RR(相対リスク),AR(寄与リスク),RRR(相対リスク低下)、ARR(絶対リスク低下)、NNT(必要治療数)、odds ratio(オッズ比)の違い
まずは、以下の2×2表を共通で使用していきます。
★★本来、リスク暴露によりその疾患リスクが高くなる場合に上記表の「治療」部分を「暴露/要因」とし、暴露のあり、なしに分けてRRやAR、オッズ比を求める。
治療と疾患予防の際は相対リスク低下と絶対リスク低下を用いて計算を行うのだが、個人的にはこれが同じような図なのに別に考えなければならず、わかりにくいので無理やり同じように考えています。リスクを考えたければ治療を暴露と考え、イベント=疾患や副作用、治療効果を見たければそのまま見る。(AR,ARRの関係が見にくくなりますが、実際計算するとわかるかと思います)★★
相対リスク、寄与リスク,相対リスク低下、絶対リスク低下
相対リスク(RR)=治療群の発生率÷未治療群の発生率=A/A+B÷C/C+D
意味:2群間のイベント発生率の比
相対リスク低下(RRR)=1-RR
意味:相対的なリスク低下率がわかる。
相対リスク低下(RRR)=1-RR
意味:相対的なリスク低下率がわかる。
寄与リスク(AR)=治療群の発生率ー未治療群の発生率=A/A+B-C/C+D
意味:2群間のイベント発生率の差
絶対リスク低下(ARR)=未治療群の発生率-治療群の発生率=C/C+D-A/A+B
意味:絶対的なリスク低下率がわかる。
治療必要数(NNT)=1÷絶対リスク低下
意味:1人の発症を予防するために何人治療が必要か
絶対リスク低下(ARR)=未治療群の発生率-治療群の発生率=C/C+D-A/A+B
意味:絶対的なリスク低下率がわかる。
治療必要数(NNT)=1÷絶対リスク低下
意味:1人の発症を予防するために何人治療が必要か
主に前向きコホート研究で使用。
RCT出は基本的にこちらを使用することになる。
例)新薬の心疾患発現率に対する効果を調べるランダム化比較試験
全患者数(A+B+C+D)を、実薬群(A+B)とプラセボ群(C+D)に分けて、一定期間治療を行った結果、実薬群では(A例)、プラセボ群では(C例)心疾患が発現したとする。
わかりやすく人数は以下のようになったとすると
実薬群での心疾患発症率=A/A+B=20/100=0.2(20%)
プラセボ群心疾患発生率=C/C+D=30/100=0.3(30%)
わかりやすく人数は以下のようになったとすると
実薬群での心疾患発症率=A/A+B=20/100=0.2(20%)
プラセボ群心疾患発生率=C/C+D=30/100=0.3(30%)
相対リスク、相対リスク低下の計算
相対リスク(RR)=0.2 ÷ 0.3 = 0.67
よって、実薬を投与すると、投与しない場合と比べて心疾患のリスクは0.67倍となる。
相対リスク低下は1-0.67=0.33となり、服用により心疾患を33%相対的に低下させる。
よっ寄与リスク(AR)=0.2 ー 0.3 = -0.1て本来リスクの増加を考えるものなので、プラスの値となりリスク増加がわかるが、治療群でそのままやっているためマイナスの値になっている。(普通治療において求めないのでここはスルー)
必要なの絶対リスク低下(ARR)なので、
絶対リスク低下(ARR)=0.3(30%)ー0.2(20%)=0.1(10%)
絶対リスク低下は0.1となり、服用により心疾患を10%絶対的に低下させる。
必要治療数(NNT)=1÷絶対リスク低下(ARR)=1÷0.1=10
よって、この薬で10人治療すれば1人は心疾患を防げるということになる。
例:相対リスク低下と疾病発症率の影響
よって、実薬を投与すると、投与しない場合と比べて心疾患のリスクは0.67倍となる。
相対リスク低下は1-0.67=0.33となり、服用により心疾患を33%相対的に低下させる。
寄与リスク、絶対リスク低下の計算
では、このまま寄与リスク(AR)を計算してみます。よっ寄与リスク(AR)=0.2 ー 0.3 = -0.1て本来リスクの増加を考えるものなので、プラスの値となりリスク増加がわかるが、治療群でそのままやっているためマイナスの値になっている。(普通治療において求めないのでここはスルー)
必要なの絶対リスク低下(ARR)なので、
絶対リスク低下(ARR)=0.3(30%)ー0.2(20%)=0.1(10%)
絶対リスク低下は0.1となり、服用により心疾患を10%絶対的に低下させる。
必要治療数(NNT)の計算
これで必要治療数(NNT)を計算すると必要治療数(NNT)=1÷絶対リスク低下(ARR)=1÷0.1=10
よって、この薬で10人治療すれば1人は心疾患を防げるということになる。
相対リスク低下(RRR)と絶対リスク低下(ARR)の違いと注意
上記の結果を見ると、相対的には33%リスクを下げることができるが、絶対的には10%のリスク低下となる。
どっちをみればよいのか?
相対リスク低下は対象となった疾患発症率によって意味が大きく変わってくるため、絶対リスク低下及び必要治療数をみて、その疾患のリスクと治療のリスクとベネフィット、患者の価値観等を考慮し判断する。
先ほど相対リスク低下(RRR)は33%となったが、 もっと発症率が高く、A=40,B=60,C=60,D=40として計算すると、
RR=0.4÷0.6=0.67
RRR=1-0.67=0.33(33%)
となり、先ほどと同じ値になる。
ここでARRを計算すると
ARR=0.6-0.4=0.2(20%)
となり、絶対なリスク低下は20%と先ほどの2倍。
NNTは1/0.2=5となり、5人治療するだけで1人の疾患を防げることになる。
このように、相対リスク低下が同じでも発症率によってARR,NNTは大きく変わってくるため、ARR.NNTを計算して効果を判断することが重要。
オッズ比
オッズ比は患者-対照研究で用いられるもの。
イベント発生があった人と、イベント発生していない類似した人(マッチング)を集めてきて、要因(上図の治療)のあり、なしに分けて、イベントあり群となし群それぞれのオッズを止めて、その比をとったものがオッズ比。
オッズ比=暴露群(治療群)のオッズ÷未暴露(プラセボ群)のオッズ=A/C÷B/D
コホート研究のように人数あつめてきて追跡しておらず、治療群、治療なし群の人数はわからない(AとB,CとDはそれぞれ全く別のところから連れてきているので足して分母にできない)ので発症率は計算できない。
治療=薬剤による暴露、イベント=副作用と考え、上記表で計算すると、
オッズ比=A/C ÷B/D=20/40÷15/50=1.67
よって、この薬剤服用者の副作用発現リスクは非服用者の1.67倍にとなる。
オッズ比は相対リスクに近似する値である。
通常相対リスクが0.5-2.0、ベースラインの発症率が20%以下のイベントに対しては誤差が少ないと言われている。※1
まとめ
相対リスク、寄与リスク、相対リスク低下、絶対リスク低下、必要治療数は前向き研究。
オッズ比は症例対象研究(後ろ向き)研究に使用。
ある条件下では相対リスク≒オッズ比となる。
相対リスクでは発症率を計算できるが、オッズ比は発症率を求めることはできない。
※1日常診療ですぐ使える臨床統計学 能登洋 羊土社