浸透圧下剤 モビコール、ラグノスNF、モニラック等ラクツロース製剤の比較
また、ラグノスNF経口ゼリーは逆に小児ではなく、成人の慢性便秘に適応を持った初のラクツロース製剤となっている。
ともにガイドラインでは最も推奨度の高い浸透圧性下剤に分類されている。
ともにガイドラインでは最も推奨度の高い浸透圧性下剤に分類されている。
主な浸透圧性下剤
ラクツロース製剤:モニラック、ピアーレ、ラグノス等
酸化マグネシウム
ポリエチレングリコール製剤:モビコールのみ
ラクツロース製剤:モニラック、ピアーレ、ラグノス等
酸化マグネシウム
ポリエチレングリコール製剤:モビコールのみ
小児にはラクツロース製剤としてモニラックもあるし、成人にはモビコールもラグノスも使用できるわけですが、どちらがよいのでしょうか。
・小児におけるポリエチレングリコール製剤とラクツロース製剤の比較
・ラグノス経口ゼリーと既存のラクツロース製剤の比較
・小児におけるポリエチレングリコール製剤とラクツロース製剤の比較
・ラグノス経口ゼリーと既存のラクツロース製剤の比較
上記をメインに見ていきたいと思います。
基本情報
モビコール(ポリエチレングリコール)
適応:慢性便秘症
用法:2-7歳未満1回1包、7歳以上1回2包を分1-3、初回は1日1回から。増量は2日以上あけて 。1日最大:12歳未満4包(1回2包まで)、12歳以上6包(1回4包まで)
禁忌:腸閉塞、腸管穿孔、重症の炎症性腸疾患
ラグノスNF経口ゼリー(ラクツロース)
適応:慢性便秘、高アンモニア血症、産婦人科述後の排ガス・排便
用法:慢性便秘に対しては、成人1回24g(2包)を1日2回 最大72g(6包)
禁忌:ガラクトース血症の患者
これは腸内で乳酸を産生し、腸内pHを下げることでアンモニア産生菌の発育を抑制するため。※1
作用機序
モビコール
マクロゴール4000など高分子量のポリエチレングリコール製剤を投与すると、浸透圧により腸管内の水分量が増加する。その結果、便中水分量が増加し、便が軟化、便容積が増大することで、生理的に大腸の蠕動運
動が活発化し用量依存的に排便が促される。また、腸管内の水分増加に伴う滑らかな排便により、本剤の便秘治療効果が発現すると考えられる。 なお、腸内の電解質バランスを維持し、便中の浸透圧を適正なレベルに保持するため、本剤には塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化カリウムが添加されている。※2
モビコールは1包6.8523g
マクロゴール4000 6.5625g
塩化ナトリウム 0.1754g
炭酸水素ナトリウム 0.0893g
塩化カリウム 0.0251g
ラグノスNF経口ゼリー
ラクツロースは、小腸で分解・吸収されることなく大腸に達し、ラクツロース未変化体の浸透圧作用により腸内への水の移動を促進する。また、ラクツロース未変化体は、腸内細菌によって分解され、乳酸などの有機酸を産生し、浸透圧を高めるとともに、腸管の蠕動運動を促進し、 浸透圧性下剤としての作用を示す。さらに、産生された有機酸により pH が低下し、ビフィズス菌、乳酸菌の増加及び腸内環境の改善が認められ、アンモニア産生菌の発育を抑制し、アンモニアの吸収を抑制することにより、血中アンモニア濃度の低下作用を示す。 ※1
モビコールとラクツロース製剤の比較(小児)
小児に使用できる浸透圧性下剤は酸化マグネシウムかラクツロース製剤だけだったが、ここにモビコールが加わる。
以下はガイドラインの内容です。※3
以下はガイドラインの内容です。※3
便秘の治療
モビコールとラクツロースの有効性比較
モビコールやラクツロース製剤は維持療法の部分に当たる。ガイドラインには2剤の有効性について以下の記載がある。
CQ38:維持療法にはどのような薬物が用いられるか
下剤は世界中で広く用いられており,その種類は多様であるが,効果に関するエビデンスは十分とはいえない(エビデンスレベル 1a)
小児の便秘症に対する下剤の効果に関する 2つのシステマティック・レビューでは,それぞれ 28文献,18文献について調査され,ポリエチレングリコールがプラセボ,ラクツロース,水酸化マグネシウムより効果的であること,食物繊維の排便回数に与える影響はプラセボと同等であることが示されている (エビデンスレベル 1a).しかし,いずれのシステマティック・レビューにおいても, ほとんどの研究はプラセボとの比較がなされていない,臨床的および統計学的に不均一である,観察期間が短い,バイアスの存在,などの問題点がある.なお,大腸内視鏡検査前 処置として使用される PEG4000(ニフレックは便秘症に対する保険適応がなく,一般的には下剤として使用されない.
