PMDAの有害事象自発報告データベースJADERの解析方法
シグナル検出について
以下は※1論文の内容表1が通常の統計分析で扱われる度数表と異なる点は,薬剤の種類および有害事象の種類が極めて多く,表のセル数が膨大であることで ある.たとえば,日本で市販されている 12,000 超の薬剤と 17,000 超の有害事象(MedDRA の PT)では 2億を超える組合せ数(セル数)であり, 個々のセルの度数は小さく,1 件や 2 件といった セルがかなりの割合を占めることになる.
表1に おける特定の薬剤と特定の有害事象に注目すると,表2のような 2×2 分割表ができる."
"こうしたデータを用いるデータマイニング手法にはいくつかの仮定がある。
① ある薬剤が特定の有害反応を起こすならば, 他の薬剤と比べて,この有害反応が多く報告される
② 同じ有害反応について,(過少)報告の程度は異なる薬剤間で同じである
③ 種々の有害反応の報告割合や報告パターンは,異なる薬剤間で類似している”
解析したい薬剤及び有害事象を1つ決めて、それ以外の薬剤によるその他の有害事象の発症割合と比較することで特定の薬剤による特定の有害事象のリスクを求めるといった感じでしょうか。
データマイニングの手法としては以下の4つが主流とのこと
PPR:報告割合の比
ROR:オッズ比(n11/n21÷n12/n22)
IC:?
RR:?
国によって使うものが違う傾向にあるよう。
JADERの解析している論部をみるとRORが多い印象。
シグナル検出の具体的手順
※2論文では抗がん剤における手足症候群のリスクについて解析している。この時JADERに報告されていた有害事象の件数は338,224件。
このうち、カペシタビンが投与されていたものが3186件あり、有害事象が手足症候群であったものは420件。
全ての薬剤における手足症候群の報告件数は1218件。
この情報を先ほどの紹介した2×2の表にすると以下のようになる。
特定の有害事象
(手足症候群) |
その他の有害事象
|
合計
|
|
特定の薬剤
(カペシタビン) |
420(n11)
|
2766(n12)
|
3186
|
その他の薬剤
|
798(n21)
|
334240(n22)
|
335038
|
合計
|
1218
|
337006
|
338224
|
(この論文ではPTが手足症候群の1つのみ。
あのJADERの表から手足症候群とかカペシタビンっていうものを拾い上げて数をまとめればいいのでしょうか。それとも解析ソフトで全部できる?)
これよりRORを求めると、
ROR = n11/n21÷n12/n22
= 420/798÷2766/334340
= 63.6
となり、論文の結果通り(下図)の値になる。
この値が何を示しているのか。
オッズ比なので、カペシタビン投与により手足症候群が60倍起こりやすくなるとは解釈できない。
※オッズ比:ある要因が(過去に)どの程度あったかを比較
リスク比:ある要因により(この先)どの程度影響がでるかを示す値
ただし、疾患が稀な場合はリスク比に近似できるのでこの場合60倍起こりやすい解釈できる?
論文では、JADERに記載のある発症までの期間や転帰も解析し、有害事象発現日や生存時間分析もしている。
具体的にどうやってやるのか全然理解できませんが…
とりあえず、カペシタビンのRORが他の薬剤より大きいので、手足症候群が他の薬剤と比べてもカペシタビンで起こりやすくなることはわかりますが、発症率は求められませんね。
PMDAは、シグナル検出は詳細な調査が必要な副作用報告の発見と調査の必要な優先順位付けを行う上で有用としている。(下図)
こういう使い方になるんですね。
その薬剤である有害事象リスクが増えるのかもしれない、でもわからないってときにシグナル検出を行うことで薬剤のせいである可能性がわかる。
その副作用が起こるのはわかっていて、それがどの程度の確率で起こるのかを知りたいときは臨床試験(MID-NETの解析なら求められる?)ってところでしょうか。
※1 Jpn J Pharmacoepidemiol, 14Ç1É June 2009:27
※2 YAKUGAKU ZASSHI 136(3) 507―515 (2016) 2016 The Pharmaceutical Society of Japan