ラミシールやニゾラールなどの外用剤の耐性菌はいる?
抗生剤の乱用は菌を耐性化させる。
ここ最近臨床現場における抗生剤の乱用が大きな問題となっており、厚労省からも抗微生物薬適正使用の手引きがだされている。
細菌に関する耐性化は使用により増えますが、真菌についても同じなのでしょうか。
そもそも真菌症に出くわす機会が少なく、真菌の耐性菌についてあまり話を聞かなかったのですが、カンジダ属のフルコナゾールに対する耐性化やアスペルギルス属の耐性化に関しては多くの報告がありました。※3
では普段よく見る白癬菌に関する耐性菌についてはどうなんでしょうか。
耐性菌の定義
そもそも何をもって耐性菌と定義しているのか。
これときまっているわけではないようだが、薬が効かなければ耐性菌なんでしょう。
そしてその判断にMICが使われますが、MICが低いものが投与したときに一番効果があるとは限らないですが、参考にはなる。
米国臨床検査標準協会(CLSI)というところがMICのカットオフ値(ブレイクポイント)を定めている。
各種抗生剤に対して、菌別に感受性(sensitive)、中等度感受性(intermediate)、低感受性(resistant)のブレイクポントを公表している。
例)
肺炎球菌に対する経口ぺニシリン(非髄膜炎)のブレイクポイント
感受性:MIC≦0.06、中等度0.12-1、耐性MIC≧2
すべての菌のブレイクポントが把握できているわけではないが、真菌についても記載がある。
真菌のブレイクポント
真菌のうち、CSLIがブレイクポントを設定できているのはカンジダ属に対する一部の抗真菌薬のみだけのようです。※1
真菌の耐性化状況
耐性菌の報告があるカンジダ属やアスペルギルス属に関して、年次的に耐性株数を調査しているものを見ると、年々増加しているわけではないようです。
よって、真菌は抗真菌薬の使用とともにどんどん増加しているとは言えないようです。
使用による耐性(2次耐性)ではなく、もともと効かない(1次耐性)であることがほとんどのようです。※2
白癬菌の耐性化状況
本段の白癬菌の年次推移についても調査しているものがありました。
10年後のマイコスポールクリームの有効性について調べたものですが、10年前も10年後も治療成績に差はなく、MICの年次的上昇も見られなかったとのこと。※1
以前ニゾラールクリームとラミシールクリームを比較した際も、どちらもMICはかなり低く、感受性が悪い菌は見られていませんでした。
現時点では抗真菌薬の使用による真菌の耐性化はほぼみられていないようです。
薬が効かないのは耐性化したのではなく、元々耐性(1次耐性)であることが原因のようです。
参考
※1THE JAPANESE JOURNAL OF ANTIBIOTICS 49-12 1095(47) 承認後10年目におけるBifonazoleの足白癬に対する基礎的・臨床的検討 ※2モダンメディア56 巻 6号2010[真菌] 119 真菌の薬剤耐性化の現状は?そして今後は?
※3カスポファンギンに対する真菌感受性調査(特定使用成績調査結果)カンジダ属およびアスペルギルス属に対するカスポファンギン感受性の年次推移