痛風発作に対するNSAIDsとステロイドの有効性・安全性比較 ステロイドを使うのはどんなとき?
処方箋の内容を確認すると以下の薬剤が処方されていました。
プレドニン5㎎ 3錠 朝食後 5日分
併用薬:クレストール2.5㎎ 1錠 夕食後
この情報だけでは全然わかりませんでした。
話を聞いてみると、痛風発作とのことでした。
以前から尿酸値は高かったが、何もおきないから薬は数年前から自己判断でやめていたとのこと。
痛風発作ときくと、通常NSAIDsが処方されると思っていたのですが、この方はステロイドでした。
どのような場合にステロイドが処方されるのでしょうか。
痛風発作時の治療薬
痛風発作の際に使用される主な薬剤は以下の通り。
NSIADs
ステロイド
コルヒチン
ガイドライン※1には以下のように記載されている。
”1.痛風関節炎の治療~中略~痛風発作の前兆気にはコルヒチンを1錠経口的に投与し、極期にはNSAIDsを短期間のみ比較的多量に投与して炎症を鎮静化させる方法が一般的である。しかし、副腎皮質ステロイドも十分な薬剤であり、経口、筋注、関節内注入などの患者の状態に合わせた投与ルートが選択できる利点がある”※1
基本はNSAIDsのパルス療法、使えない場合はステロイドも十分有効なんですね。
適応が通っている水溶性プレドニンの用法をみると4-30mgの関節空内投与。
経口では以下のように記載されている。
" 痛風関節炎において,NSAID が使用できない場合,NSAID 投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。一例として,プレドニゾロン15~30mg を投与し関節炎を鎮静化させ,1週ごとに3分の1量を減量し,3週間で中止する方法がある。重症例においては,少量(1日5mg程度)を数ヵ月間投与せざるを得ない場合がある。"※1
痛風(による痛み、関節炎等)に適応があるNSAIDsは、アスピリン※、インテバン、ナイキサン、ニフラン、アルボ、(ケトプロフェン注)だけ。
他の薬剤が投与されていることもありますが・・・適応があるものは少ないのですね。
※アスピリンは鎮痛作用を示す投与量で尿酸低下作用も示す=尿酸値が急激に下がると発作を起こす・悪化する可能性があるため基本は使用しない。
基本はNSAIDsのパルス療法、使えない場合はステロイドも十分有効なんですね。
適応が通っている水溶性プレドニンの用法をみると4-30mgの関節空内投与。
経口では以下のように記載されている。
" 痛風関節炎において,NSAID が使用できない場合,NSAID 投与が無効であった場合,多発性に関節炎を生じている場合などには,経口にて副腎皮質ステロイドを投与する。一例として,プレドニゾロン15~30mg を投与し関節炎を鎮静化させ,1週ごとに3分の1量を減量し,3週間で中止する方法がある。重症例においては,少量(1日5mg程度)を数ヵ月間投与せざるを得ない場合がある。"※1
NSAIDsのパルス療法
痛風発作にNSAIDsを用いる場合は、通常用量を漫然と使うより、高容量を短期に使用したほうが効果的との報告が多いそうです。※1
他の薬剤が投与されていることもありますが・・・適応があるものは少ないのですね。
※アスピリンは鎮痛作用を示す投与量で尿酸低下作用も示す=尿酸値が急激に下がると発作を起こす・悪化する可能性があるため基本は使用しない。
投与量は以下のように記載されている。
これは添付文書通りの投与量。
この投与量がすべてパルス療法?
