ウイルス性いぼの治療法と有効性

ウイルス性いぼ(ウイルス性疣贅、尋常性疣贅)の治療法と有効率について

最近自分の手と足にイボができてしまった。
とりあえずサリチル酸ワセリンでも塗ってみようと思ったのですが、イボはなかなか治らない人が多い。

外来でもなかなか良くならずヨクイニンを継続していたり、液体窒素をやってきている人を見ますが、有効性が高い治療法はないのでしょうか。

ウイルス性疣贅とは※1

概要

疣贅とは、イボのこと。

通常イボというと、ウイルスが感染してできるイボを指し、これをウイルス性疣贅読んでいる。

ウイルス性疣贅はさらに原因になるイボのウイルスに少しずつ違いがあり、多くの種類がある。
最も多くみられるものが、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とよばれるもの。


いぼ=疣贅:通常ウイルス性いぼを指す
ウイルス性いぼ=ウイルス性疣贅
ウイルス性疣贅の大半が「尋常性疣贅」


原因ウイルス

ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス=HPV)が皮膚や粘膜の基底細胞に感染することで起こる。

HPVは150種類以上の型あり、型の違いによって、感染部位、見た目に違いがでる。

ヒトパピローマウイルスと聞くと子宮頸がんが思い当たりますが、あれは外陰部や膣や子宮頸部などに感染し易い粘膜型だそうで、疣贅を起こすのは皮膚に感染する皮膚型。

そして150種類以上あるHPVのうち、尋常性疣贅はHPV2型や57型などにより引き起こされる。

その他の疣贅としては
・扁平疣贅:顔、腕にできやすく、難治性のものが多い。HPV3,10型。
・足底疣贅:足の裏にできる、白色で隆起し、ざらざらしている。HPV1型。
・尖圭コンジローマ:外陰部にできる。HPV6,11型。
・ボーエン様丘疹症:外陰部にできる。HPV16型。

ウイルス性いぼ=HPV(ヒトパピローマウイルス)によるもの。
ウイルス性いぼの大半を占める尋常性疣贅はHPV2型、57型によるもの。



治療法と有効性

※ウイルス性いぼ=尋常性疣贅として説明。

ウイルス性いぼはなかなか有効性の高い治療法がないのが現状だそうです。※1

尋常性疣贅は良性であり、治療しなくても数か月~数年でなくなる(24~28週で24%が自然治癒したとの報告も※3)ものが多いようですが、見た目も気になりますし、難治性ものや増えるものもあり、足の裏などにできると生活に支障がでる。


主な治療法
外科治療
冷凍凝固療法:液体窒素により壊死させ、少しずつ縮小させる。
電気焼灼法:電気による熱でいぼを焼く。
レーザー治療:CO2レーザーでいぼを蒸散させる。

薬物治療(外用)
グルタラール:殺菌作用によりウイルスを殺す。保険適応外
サリチル酸:角質を少しずつ溶解していく。
ウレパールクリーム:小規模な臨床試験で有効性が示されている。
ビタミンD3:角化細胞増殖抑制。
ブレオマイシン:抗がん剤。局所に注射、痛みが強い。

薬物治療(内服)
ヨクイニン:漢方薬。保険適応あり。
シメチジン:免疫調整作用。明確な機序は不明。
ビタミンA:ビタミンA誘導体エトレチナートの内服。
セファランチン:適応外。

まともなエビデンスがあるのはサリチル酸と凍結療法のみとの見解が多い※5,8
※イボの種類や発生部位などが患者さんよって違うので、どれが一番いいとは一概には言えないため、個々の患者さんにあったものを行う。※1

上記のほか様々な治療法が試されている。
治療法が確立していないことがわかりますね。

では、薬物治療をメインに有効性を見ていきたいと思います。


※簡単に調べると自然治癒率は20~30%、凍結:70%程度※3、電気焼灼:65~85%※4(サリチル酸84%※4、自然治癒率は24%、その他プラセボで30%、暗示療法で27~55%、凍結療法も治癒率30%等の報告もあり)といった様々な値がでてきてしまい、ばらつきがあり一貫していない。


ヨクイニンの有効性
抗ウイルス作用(NK細胞,T細胞活性化)がある※2,3とされており、「尋常性疣贅」に適応を持っている。

市販後調査では、627例中236例(=37.6%)で治癒
→自然治癒率よりは良い結果だが、プラセボでも3割、暗示で3~5割を考えると・・・



サリチル酸の有効性
角質化した皮膚を溶解。その刺激による免疫活性作用も報告あり。

コクランのシステマティックレビュー※5では、85個のランダム化比較試験(8815名)について解析した結果、サリチル酸はプラセボより1.56倍消失率が良かった(95%信頼区間 1.2-2.03)となっている。