~中略~
乳児期にはマルツエキスやラクツロース,幼児期以降 にはラクツロースやマグネシウム製剤が使用されることが多い.多くの浸透圧性下剤では,その効果に関するプラセボ対照試験は行われていないが,前述の通りPEGでは実施され有用性が報告されている
下剤は世界中で広く用いられており,その種類は多様であるが,効果に関するエビデンスは十分とはいえない(エビデンスレベル 1a)
小児の便秘症に対する下剤の効果に関する 2つのシステマティック・レビューでは,それぞれ 28文献,18文献について調査され,ポリエチレングリコールがプラセボ,ラクツロース,水酸化マグネシウムより効果的であること,食物繊維の排便回数に与える影響はプラセボと同等であることが示されている (エビデンスレベル 1a).しかし,いずれのシステマティック・レビューにおいても, ほとんどの研究はプラセボとの比較がなされていない,臨床的および統計学的に不均一である,観察期間が短い,バイアスの存在,などの問題点がある.なお,大腸内視鏡検査前 処置として使用される PEG4000(ニフレックは便秘症に対する保険適応がなく,一般的には下剤として使用されない.
~中略~
乳児期にはマルツエキスやラクツロース,幼児期以降 にはラクツロースやマグネシウム製剤が使用されることが多い.多くの浸透圧性下剤では,その効果に関するプラセボ対照試験は行われていないが,前述の通りPEGでは実施され有用性が報告されている
ラクツロースや酸化マグネシウムはプラセボ比較されているものが少ないようですが、ポリエチレングリコールはプラセボ比較でも有効性が示されている。
小児においてはポリエチレングリコールのほうが、ラクツロースより有効なようです。
今後はモニラックではなく、モビコールが小児に処方されることが多くなるのでしょうか。
1包6.8gくらいなので、服用量もモニラック原末とさほど変わらない。
なお、維持療法に行く前に、便の塊で塞がってしまっている(fecal impaction)の場合は、その除去(disimpaction)が必要となっている。
disimpactionには、経口(刺激性、被刺激性)及び直腸(浣腸、坐剤)製剤を組み合わせて行う。
治療期間
維持療法の治療期間は、治療薬の減量・中止が早すぎると再発しやすく,薬物維持治療には通常6~24か月を必要とする(推奨度 A)とされている。※3副作用
モビコール臨床試験192例中、下痢7例(3.6%)、腹痛7例(3.6%)
モニラック
総症例2332例中注下痢(軟便を含む)44件(1.9%)、腹痛24件(1.0%)
対象、症例数が異なるので何とも言えませんが、問題なるような副作用はなし。
(ただし、重大な副作用としてアナフィラキシーがモビコールには記載あり)
審議結果報告書では、下痢、腹痛は軽度であり、その他問題となるようなものはなくおおむね安全であると評価されている。(ただし、小児での使用例は成人と比べると少ないため今後情報収集が必要)
モビコールの味
小児にも処方されるので味は重要。
モビコールはNaClなどの電解質が入っているため、やや塩味(しょっぱい)がある。
メーカーおすすめは冷やした水、りんごジュースなどのフルーツ系。
水で飲んだが、そこまでまずくはない。
ラグノスNF経口ゼリーと他のラクツロース製剤の比較
ラクツロース製剤には以下の薬剤がある。
ラクツロース製剤
ラグノスNF経口ゼリー(GE)