ガイドラインには以下の記載がある。
"痛風発作に対するNSAIDは,短期間のみ比較的多量に投与することが原則である(NSAID パルス療法)。具体的には,たとえばナプロキセンの場合,300mgを3時間ごとに3回,1日に限って投与する。その後も疼痛が軽減しない場合には,3回投与後,24時間の間隔を置いてもう1度,300mgを3時間ごとに3回服用させる"※1
ナプロキセンはこの量がパルス療法なんですね。
その他の薬剤はどのくらい投与するのでしょうか。
文献を見ると、ナプロキセンは500㎎day、インドメタシンは50~100㎎/dayとなっているものが多いようです。
NSAIDsとステロイドの有効性、副作用比較
内科学会誌※2には"ステロイド薬はNSAIDs無効・禁忌例,多発関節炎例などに投与される。"と記載されていた。
ガイドラインでもステロイドはNSAIDsが投与できないときと記載されていますが、、ステロイドのほうがいい人とはどんな人でしょうか。
また、有効性や副作用は差はあるのでしょうか。
2剤を比較したメタ解析がありました。※3
解析対象
二重盲検比較試験3試験、584人
比較薬剤
プレドニゾロン(30-35㎎/day)、ナプロキセン(500mg/day)又はインドメタシン(50-100mg/day)
結果
有効性は同程度、安全性(副作用)はわずかにプレドニゾロンのほうが少なかったとのこと。
プレドニゾロンはNSAIDsと比較して消化不良、吐き気、嘔吐がやや少ない(CI 0.311-0.952, P = 0.033)
プレドニゾロンはNSAIDsと比較して皮膚発疹がやや多い(95% CI 1.241-13.158, P = 0.021))
副作用による脱落者もプレドニゾロンのほうが少なかった。
二重盲検比較試験3試験、584人
比較薬剤
プレドニゾロン(30-35㎎/day)、ナプロキセン(500mg/day)又はインドメタシン(50-100mg/day)
結果
有効性は同程度、安全性(副作用)はわずかにプレドニゾロンのほうが少なかったとのこと。
プレドニゾロンはNSAIDsと比較して消化不良、吐き気、嘔吐がやや少ない(CI 0.311-0.952, P = 0.033)
プレドニゾロンはNSAIDsと比較して皮膚発疹がやや多い(95% CI 1.241-13.158, P = 0.021))
副作用による脱落者もプレドニゾロンのほうが少なかった。
という結果となっている。
最初からステロイドでもいい感じですかね。
ガイドラインには
"経口インドメタシン・アセトアミノフェン併用投与の有効性および有害作用を,経口プレドニゾロン・アセトアミノフェン併用投与と比較するRCT※4では,急性痛風関節炎に対する両者の鎮痛効果は同等であった~中略~痛風関節炎と診断された患者において,経口ナプロキセンと経口プレドニゾロンの鎮痛効果は同等であった※5"
と記載されており、こちらでも鎮痛効果に関しては同等となっている。
投与量のまとめ
ナプロキセン
ガイドライン:300mgを3時間ごとに3回を1日。疼痛が軽減しない場合には,3回投与後,24時間の間隔を置いてもう1度,300mgを3時間ごとに3回。
文献:500mg/day
インドメタシン
ガイドライン:添付文書通り1回25㎎を1日2回、場合により1回37.5mg
文献:50~100mg/day
プレドニゾロン
ガイドライン:15~30㎎
文献:30~35㎎
ガイドライン:300mgを3時間ごとに3回を1日。疼痛が軽減しない場合には,3回投与後,24時間の間隔を置いてもう1度,300mgを3時間ごとに3回。
文献:500mg/day
インドメタシン
ガイドライン:添付文書通り1回25㎎を1日2回、場合により1回37.5mg
文献:50~100mg/day
プレドニゾロン
ガイドライン:15~30㎎
文献:30~35㎎
まとめ
痛風発作に対して、
日本ではNSAIDsのパルス療法が基本
無効例やNSAIDsが投与しにくい(腎機能、消化器症状等)場合はステロイド
有効性に差はなし、安全性もほぼ差なし(ステロイドのほうが安全との報告も)
※1 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版
※2 日本内科学会雑誌 第97巻 第10号・平成20年10月10日
※3 Inflammopharmacology. 2018 Jun;26(3):717-723.
※4 Ann Emerg Med. 2007 May;49(5):670-7.
※5 Lancet. 2008 May 31;371(9627):1854-60.4