味噌と抗高血圧の作用機序が判明した?
ネットで調べてみると、「味噌 血圧 下がる」といった記事がたくさんあり、味噌による抗高血圧作用は以前から報告があるようでした。
高齢者施設でも高血圧、心不全、浮腫のある患者さんの食事は減塩になっており、味噌汁の回数も通常より減らされているものを見たことがあるのですが・・・あれは無意味?
いろいろ疑問がでてきたので詳しく調べてみた。
レニンーアンギオテンシンーアルドステロン(RAAS)
味噌にはACE阻害活性があるとのことで、とりあえずRAASを簡単におさらい。
レニンはNa減少、体液量減少などに起因して分泌される。
なので、塩分摂取が多い場合、Na↑、体液量↑となり、負のフィードバックによりレニンの分泌が抑制される。※4
(心不全の場合、拍出量が低下→循環血流が低下するため、Na↑、水↑の状態でもRAAS系が亢進→Na、水貯留となってしまう。)
余談ですが、塩分過剰による高血圧は今述べたように、既にRAAS系は抑制されているので、ACEを阻害しても効果が出にくいとする意見もあるようです。
(心不全の場合、拍出量が低下→循環血流が低下するため、Na↑、水↑の状態でもRAAS系が亢進→Na、水貯留となってしまう。)
余談ですが、塩分過剰による高血圧は今述べたように、既にRAAS系は抑制されているので、ACEを阻害しても効果が出にくいとする意見もあるようです。
食品のACE阻害活性
テレビで見たものは味噌に含まれる成分についてでしたが、健康食品でも既にいろいろ発売している。
これら健康食品の、血圧に有効とされる降圧機序としてはACE阻害活性に基づくものが多いとのこと。※1(4章-9)
ACE阻害活性があるとされる成分※2
・ペプチド類(サーデン~、ラクトトリ~、わかめ~、かつお~、ごま~)
・酢酸
・GABA
・杜仲葉(トチュウ)
・フラボノイド
このうち、ペプチド類、酢酸はACE阻害活性があるとされている。
ただし、トクホのACE阻害作用は医薬品の100-1000分の1との研究結果がある。※3
ただ、少なくともACE阻害活性はあるわけですね。
では、本題の味噌と血圧の関係について。
通常塩分過剰摂取は確実に血圧上昇につながる。
ガイドラインにも以下の記載がある。
”食塩過剰摂取が血圧上昇と関連があることは以前よりINTERSALT)などの観察研究によって指摘されてきた。さらにDASH-Sodiumをはじめとする多くの欧米の介入試験でも,減塩の降圧効果は証明されている”
さらにこのような記載もある。
"本邦での食塩摂取量のうち90%はしょうゆ,みそを含む加工食品からの摂取であるため,減塩目標達成には,加工食品中の食塩含有量を減らす取り組みが必要である"
味噌から摂取してるって書いてありますね…
では、実際のデータを見てみます。
塩分感受性マウスに2.3%NaClを含む味噌餌、食塩餌を投与した際の血圧の変動(MF=通常食)※5
マウスのデータですが、上記を見ると、同じ塩分量でも味噌群では血圧上昇がみられておらず、食塩群では優位に上昇している。
味噌は通常食(塩分が入っていないもの)と同等の血圧となっている。
(Dahl:塩分感受性マウス SD:塩分非感受性マウス)
②人間ドック受診者の横断調査
人間ドッグを受診したひとを味噌汁摂取量により3群に分けて血圧の差を解析したところ、すべての群間で差はなかったとのこと。※5
他の疫学調査でも味噌摂取が高血圧に関与していると実証できているものがないそうです。
Naの消化管吸収抑制作用もあるのでは?と考えておこなった実験において、Na吸収作用はみられたなったとのこと。※6
いままで味噌による高血圧作用については解明されていなかったようですが、今回のACE阻害活性物質の発見によりそのメカニズムがわかったということになるのでしょうか。
ちなみに味噌汁1杯に塩分1g程度含まれている。
1日3杯飲んだらそれだけで3g。
これでも血圧に影響が出ないとなると、塩分控えた入院食等が少しはおいしくなるでしょうか。
※1 高血圧ガイドライン
※2 日本補完代替医療学会誌 第5巻 第1号 2008.2 37-47
※3 日経メディカル 2004.4.2 血圧が高めの方によいとされる特定保健用食品とACE阻害剤とのACE阻害活性の比較
※4 トーアエイヨー 循環器用語ハンドブック
※5 Biological effecacies of Miso Hiromitsu Watanabe
※6 習慣的味噌汁摂取の抗高血圧作用の機序 Du DongDong
※7 日経メディカル 1日3杯程度の味噌汁摂取は血圧値に関連せず――人間ドック受診者調査から 2012.9.25