凍結療法についてもメタ解析の結果が出ており、消失率はプラセボの1.43倍だが、信頼区間は0.65-3.23となってしまっており、有意差はなしとなっている。


日本語版のコクランには以下のように記載されている。

"サリチル酸(SA)は安価で入手が容易な疣贅に塗布する液剤で、プラセボと比較して軽微ではあるが確実な効果が認められた。SAはあらゆる部位の疣贅に効果があり、有害作用はほとんど認められないが、効果が認められるまでに毎日使用しても数週間かかる場合がある。全体では、多くの研究の質が低かったため、非常に広範な研究から「どれが有効か」という有用な見解を述べることは難しい"


そして、こちらのレビューでは、5-フルオロウラシル、ジニトロクロロベンゼン、ブレオマイシン病変内投与、インターフェロン病変内投与、光線力学療法、抗原病変内投与などについても解析したそうですが、どれもサリチル酸、凍結療法と比較して安全性、有効性は低かったとのこと。(使用頻度が低く、エビデンスが不十分なため)


どれがいいということは難しいようですが、サリチル酸は副作用もなく、コストも低いのでとりあえずやってみる価値はありそうです。



ウレパールクリームの有効性
ほとんど報告はみないが、以前日経メディカルで取り上げられていた日本臨床皮膚科医学会での報告。

尿素軟膏20人と、他の外用薬を9人を比較。(後ろ向き研究)
尿素軟膏群では7人、他剤使用群では3人の経過不明。それらを除いて治癒率を算出すると、尿素軟膏群では13人中12人(92%)で治癒。

人数少ないですし、経過不明を除いてしまっているしエビデンスとしてはひどいもののような気がしますが、ウレパールクリームだからとりあえず簡単にできそうなのでやってみるのも悪くないのかと。



シメチジンの有効性
全身療法(内服)に関するシステマティックレビューにおいて、シメチジンの明確な有効性は示されなかったとされている。※6

いくつかのオープン試験では有効とする報告もあるそうですが、プラセボ比較では有効性なし。※4



セファランチンの有効性
文献検索してみましたが、ヒットなし。
わざわざ最初からセファランチンを試す必要はないのかと思います。



ビタミンD製剤の有効性
マキサカルシトールを投与した22名に関する症例報告があった。※7

22人中、4人は追跡不能。
22人のうち、18人(59%)で完全に消失。
追跡できた18人全員で3ヵ月以内になんらかの改善あり。
治療をやめると14人で再発。


福岡県薬剤師会の回答には以下の記載。

"活性型ビタミンD3は、カルシウム代謝調節作用以外に、表皮細胞増殖抑制作用、細胞周期調節作用、細胞分化誘導作用、皮膚免疫系細胞の調節作用を有し、尋常性乾癬等の炎症性角化症に使用される。活性型ビタミンD3はアポトーシス誘導作用も有しており、この作用による脂漏性角化症(老人性疣贅)や尋常性疣贅の治療への有効性が示唆されている。カルシポトリオール(ドボネックス)、マキサカルシトール(オキサロール)、タカルシトール(ボンアルファ)の密封療法(ODT)や、活性型ビタミンD3の浸透性を高めるためサリチル酸絆創膏との併用療法で有効性を確認した報告がある"

報告レベルではあるようですが、十分なエビデンスを示せてはいないようです。


自分のイボは、外科的治療は通院・コストが大変なので、とりあえずある程度エビデンスのあるサリチル酸ワセリン塗って、ダメならお手軽なウレパールクリーム、ヨクイニン服用でも試してみようかと思います。

まとめ

有効性のエビデンスがある治療
・サリチル酸(有効性は軽微であるが、プラセボ比較でも有効性あり)
・凍結療法(ただし、メタ解析においてプラセボ比較で有意差なし)

確立した治療がなかなかないため多くの治療法が試みられている。
無治療でも自然治癒することも十分にある。

個々の症例報告を見ると結果が出ている場合もあるため、安全性、コストを考えていろいろ試してみるのもあり。(個人的意見)


※1 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A
※2 ヨクイニンエキスコタローインタビューフォーム
※3 第81回日本皮膚科学会東京支部学術大会 石地向興 ラジオNIIKEI
※4 はなふさ皮膚科ホームページ
※5 Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;(9):CD001781.
※6 Send to J Dermatolog Treat. 2012 Feb;23(1):72-7.
※7 J Dermatol. 2006 May;33(5):383-5.
※8 第79回日本皮膚科学会東京支部学術大会 江川清文 ラジオNIIKEI
 2019年1月20日

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