クレメジンの開始規準

クレメジンの開始規準は? クレアチチン値がどのくらいから服用すべき?

クレメジン(球形吸着炭)はインドキシル硫酸などの毒素を吸着し体外に排出することで、慢性腎不全(CKD)患者において、腎機能低下・透析導入を遅らせることがある程度示されており、CKDガイドラインにおいても推奨されている。(推奨C2)

"CKD患者への球形吸着炭の使用は推奨できないが,腎機能の指標の一部を改善させ,CKDの進行を抑制する可能性があるため,CKDに対する特異的な治療がない現時点では,その使用を考慮してもよい.しかし 使用する場合は漫然と使用せず,定期的に効果を評価して使用するべきである."


腎機能低下を遅らせることができ可能性があるのであれば、早い段階から服用開始してもいいのではないかと思うのですが、毒素が溜まっていないなら服用する必要はないはず。

どの程度から服用を始めれてばいいのでしょうか。

クレメジンの適応

慢性腎不全における尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延

となっている。

慢性腎不全は、ガイドラインで以下のように定義されている。


①,②のいずれか,または両方が3カ月以上持続

①尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要. 
②GFR<60 (mL/分/1.73m2)


ということで適応から考えると少なくともeGFRが60を切っている患者さんが対象となる。(①を無視した場合)

また、服用開始に関して以下の注意書きがある。

"1. 進行性の慢性腎不全と診断された保存療法期の患者を対象とすること. 本剤適用の前には血清クレアチニンの上昇により進行性の慢性腎不全であることを確認した上で,適用を考慮すること.

 2. 透析導入の遅延に関しては,本剤適用前の血清クレアチニン(S-Cr)の上昇の割合が中等度以上(1ヵ月当りの1/S-Crの変化が0.01dL/mg以上)であることを確認した上で,本剤の適用を考慮すること.これに相当する血清クレアチニン値の変化の目安は下表のとおりである
1ヵ月前の血清クレアチニン値 → 現在の血清クレアチニン値 
 2.9mg/dL → 3.0mg/dL 
 4.8mg/dL → 5.0mg/dL 
 6.5mg/dL → 7.0mg/dL"


では、具体的に臨床ではどの程度で開始すれば良いのでしょうか。

CKDガイドライン

以下はCKD診療ガイドライン2018「CQ 2 CKD患者に球形吸着炭の投与は推奨されるか?」に記載されている臨床試験。

①EPPIC試験
"大規模なRCTとして,1,999 例のCKD症例(血清Cr値<5.0 mg/dL)を9 g/日の 球形吸着炭投与群とプラセボ群とに割り付けた EPPIC試験があげられる"※1

こちらの臨床試験ではScrが5.0以下が対象となっている。

ちなみに子の臨床試験において、吸着炭によるScr値の倍化、末期腎不全(ESKD)への進展抑制、死亡率の複合エンドポイントに対して有効性はみられなかったとされている。


②試験
"ESKD,血清Cr 値倍化,50%以上のeGFR低下を複合エンドポイン トとして,579例のCKD症例(eGFR15~59)を6g/日の球形吸着炭投与群と非投与群で比較したRCT においても,両群に有意差を認めなかった"※1

こちらではeGFR15-59が対象となっている。
SCrに戻すと、身長170cm,体重65kg,60歳男性だと1.0~3.5くらい。

この試験においてもプラセボと比較して有意差はなかったそうです。


CAP‒KD試験
"わが国における460例のCKD症例(血清Cr値<5.0 mg/dL)を,従来の低たんぱく質食と降圧薬投与のみを行う対照群と,それに球形吸着炭6g/日を加えた群とに割り振ったRCTにおいても, 血清Cr値の倍化,血清Cr値6.0mg/dL以上への上昇,ESKDへの進展および死亡の複合エンドポイン トで有意差を認めなかった"※1

こちらではScr5.0以上。
この試験は早期CKD患者に対する有効性を検討するために行われたとのこと。

上記複合エンドポントでは有効性は示されていないが、副次エンドポイントにおいては有効性が示されている。(推定CCr値およびeGFRの低下速度は球形吸着炭群で有意に改善がみられた)

また、2型糖尿病患者に対するサブ解析では優位にCCr低下を抑制した結果となっている。※3


インタビューフォーム
こちらはガイドラインでなく、クレメジンインタビューフォームの記載。

"本剤の使用成績調査〔全国 331施設,保存期慢性腎不全患者の有効性解析対象症例 1,848例,1 日服用量 4.9±1.4(Mean±SD)g,服用期間 24 週間〕において,服用24 週の未透析率は 84.7%であった。また,開発時の二重盲検試験の選択基準と同じS-Cr 5.0~8.0mg/dLの症例における未透析率は 73.0%であり,両者とも二重盲検時のプラセボ群の未透析率55.5%と比べて良好な結果が得られ, 本剤の透析導入遅延効果が認められた。"※2

こちらはSCrが5.0~8.0と高め。
透析導入に関してクレメジン服用群で優位に遅らせることができている。




その他

田辺三菱製薬の資料
日本腎臓病薬物学会Q&A(熊本大学薬学部 平田純生先生)

服用時期は慢性腎不全と言われた段階(男性:SCr1.5、女性SCr1.2)の早期から投与を考慮すればよい。

といった記載がある。
先ほどの臨床試験データを見る限りこんなに早く始めても意味がないような気がしますが…


※4臨床試験
早期(SCr<5、eGFR>10、CKD4=eGFR15-29)で透析導入を遅らせることができるが、SCr>5、eGFR<10までいってしまうと透析導入遅延効果が減弱するとのこと。

ただし、こちらの試験は基幹病院、内科開業医、一般病院勤務医師等様々な医師が関与しており、管理の厳密さにおいてバイアスがかかっている可能性があると述べられている。



早期からの投与で透析導入遅延効果はありそうです。
死亡率が変わらないとしても、透析導入が遅れ、倦怠感などの尿毒症症状が抑制できるのであればメリットは多そうです。

早期からと書いてあるが、eGFR<10は早期なのでしょうか。11となるともはや末期な気がしますが…

eGFR60切ったからといってすぐに投与する必要はなさそう。


まとめ

クレメジンの開始規準

・明確な基準はない(最近は早期で効果があるのではないかと考えられている)
・適応から考えるとeGFR60未満
・添付文書では1ヵ月間でのクレアチチン値上昇量を考慮するように記載あり
・十分なエビデンスとは言えないが、早期CKD(Scr<5、eGFR<10、CKD4)において透析導入遅延効果が示されている。
・Scr5.0~8.0の患者における透析導入遅延効果も示されている。

※1 CKD診療ガイドライン2018
※2 クレメジンインタビューフォーム
※3 日経メディカル 日本糖尿病学会2010 進行CKD合併2型糖尿病患者への経口吸着剤
※4鷹揚郷腎研究所泌尿器科 血液透析(HD)導入遅延のための AST120 内服開始至適時期の検討  

 2018/11/10

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