・GABA
・杜仲葉(トチュウ)
・フラボノイド
このうち、ペプチド類、酢酸はACE阻害活性があるとされている。
ただし、トクホのACE阻害作用は医薬品の100-1000分の1との研究結果がある。※3
ただ、少なくともACE阻害活性はあるわけですね。
では、本題の味噌と血圧の関係について。
通常塩分過剰摂取は確実に血圧上昇につながる。
ガイドラインにも以下の記載がある。
”食塩過剰摂取が血圧上昇と関連があることは以前よりINTERSALT)などの観察研究によって指摘されてきた。さらにDASH-Sodiumをはじめとする多くの欧米の介入試験でも,減塩の降圧効果は証明されている”
さらにこのような記載もある。
"本邦での食塩摂取量のうち90%はしょうゆ,みそを含む加工食品からの摂取であるため,減塩目標達成には,加工食品中の食塩含有量を減らす取り組みが必要である"
味噌から摂取してるって書いてありますね…
では、実際のデータを見てみます。
味噌の摂取量と血圧
①味噌餌と食塩餌との比較(マウス)
塩分感受性マウスに2.3%NaClを含む味噌餌、食塩餌を投与した際の血圧の変動(MF=通常食)※5
マウスのデータですが、上記を見ると、同じ塩分量でも味噌群では血圧上昇がみられておらず、食塩群では優位に上昇している。
味噌は通常食(塩分が入っていないもの)と同等の血圧となっている。
(Dahl:塩分感受性マウス SD:塩分非感受性マウス)
②人間ドック受診者の横断調査
人間ドッグを受診したひとを味噌汁摂取量により3群に分けて血圧の差を解析したところ、すべての群間で差はなかったとのこと。※5
他の疫学調査でも味噌摂取が高血圧に関与していると実証できているものがないそうです。
引用元となっている発表について、日経メディカルでも以前取り上げられている。※7
"東京都教職員互助組合三楽病院での人間ドック受診者で、生活習慣病の指摘または治療が行われていない人の中から無作為に抽出した96人(平均年齢55歳)とした。聞き取り法による味噌汁摂取回数と食事嗜好性調査を実施し、関連性について調べた。5日間で味噌汁摂取回数が0~2回だった人を1群、3~5回だった人を2群、6~15回だった人を3群に分類した。調査は、食物摂取頻度調査(FFQg ver3.0)を用いた。~略~味噌汁摂取は1日3杯程度であれば血圧値との間に一定の関係は見られなかった"
この調査では味噌汁1日3杯以上も飲む人は他の影響バランスも悪く、食塩を好む傾向にあったそうです。
それでも血圧に影響が出ていないので、味噌おかげなのか、そもそも塩分過剰がそこまで影響しないのかよくわからない気もしますが。(塩分と高血圧に相関関係があるのは確かなのですが)
国立循環器病センターによると、減塩による降圧効果には個人差はあるが、平均すると食塩を1日1g減らすごとに、高血圧の人で上の血圧は1mmHgくらい、下の血圧は0.5mmHgくらい下がり、正常血圧の人はその半分くらい下がるそうです。
そんなもんしか下がらないのかと思いましたが、1日15g取っている人が5gになれば10mmHgも下がるわけなのでその差は大きいのでしょう。
味噌の作用機序
作用機序としては、ACE阻害活性=RAAS系抑制によるNa再吸収抑制=腎臓からのNa排泄ということになる。Naの消化管吸収抑制作用もあるのでは?と考えておこなった実験において、Na吸収作用はみられたなったとのこと。※6
いままで味噌による高血圧作用については解明されていなかったようですが、今回のACE阻害活性物質の発見によりそのメカニズムがわかったということになるのでしょうか。
ちなみに味噌汁1杯に塩分1g程度含まれている。
1日3杯飲んだらそれだけで3g。
これでも血圧に影響が出ないとなると、塩分控えた入院食等が少しはおいしくなるでしょうか。
まとめ
味噌には抗血圧作用があると思われる。
作用機序はACE阻害活性であり、成分も特定されたとのこと。
※1 高血圧ガイドライン
※2 日本補完代替医療学会誌 第5巻 第1号 2008.2 37-47
※3 日経メディカル 2004.4.2 血圧が高めの方によいとされる特定保健用食品とACE阻害剤とのACE阻害活性の比較
※4 トーアエイヨー 循環器用語ハンドブック
※5 Biological effecacies of Miso Hiromitsu Watanabe
※6 習慣的味噌汁摂取の抗高血圧作用の機序 Du DongDong
※7 日経メディカル 1日3杯程度の味噌汁摂取は血圧値に関連せず――人間ドック受診者調査から 2012.9.25