便秘にヨーグルトは効果があるか

便秘にヨーグルト(プロバイオティクス)、食物繊維、水分摂取は有効か

先日小児慢性機能性便秘ガイドラインを見ていたら気になるCQを見つけた。

ヨーグルト(プロバイオティクス※)が便秘に効くのか。
その他、一般的に便秘の時に水分や食物繊維摂取を増やすように言われたりするが、エビデンスはどうなんでしょうか。
※有益な効果をもたらす微生物。わかりやすくヨーグルト=プロバイオティクスと記載しているが、正確にはプロバイオティクスを含んだヨーグルト

以下小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン(2013)の内容抜粋。


CQ35 プロバイオティクスは慢性機能性便秘症の治療に有効か

回答:症例によって有効である(推奨後B) 

無菌環境下では便秘傾向を認めること,母乳栄養児が人工乳栄養児に比較して腸内細菌叢で乳酸菌の割合が多く,ゆるい便を呈すること,成人の便秘症で腸内細菌叢における Lactobacilli や Bifidobacteria の割合が低下していることなどより,便秘症におけるプロバイオティクスの有効性が指摘されている.

一方,慢性便秘状態における腸内細菌叢の異常は証明されておらず,また,ヨーグルトなどの乳酸菌製品に含まれるプロバイオティクスの含有量は,腸内細菌叢に有意な変化を与えるには十分ではない


成人のランダム化比較試験による検討ではE. coli(大腸菌Nissle1917株)およびB. lactis(ビフィズス菌)で排便回数の改善を認めているが,L. casei(ガセリ菌Shirota 株)では明らかな有効性は確認されていない(エビデンスレベル 2b)


小児のRCTによる検討では L. rhamnosus GG+ラクツロース群とラクツロースのみを投与した群での比較で,明らかな有効性は認められていない.

一方,L. reuteriを用いた乳児の検討では,排便回数の改善を認めている(エビデンスレベル 2b) .ただし,いずれの検討も,プラセボ投与時と非投与時を比較すると,プラセボ投与時に おいても蠕動運動の改善を認めている.


便秘症児640人のメタアナリシスではプロバイオティクスは便秘に効果がなかった(エビデンスレベル 2a)


ヤギのヨーグルト単味とプロバイオティクスを加えたヨーグルトで行った交差性二重盲検試験を Rome III 基準を満たした 5~15 歳 59 名で行ったところ,プロバイオティクスは 症状を改善した(エビデンスレベル 2b)


300 人の成人(24~71 歳)ボランティアに対して二重盲検ランダム化試験でプロバイオテ ィクスの腸管不快症状に対する改善効果が認められた(エビデンスレベル 2b)


以上のように,プロバイオティクスの便秘症に対する有効性については結論が出されて おらず,症例によって有効である可能性があると考えられる


→同等のエビンデンスレベルで有効、有効性ないとの結果があり、結論が出ていない。


CQ34 慢性機能性便秘症の児に水分摂取を勧めるべきか


回答:臨床的に脱水を認めなければ,水分摂取増加の有効性は明らかでない(推奨度B)

臨床的に脱水を認めなければ,水分摂取増加によって便秘症が改善するというエビデンスはない.中等度から高度便秘児(2~12 歳)108 人における検討では,50%の水分摂取量 の増加や600mOsmの高浸透圧飲料の摂取は排便の問題を軽減しなかった(エビデンスレベル 2b).

また最近報告された小児便秘症640人のメタアナリシスで,水分の投与は便秘に効果が認められなかった(エビデンスレベル1b)

23~46 歳(平均 30.1 歳)の健康な男女をランダム化二重盲検試験でアイソトニック飲料を飲む群と水を飲む群に分けた研究では,両群ともに尿量は有意に増加したが,有意な便排泄量の増加はなかった(エビデンスレベル2b)

 一方,適切な水分量を保つためには,慢性便秘症や便失禁のある児,特に食物繊維サプ リメントを使用している児においては,少なくとも1日に 960~1,920mL の水もしくは牛乳以外の液体の摂取が勧められる

ポリエチレングリコール投与中の児27人の後方視的なカルテの検討では,水分摂取が多いほうが便が柔らかく排便しやすかった(エビデンスレベル3b)

妊婦では,便秘例で水分摂取が少ない(エビデンスレベル4)

117人の成人便秘症(18~50 歳)では,25gの食物繊維で便秘が改善したが,1.5~2Lの水分摂取を加えることによってさらに改善効果がみられた(エビデンスレベル 2b)

北米小児栄養消化器肝臓学会のガイドラインは,プルーン,ナシ,リンゴなどのジュ ースに含まれる果糖やソルビトールが排便を促進しうると述べているが,良質なエビデン スに乏しい.

