オノンとシングレアの比較

ロイコトリエン拮抗薬(プランルカスト:オノン、モンテルカスト:キプレス、シングレア)の比較 有効性や安全性に違いはあるか

抗ロイコトリエン薬(LTRA)は小児喘息のSTEP1~使用される薬剤。

喘息の軽症例においては、吸入ステロイド薬とほぼ同等の効果が得られており、呼吸器ウイルス感染症に関連する喘息症状の悪化に対する抑制効果も示されている
また、吸入ステロイド薬への追加薬としての有効性や吸入ステロイド薬の減量効果も認められている。※1
(軽症~中度の場合、抗ロイコトリエンのほうがステロイドより憎悪リスクが高かったとするコクランの報告もあるため注意※2)

その他、鼻閉に効果があり、アレルギー性鼻炎にも用いられる。

モンテルカストとプランルカストの2剤があり、どちらもそれなりに処方されている。
モンテルカストは分1なので、アドヒアランス的にはこちらのほうがいいと思うのですが、小児科の前ではプランルカストの処方が多い印象。

どうしてなのか気になったので2剤を比較してみました。(主に小児への投与) 

基本情報の比較

概要

適応の違い
プランルカスト(オノン)
全剤型:気管支喘息、アレルギー性鼻炎

モンテルカスト(シングレア、キプレス)
OD錠、普通錠(5mg,10mg):気管支喘、アレルギー性鼻炎
チュアブル錠mg、細粒4mg:気管支喘息


プランルカストは喘息だけでなくアレルギー性鼻炎にも適応あり。
モンテルカストは小児適応のあるチュアブル錠、細粒は気管支喘息にしか適応が通っていない

この辺も小児においてプランルカストが多く処方されることに関係していそうです。




用法・用量の違い
プランルカスト
小児:7mg/kg 朝夕食後 (MAX10mg/kg 450mg/dayを超えない)
成人:450mg 朝夕食後 

モンテルカスト
1歳以上6歳未満:細粒を1日1回4mg 寝る前
6歳以上の小児:チュアブル錠を1日1回5mg 寝る前
成人:普通錠、OD錠を1日1回 気管支喘息の場合10㎎、鼻炎の場合5-10mg 寝る前


プランルカストは体重当たりで投与量を調整できる。
モンテルカストは年齢によって分けられているので、小児科の場合はプランルカストのほうが細かく調整できていいのでしょうか。有効性に差が出るかどうかしりませんが・・・

1日2回よりは1回のほうが一般的にはコンプライアンスが良くなるので、2剤の有効性が同じであったとしても、実臨床ではモンテルカストのほうが良くなる可能性も考えられる。
ですが、寝る前なので、食後より飲み忘れる可能性も高い…

1歳未満への投与
2剤とも添付文書は安全性は確立していないと記載されているが、プランルカストのほうは使用実態調査が行われており、副作用発現頻度の記載がある。

オノン(プランルカスト)添付文書より
1歳未満の小児(乳児)を対象に実施した再審査終了時以降のオノンドライシロップ10%使用実態調査(調査期間:2007年2月~2008年1月)において副作用集計の対象となった403例中5例(1.2%)に5件の副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。

承認時の副作用発現が2.9%であり、特別高いわけではなく、安全性に問題はなかったとされている。(さらに詳しい臨床成績は小野HPに記載あり)


モンテルカストはバラ包装がなく、体重当たりの投与量もないため、1歳未満への投与はほとんど行われておらず、データがないようです。


臨床成績の比較

①モンテルカストのプランルカストに対する非劣勢試験
モンテルカストとプランルカストの比較試験を検索したところ、1件だけ引っ掛かりました。

喘息ではなく季節性の鼻炎に対する、モンテルカストのプランルカストに対する非劣勢試験です。※3


試験デザイン
二重盲検比較(非劣勢)、2週間後のベースラインからの改善

対象
季節性アレルギー性鼻炎患者

治療
モンテルカスト5㎎(461人)、モンテルカスト10㎎(454人)、プランルカスト450㎎(456人)のいずれか
脱落者は4人のみ(モンテルカスト5㎎で1人、10㎎で3人)

結果
有効性、安全性ともにモンテルカストはプランルカストに非劣勢。



2週間というのは、以前の報告でモンテルカストの最大効果がみられた期間を基に設定されている。※4

有効性、安全性ともに2剤の間で大きな差はみられていないという結果です。



モンテルカストとプランルカストのアンケート調査結果
モンテルカストとプランルカストを処方した医師を対象にアンケート調査が行われている。

これによると、797人にLTRAの使用経験があり、プランルカスト468 人,モンテルカスト294 人,ザフィルルカスト25人,不明または複数種10人。

明らかに有効であったため継続中はプランルカスト群が多く(P : 34.6%,M : 17.3%),「効果がなかったため中止」は Mモンテルカスト群が多かった(P : 2.6%,M : 19.0%)という結果がある。※5

しかし、これはアンケート調査であり、判断基準が各医師に任されており、エビデンスとしては不十分としている。

参考程度にこのような報告もあるということで。


モンテルカストによる精神神経症状報告

モンテルカストは易刺激感、不眠、自殺企図といった精神神経症状がごくまれではあるが報告されている。

文献によってはプラセボより有意差をもってリスクがあるとされている。

このためアメリカの添付文書では警告が記載されている。
日本の添付文書にも「重要な基本的注意事項」に記載されている。

プランルカストは海外で使われていることが少ないためこのようなデータ、報告が少ないため詳細不明。





小児には1歳未満の安全性、投与量の調整、適応といった部分でプランルカストが使いやすそうです。


まとめ

有効性
2剤で大きな差はないと思われる。(医師アンケート調査ではプランルカスト>モンテルカスト)

安全性
モンテルカストは精神神経症状の副作用報告がごくまれにありFDAが注意喚起
プランルカストでは大規模臨床試験のデータなし

適応
プランルカストは喘息、鼻炎ともにOK
モンテルカストは剤型により異なるため注意

用法、用量
プランルカストは7mg/kgのため調整しやすい 1歳未満への安全性も良好
モンテルカストは年齢で投与量確定、分1なのでコンプライアンス改善は期待できる?

※1 小児気管支喘息 治療・管理ガイドライン ハンドブック2013
※2 喘息の人に対する吸入ステロイドと比較した抗ロイコトリエン薬 
※3 Allergology International. 2008;57:383-390
※4 Ann Allergy Asthma Immunol 2004;92:367-73
※5 日呼吸会誌 46(12),2008.喘息におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の有効性とその背景の検討 ―アンケート調査の結果―

 2019年1月4日

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