ラグノス経口ゼリー(GE)
モニラックシロップ65%(先発)
モニラック原末(先発)
ピアーレドライシロップ65%(GE)
ラグノスNF経口ゼリー(GE)
ラグノス経口ゼリー(GE)
モニラックシロップ65%(先発)
モニラック原末(先発)
ピアーレドライシロップ65%(GE)
ラグノスはモニラックの後発扱いになるので、ラグノスNF経口ゼリーも後発品に分類される。使用量は稼げそうですね。
ラグノスNFとラグノスの比較
もともとラグノス経口ゼリーというものがあるが、こちらは慢性便秘に適応がない。
また、NF経口ゼリーは以下の点が改良されている。※1
"ラグノスNF経口ゼリーは、原薬をラグノスゼリーの「日局」ラクツロースから結晶ラクツロースに変更することにより、夾雑物であるガラクトースや乳糖を少なくした製剤であり、また、ラクツロース起因の甘み抑制と服薬性向上、さらにスティック包装による携帯利便性向上を目的として開発した経口ゼリー剤"添付文書を見ると、
ラグノスNF:ガラクトース1%以下、乳糖1%以下
ラグノス :ガラクトース8.4%以下、乳糖4.6%以下
※グルコース+ガラクトース=ラクトース(乳糖)
また、余分なものがなくなったおかげか1包の量が減っている。
ラグノスNF:12g/包
ラグノス:16.05g/包
→便秘(成人)適応追加・甘味改善・服用量改善・乳糖/ガラクトース減量
ラグノスNFとモニラックの比較
前述した通り、ラグノスはモニラックの後発品。
後発ということは同等性試験が行われている。
といっても、先発は慢性便秘の適応がないため、この部分の有効性に関しては同等とかはない。
高アンモニア血症と産婦人科領域における治療的同等性は認められている。※1,4
なので、有効性に関して大きな差はないと考えられる。
適応がわかりにくいが、高アンモニアと産婦人科領域は共通、便秘に関しては以下の通り。
ラグノスNF:(成人の)慢性便秘症
モニラック:小児における便秘の改善
といっても、先発は慢性便秘の適応がないため、この部分の有効性に関しては同等とかはない。
高アンモニア血症と産婦人科領域における治療的同等性は認められている。※1,4
なので、有効性に関して大きな差はないと考えられる。
適応がわかりにくいが、高アンモニアと産婦人科領域は共通、便秘に関しては以下の通り。
ラグノスNF:(成人の)慢性便秘症
モニラック:小児における便秘の改善
モニラックはガラクトース・乳糖の含量がラグノス、ラグノスNFより多い。
ラグノスNF:ガラクトース1%以下、乳糖1%以下
モニラック:ガラクトース11%以下、乳糖6%以下
→モニラックは小児の便秘、ラグノスNFは成人の便秘・剤形改善・ガラクトース/乳糖減量
上記をまとめると以下の通り。
※成人でのモビコールVSラクツロース製剤の比較はガイドライン入手後調べてみます。(まだガイドラインは無料公開されていないので)
まとめ
小児の慢性便秘に対する有効性
モビコール>ラクツロース製剤
既存のラクツロース製剤とラグノスNFの違い
便秘の適応が異なる(モニラック:小児、ラグノスNF:成人、ラグノス:なし)
味、剤形、夾雑物の改善(ラグノスNF>ラグノス>モニラックの順で改善されている)
※2 モビコールインタビューフォーム
※3 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2015
※4 ラグノスNF経口ゼリー 審議結果報告書