→水分摂取量により改善がみられたとの報告もあるが、エビンデンスレベルは低い。
有効性がなかったとするエビデンスのほうがエビデンスレベルが高い。

→食物繊維、浸透圧下剤(ポリエチレングリコール)を摂取している場合には、水分量が多いほうが改善がみられるかも。



CQ36 食物繊維は慢性機能性便秘症に効果があるか 


回答:有効性の報告もあり,食物繊維を増やすことを試みることが推奨される(推奨度C1) 

食物繊維はヒトの消化酵素で分解されない食物中の難消化成分の総体と定義され,水溶性と不溶性がある.

不溶性食物繊維は水分を吸収して膨張し便量を増やす効果がある.
便量と消化管通過時間は逆相関があり,便量が多ければ消化管内容物が速やかに排出され ることになり,便通改善が期待できる.

水溶性食物繊維はプレバイオティクス効果があり,消化管で消化吸収されずに結腸に到達し,乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌の増殖を促進する効果がある.

アメリカでは3~20歳までの安全な食物繊維摂取量下限として,年齢+5g/日が健康の維持に有効であるとしている.

日本人の食事摂取基準2010 年版では,小児の摂取基準の記載はないが,18歳以上の成人の食物繊維摂取目標量を男性19 g/日以上,女性17 g/ 日以上としている.
目安量として成人で 10 g/1,000kcalとされており,エネルギー所要量が2500kcalとすれば,25 g/日である.

また,日本人成人での研究では1日150gの便量を得るには1日 20~30gの食物繊維の摂取が必要であった.

健康な成人の日常的な食事で通常の食品から摂取する場合には過剰摂取による健康障害はないと考えられている

小児の便秘症と食物繊維の摂取量の関係はいまだ明確でなく,エビデンスが不足しているためNASPGHANは小児の便秘症の治療には推奨できる段階ではないとの見解である .

便秘症小児422名を調査し,小児の便秘を改善する食物繊維摂取量として3~7歳で1日あたり10g,8~14 歳で14.5gをカットオフ値とする報告もあるが,年長児では日本の成人の摂取目標量より少なくなり,年齢や体重に応じて指導する必要がある.

最近のRCTによる研究では食物繊維が便秘の治療に有効で,便秘症の年長児では1日20g 以上の摂取が推奨されている(エビデンスレベル 1b)

また,ラクツロースなどの浸透圧性下剤と同等の効果がある,下剤を減らすことができたなど(エビデンスレベル3b),有効性が示されている.


→有効とするエビデンスあり。ただし、報告が少なく不十分



このガイドライのエビデンスレベル、推奨度の基準は以下の通り
エビデンスレベル
1a:RCTのシステマティック・レビュー
1b:個々のRCT1
c :悉無研究(all or none)
2a:コホート研究のシステマティック・レビュー
2b:個々のコホート研究(質の低いRCTを含む)
2c:「アウトカム」研究:エコロジー研究
3a:ケースコントロール研究のシステマティック・レビュー
3b:個々のケースコントロール研究
4 :症例集積研究(および質の低いコホート研究あるいはケースコントロール研究

推奨度
A :行うよう強く勧められる 強い科学的根拠があり,臨床上明らかに有効である
B :行うよう勧められる 中等度の根拠があり,臨床上有効性が期待できる
C1:行ってもよい 科学的根拠に乏しいが,臨床上有効である可能性がある
C2:明確推奨ができない 科学的根拠に乏しく,有効性を判断できない
D :行わないよう勧められる 有効性を否定する,または害を示す根拠がある


個人的に上記を見て、少なくとも害はなく、有効とする報告もあるため、プロバイオティクス、水分摂取、食物繊維摂取はむりのない程度に試してみるのは良いのではないかと思いました。


まとめ

プロバイオティクス
有効、無効ともに同等のレベルで報告がある。
害もなく効果があることもあり、推奨度B

水分摂取
有効性は明らかでないが、推奨度はB。
食物繊維摂取、ポリエチレングリコール製剤服用時はやや効果あり?

食物繊維
エビデンス不十分のため推奨度C1
最近のRCTで有効とする報告がある。

害がないなら試してみるのも・・・

参考:小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン
 2018年12月1日

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