ベオーバとベタニスの違い

2剤目のβ3刺激薬のベオーバ(ビベグロン) ベタニスとの違いは?

2剤目のβ3受容体刺激薬のベオーバが2018年9月に承認された。

既にベタニスがありますが、ベオーバのメリットはなんでしょうか。

そもそも抗コリン薬とβ3刺激薬ではどちらを使うべきなのでしょうか。

過活動膀胱の治療

女性下部尿路症状ガイドライン※1に記載されている薬剤のエビデンスは以下の通り。
β3刺激薬は一部の抗コリン薬同様推奨グレードAとなっている。

日経メディカルでは

”膀胱のβ3アドレナリン受容体に選択的に作用することで膀胱弛緩作用を示し、蓄尿機能を亢進させる一方で、排尿機能には影響を及ぼしにくいという特徴を有している”※2

と記載されており、抗コリン薬による副作用(口渇、便秘、認知機能低下)も少なく、今後はこちらが主流になっていきそう。(心機能への影響が気になるところですが)

現時点ではエビデンスが十分にある抗コリン薬が推奨となっており、β3刺激薬は処方可能との記載にとどまっている。※1


基本情報

概要



ベオーバ50㎎
適応:過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
用法:50㎎を1日1回、食後
禁忌なし(過敏症のみ)
ベタニス25㎎、50㎎
適応:過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
用法:50㎎を1日1回、食後(重度肝障害、中度腎障害では25㎎から)
禁忌重篤な心疾患、妊婦、授乳婦、重度の肝障害、フレカイニド、プロパフェノン


適応は2剤で変わりなし。
禁忌を見るとベオーバが圧倒的に使いやすそう。

ベオーバは腎機能、肝機能によって用量の調整に関する記載はないが、重度肝機能障害の場合は慎重投与、腎機能障害時も血中濃度上昇(中等度の腎機能障害者 (eGFR60~30mLではCmax:1.68及びAUC:2.06倍、eGFR30では1.42及び1.83倍)はみられている。※3


生殖器系・胎児への影響

添付文書

ベタニスには以下の警告がある。

"【警 告】 生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること。[動物実験(ラット)で、精嚢、前立 腺及び子宮の重量低値あるいは萎縮等の生殖器系 への影響が認められ、高用量では発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着着床数及び生存胎児数の 減少が認められている。]"

一方のベオーバは警告なし。

発生機序※4

ベタニス
生殖器への影響は最終的に不明とされているが、考えられるものとして以下のものが挙げられている。

・β3刺激→脂肪代謝亢進→ステロイド合成・代謝に影響
・β3刺激→脂肪代謝亢進→体重減少→子宮・精嚢等も収縮(体重増加10%に対し、臓器収縮は40-60%なのでこれは考えにくいとの評価)
・β刺激→胎盤血流減少(イソプロテレノールで見られている)

(エストロゲンやテストステロン受容体への直接影響がみられていない。)

ただし、ラットにおいて警告内容がみられたのは、暴露量が通常の11.7-25倍(生殖器等の萎縮)、31倍(発情休止期の延長)、14.1倍(着床後死亡:ウサギ)とかなり高用量なっており、ヒトで同様の影響がみられる可能性は低いと評価されている。

※妊婦
胎児においても体重低値、骨化遅延等がみられため、対症療法としてのベタニスを投与するのは妥当ではないとして禁忌になっているそうです。


ベオーバ
審議結果報告書には以下の記載がある※5

"雌ラットを用いた受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験では受胎率の低下が認められたが、一般状態の悪化に関連した変化であると考察されている。胚・胎児発生に関する試験では催奇形性は認められなかった。ラットを用いた出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験では死産率の増加、発育分化遅延及び反射反応の低下が認められたが、発育分化遅延及び反射反応の低下は体重減少に起因する二次的影響の可能性があると考察されている。胚・胎児発生に対する無毒性量(ラット:300 mg/kg/日、ウサギ:100 mg/kg/日)における曝露量(AUC0-24)は、臨床用量(50 mg) 投与時の最大曝露量の推定値(AUC0-24:2.62 μmol·h/L)と比較して、ラットで342倍、ウサギで355 倍であった。 "

ベタニスでは体重減少で~の考察は認められないと記載されていたが、こちらでは体重減少による影響を認めて問題ないと考察されている。よくわかりませんね。



代謝と相互作用

ベタニス
ベタニスは主にCYP3A4で代謝され、一部CYP2D6でも代謝される。※7


ベタニスがフレカイニド、プロパフェノンと禁忌の理由は以下の2点。

・ベタニス及び、フレカイニド、プロパフェノンはどちらもQT延長リスクがある。
・どれもCYP2D6で代謝されるため、併用により血中濃度が上昇する

この2点が重なり、催不整脈リスクが症状するため併用禁忌。
その他CYP関係の併用注意は多数。

(eGFR<30の腎障害時Cmax1.9倍、AUCは2.2倍)


ベオーバ
ベオーバは主にグルクロン酸抱合で代謝される。
各種CYPの阻害(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4)及び誘導(CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4)はみられていない。※7

