胱炎
・腎盂腎炎
・前立腺炎
・カテーテル関連尿路感染症
膀胱炎(急性単純性膀胱炎)
原因菌
・閉経前女性
グラム陰性桿菌(E.coli,Proteus mirabilis,Klebsiella属):80~85% そのうち大腸菌(E.coli):90%
グラム陽性球菌(Staphylococcus属,Streptococcus属,Enterococcus属):15~20%
・閉経後女性(高齢者)
グラム陰性桿菌(大腸菌:キノロン耐性18%)
グラム陽性球菌:9%
グラム陽性球菌の割合が少なく、大腸菌はキノロン耐性が高い。
グラム陽性球菌:9%
グラム陽性球菌の割合が少なく、大腸菌はキノロン耐性が高い。
治療
・閉経前
大腸菌:オーグメンチン、セフェム系、キノロン系、ST合剤いずれも感受性90%
グラム陽性球菌:キノロン系(βラクタム系無効が多い)
※ESBL(大腸菌の約5%)にはファロペネム、ホスホマイシン(キノロン耐性70%)
→第一選択:キノロン系(レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン)
・閉経後
大腸菌:オーグメンチン、セフェム系 (キノロン系は耐性多いため△)
グラム陽性球菌:キノロン系
※ESBLにはファロペネム、ホスホマイシン
再発を繰り返す場合、エストリオールが有効との報告あり。
→第一選択:セフェム系(セファクロル、セフジニル、セフカペン、セフポドキシム)、オーグメンチン、(グラム陽性球菌と分かっていればキノロン系)
※セフジトレンも尿中排泄率高いから問題なく使用できると思われる。
※グラム陽性球菌の場合はβラクタム系無効
・閉経後
大腸菌:オーグメンチン、セフェム系 (キノロン系は耐性多いため△)
グラム陽性球菌:キノロン系
※ESBLにはファロペネム、ホスホマイシン
再発を繰り返す場合、エストリオールが有効との報告あり。
→第一選択:セフェム系(セファクロル、セフジニル、セフカペン、セフポドキシム)、オーグメンチン、(グラム陽性球菌と分かっていればキノロン系)
※セフジトレンも尿中排泄率高いから問題なく使用できると思われる。
※グラム陽性球菌の場合はβラクタム系無効
・投与期間
オーグメンチン、セフェム系薬 :7日間
膀胱炎(複雑性)
原因菌
多岐にわたる
グラム陰性桿菌:E. coli,Klebsiella 属,Citrobacter 属,Enterobacter 属,Serratia 属,
Proteus 属,Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌) など
グラム陽性球菌:Enterococcus 属,Staphylococcus 属など
耐性菌が多く分離される(キノロン耐性、MRSA、メタロβラクタマーゼ産生※、ESBL)
※ペニシリン、セフェム両方無効、カルバペネム系も一部分解
→第一選択:キノロン系(レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン、シプロフロキサシン)、オーグメンチン
・投与期間
全て7~14日
グラム陽性球菌:Enterococcus 属,Staphylococcus 属など
耐性菌が多く分離される(キノロン耐性、MRSA、メタロβラクタマーゼ産生※、ESBL)
※ペニシリン、セフェム両方無効、カルバペネム系も一部分解
治療
新経口セフェム系薬や経口キノロン系薬など抗菌スペクトルが広く抗菌力に優れている薬剤を選択し、薬剤感受 性検査成績の判明後はその結果に基づいて薬剤選択を行う。→第一選択:キノロン系(レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン、シプロフロキサシン)、オーグメンチン
・投与期間
全て7~14日
腎盂腎炎(急性単純性)※閉経前後関係なし、複雑性も治療薬は同じ
原因菌
膀胱炎(単純性)と同じくグラム陰性桿菌(大腸菌70%)、グラム陽性球菌
治療
腎排泄型の薬剤で、β-ラクタム系薬、キノロン系薬などが推奨
グラム陰性桿菌(大腸菌、Klebsiella)はβ-ラクタム系薬、キノロン系感受性良好
ESBL注意
グラム陰性桿菌(大腸菌、Klebsiella)はβ-ラクタム系薬、キノロン系感受性良好
ESBL注意
→第一選択:キノロン系(レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン、シプロフロキサシン)
ただし、大腸菌のキノロン耐性も進んでいるため、てキノロン耐性が20%以上報告されている地域においては第2選択薬の第3世代セフェム系。
・投与期間
トータル14日間
エンピリック療法3日→培養結果が判明次第definitive therapyに切り替え
カテーテル関連尿路感染症
原因菌
グラム陰性桿菌(E. coli,Klebsiella属、P.aeruginosa)が中心。グラム陽性球菌(Enterococcus属)は原因菌になりうるが、Staphylococcus属は少ない)
その他腸内細菌科(Serratia属,Citrobacter属,Enterobacter属など),Acinetobacter 属などのブドウ糖非発酵菌などが原因菌となる。
治療
緑膿菌やMRSAも考えられるため感受性をみて治療。
※参考
Enterococcus属
E.faecalis:ペニシリン系(セフェム系×)
E.faecium:バンコマイシン(ペニシリン系×、セフェム系×)
※参考
Enterococcus属
E.faecalis:ペニシリン系(セフェム系×)
E.faecium:バンコマイシン(ペニシリン系×、セフェム系×)
細菌性前立腺炎(急性)
原因菌
大腸菌:65~87%
緑膿菌:3~13%Klebsiella属:2~6%
グラム陽性球菌:3~5%
治療
・軽度~中度
→第一選択:キノロン系(レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン、シプロフロキサシン)
緑膿菌以外は大体カバーできる
・重度
緑膿菌もいるため広域抗生剤点滴(セフォチアム、セフタジジム、フロモキセフ)
・投与期間
軽度~中度:14日間
重度:エンピリック療法3日→培養結果が判明次第definitive therapyに切り替え トータル14~28日
軽度~中度:14日間
重度:エンピリック療法3日→培養結果が判明次第definitive therapyに切り替え トータル14~28日
その他
透析患者の膀胱炎レボフロキサシン初日1回500mg、以後1日1回250mg・隔日投与(7~14 日間)
ESBLに有効な薬剤
ペニシリン、第1~3セフェム系は無効だが、例外的に広域ペニシリンのピペラシリン、オキサセフェム系のセフメタゾール、フロモキセフは有効とされている※1
まとめ
膀胱炎
閉経前:グラム陽性球菌も割合いるためキノロン系
閉経後:グラム陽性球菌少なく、陰性桿菌のキノロン耐性があるためセフェム系
※腸球菌にはβラクタム無効
※腸球菌にはβラクタム無効
腎盂腎炎
閉経後、閉経前、複雑、単純関係なく基本キノロン系
カテーテル関連尿路感染症
MRSA、緑膿菌、腸球菌なども考えられるため感受性を見て治療。
前立腺炎
軽~中度;キノロン系 重度は3,4世代セフェム点滴
※1 感染症TODAY 2015.7.15
カテーテル関連尿路感染症
MRSA、緑膿菌、腸球菌なども考えられるため感受性を見て治療。
前立腺炎
軽~中度;キノロン系 重度は3,4世代セフェム点滴
※1 感染症TODAY 2015.7.15