ただし、添付文書には.ビベグロンはCYP3A4又はP-糖タンパク(P-gp)の基質であることが示唆されているとの記載がある。

インタビューフォームではヒト肝細胞を用いたい試験では代謝されなかったと。
どちらでしょう。

"強いCYP3A4 及び P-gp の阻害剤であるケトコナゾール* との併用によりビベグロンの曝露量が Cmaxで 2.22 倍、 AUCinfで 2.08 倍に増加したことから、ビベグロンが CYP3A4 又は P-gp の基質であることが示唆された"

だそうです。併用注意にはアゾール系とHIVプロテアーゼ阻害薬。頭の隅にいれておきます。(CYP3A4で主に代謝されるベタニスですが、ケトコナゾールとの併用ではAUC1.8倍となっており、ベオーバとさほど変わりない。)

(eGFR<30の腎障害時Cmax1.4倍、AUCは1.8倍)


ベタニス:併用禁忌あり、注意多数、CYP3A4,2D6
ベオーバ:併用禁忌なし、注意も少ない、CYP3A4多少
腎機能障害の血中濃度上昇は同程度(1.5~2倍)



薬理作用比較

ベタニスとベオーバのβ3に対する選択性は以下のようになっている。

IAの桁が異なっているので微妙ですが、若干ベオーバのほうがβ3選択性は高いようでしょうか。
とういうこは、ベオーバのほうが心疾患の副作用が少ない? 後述。



β3刺激と抗コリン薬の比較

見やすい図があったのでメモ
β3刺激薬:膀胱を弛緩
抗コリン薬  :膀胱の収縮抑制

メモ2※7
"正常な蓄尿期と過活動膀胱の蓄尿期の違い 
 蓄尿期には、交感神経終末よりノルアドレナリンが放出され、膀胱のβ3受容体を介して膀胱が弛緩する とともに、α1 受容体を介して尿道が収縮する。
排尿期にはノルアドレナリンの放出が抑制され、尿道が 弛緩するとともに副交感神経終末からアセチルコリンが放出され、ムスカリン(M)受容体を介して膀胱 が収縮する。
 一方、過活動膀胱では蓄尿期においてもアセチルコリンが放出され、膀胱の M 受容体に結合し、膀胱の 異常な収縮が起こる。そのため、過活動膀胱では、十分な量の尿をためられるだけの弛緩が起こらない。"


有効性

ベタニスとベオーバを直接比較している試験は見つかりませんでした。
今後出てきたときに更新。


副作用

概要

下記は使用成績調査及び臨床試験時の主な副作用。(副作用すべて記載しているわけではない。)

ベタニス
使用成績調査: 9795 例
便秘95例(0.97%)、残尿増加70例(0.71%)、口渇46例(0.47%)、排尿困難43例(0.44%)、 尿閉30例(0.31%)であった。重篤な副作用は21例(0.21%)

承認時臨床試験:1207例
γ‐GTP上昇 45例(3.7%)、便秘35例(2.9%)、CK上昇31例(2.6%)、Al‐P上昇30例(2.5%)、口内乾燥21例(1.7%)、ALT上昇21例(1.7%)、AST上昇19例(1.6%)、尿中蛋白陽性17例(1.4%)、白血球数減少15例(1.2%)

ベオーバ
承認時臨床試験:906例中
口内乾燥11例(1.2%)、便秘11例(1.2%)、尿路感染6例(0.7%)、残尿量増加6例(0.7%)、 肝機能異常3例(0.3%)、CK(CPK)上昇3例(0.3%)


便秘、口渇はどちらでもある程度みられているが、これは抗コリン薬でも併用していた影響でしょうか。

ベタニスで肝機能関係の副作用が目立っているように思える。
ベオーバは肝機能障害について、検査値異常もプラセボと変わらず、軽微であることから問題になる可能性は低いと評価されている。※5

残尿量増加、排尿障害など薬理作用からも起こりえるであろう副作用が一定量みられている。尿閉はベタニスだけでなくベオーバでも報告があるため注意。


心血管系へのリスク

ベタニス
ベオーバと比べβ3選択性は低く、薬理試験ではβ1、β2、M2刺激作用もみられているため注意。(臨床試験でも心拍数増加がみられている。)

QT延長について、ベオーバでは影響がみられなかった評価試験において、ベタニスではQT延長がみられている。


ベオーバ
現時点ではQT延長が報告された試験がいくつかあるが、プラセボ群との間で差はなく、薬理試験においてもQT延長がプラセボと差が出ていない。

その他血圧、脈拍も臨床的に問題となる変化はみられていないとのこと。※4

今後の臨床試験データを待ちます。



まとめ

有効性
2剤の比較試験なし、今後の状況を確認

副作用(現時点)
心機能への影響:ベタニス>ベオーバ
肝機能への影響:ベタニス>ベオーバ
生殖器への影響:ベタニス>ベオーバ

禁忌
ベタニス:併用禁忌あり、妊婦・授乳婦、重篤な心疾患、重度の肝障害
ベオーバ:併用禁忌なし、その他禁忌もなし

相互作用
ベタニスはCYP3A4,2D6関係で多数
ベオーバはCYP3A4の基質である可能性はあるが、相互作用は少ない


※1 女性下部尿路症状診療ガイドライン
※2 日経メディカル 2018/10/12 生殖可能年齢でも使いやすい過活動膀胱治療薬
※3 ベオーバ添付文書
※4 審議結果報告書(ベタニス)
※5 審議結果報告書(ベオーバ)
※6 ベオーバインタビューフォーム
※7 ベタニスインタビューフォーム

 2018/11/13

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