ミネブロ、セララ、アルダクトンの比較

カリウム保持性利尿剤:抗MR薬(ミネラルコルチコイド拮抗薬、抗アルドステロン薬)3剤の違い 使い分けのポイントは?

カリウム保持性利尿剤であるミネブロ(エサキセレノン)が承認・薬価収載され、これで抗MR薬は以下の3剤となった。

※以下、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬=鉱質コルチコイド受容体拮抗薬=カリウム保持性利尿剤=抗アルドステロン薬は同じものとして説明


・ミネブロ(エサキセレノン)
・セララ(エプレレノン)
・アルダクトン(スピロノラクトン)


スピロノラクトンとセララは特徴がはっきりしていましたが、ミネブロが2剤にとってかわるような何か優れている部分はあるのでしょうか。

ガイドライン上の位置づけ

抗MR薬は血圧、心不全において用いられる。
ガイドライン上の記載について確認。
<
高血圧治療ガイドライン

スピロノラクトンやエプレレノンなどアルドステロン拮抗薬は,低レニン性高血圧に特に効果が期待でき, 治療抵抗性高血圧に対する降圧薬としても有用である。

心不全や心筋梗塞後(第一選択がRA系orβ遮断)において予後を改善するとのRCTが多く,高血圧を伴うこれら心疾 患 に適応となる。


エビデンスレベル
冠動脈疾患:心筋梗塞後の患者ではb遮断薬,RA系阻害薬(ACE 阻害薬,ARB),アルドステロン拮抗薬が死亡率を減 少させ予後を改善する。 推奨グレード A [エビデンスレベル Ⅰ]

心不全: アルドステロン拮抗薬は,標準的治療を受けている収縮機能不全による重症心不全患者の予後をさらに改善 させる。 推奨グレード A [エビデンスレベルⅠ]

→治療抵抗性(Ca拮抗薬、ACE/ARB、利尿剤使用でも改善しない)、心不全、心筋梗塞後で高血圧の患者に良い適応




慢性心不全ガイドライン

LVEF35%未満の有症状例には,禁忌がないかぎり全例にMRAの投与が推奨される。

エビデンスレベル
ループ利尿薬,ACE阻害薬がすでに投与されているNYHA心機能分類II度以上,LVEF< 35%の患者に対する投与 推奨クラスⅠ〔エビデンスレベルⅠ〕


→LVEF< 35%のHFrEFで症状がある場合は投与するべき。



上記のような場合に積極的に使用すべき薬剤となるわけですが、ではこの3剤でどれを使用すればよいでしょうか。

まずは基本情報の比較。

基本情報の比較


適応は圧倒的にアルダクトンが多い。(薬効的に他が使えないわけではないが・・・)

併用禁忌について、ミネブロはカリウム製剤・カリウム保持利尿剤すべて禁忌。

セララは心不全においてはカリウム製剤は慎重投与となっている。(心不全ではループ利尿剤等の投与により、低カリウム血症となり、カリウム製剤の投与が必要になる場合があるためと記載されている。※1
また、セララはCYP3A4代謝なので一部のCYP阻害薬と禁忌。

スピロノラクトンの各薬剤の禁忌理由は、
・タクロリムスと本剤の相加・相乗作用により血清カリウム値が上昇する。
・本剤と同様に抗アルドステロン作用を有するエプレレノンの添付文書において、カリウム保持性利尿剤との併用はその作用機序に基づく高カリウム血症誘発の可能性を踏まえて禁忌。
・ミトタンの薬効を本剤が阻害するとの報告がある。

上記の理由だとエネブロもおそらく禁忌にされるのでそのうち添付文書の改定があるでしょうか。そもそもエネブロがK保持利尿剤禁忌なのでどうでもよいですが・・・

スピロノラクトンの禁忌である高カリウム血症には具体的な値の記載がない。
一般的には5.5以上(5.0の場合も?)なので、そこまではよいのでしょうか。


薬理作用と副作用の比較

スピロノラクトはホルモン受容体にも作用してしまうため女性化乳房等が問題となる。
新規のエネブロはいかがでしょうか。


受容体親和性

アルドステロンが核内受容体であるMR(鉱質コルチコイド受容体=アルドステロン受容体)に結合するとNa再吸収抑制、K排泄抑制がおこる。



ミネブロ※2
アルドステロン受容体選択性が高い。(ICはセララの1/20倍、スピロノラクトンの1/10)
グルココルチコイド、ホルモン受容体への親和性はない。

セララ※1
アルドステロン受容体選択性は高い。(親和性はスピロノラクトンの1/20)
グルココルチコイドへはやや親和性あり。(MRの1/20程度、スピロノラクトンの1/1000以下)
ホルモン受容体への親和性はない。(1/100以下)

アルダクトン※3
アルドステロン受容体選択性は上記2剤より劣る=グルココルチコイド、ホルモン受容体への親和性あり。



以下は各受容体への親和性(IC50)
スピロノラクトンは受容体選択性はないものの、常用量を考えるとアルドステロン受容体への親和性はほかより強力であり、降圧作用も強いとされている。※4


アルドステロン受容体選択性
ミネブロ、セララ>アルダクトン

アルドステロン受容体親和性
アルダクトン50㎎>セララ50㎎≧ミネブロ2.5㎎
IC50から計算及び※4より



副作用

ミネブロ(国内第Ⅲ相臨床試験、総症例1250例中162例〈13.0%〉)
血清カリウム値上昇51例(4.1%)
高カリウム血症(1.7%)
血中尿酸増加17例(1.4%)
高尿酸血症13例(1.0%)

セララ(高血圧症 国内及び外国臨床試験3353例中894 例〈26.7%〉)
頭痛206例(6.1%)
めまい88例(2.6%)嘔気65例(1.9%)
高カリウム血症57例(1.7%)
疲労52例(1.6%)
ALT上昇48例(1.4%)γ-GTP上昇44例(1.3%)AST上昇39例(1.2%)
消化不良40例(1.2%)
筋痙攣34例(1.0%)
高尿酸血症34例(1.0%)

アルダクトン(臨床試験の頻度はデータなし。自発報告調査438例中58例〈13.2%〉)
高カリウム血症19例(4.34%)
女性化乳房13例(2.96%)


直接データではないので何とも言えないが、アルダクトンの女性化乳房はこれだけ明らかに抜け出ている。しっかり受容体親和性の影響を反映してしまっている。


高カリウム血症について

高カリウム血症はどの薬剤も高頻度となっているため注意。
ミネブロ、セララを対象とした第3相臨床試験(約1000例)では、ミネブロで1例のみカリウム増加で中止。

第3相試験においてカリウム値が5.5を超えた患者割合はミネブロで多く観測されている※4

血清カリウム値が5.5mEq/L以上を示した被験者の割合がエプレレノン群と比較して本薬群(ミネブロ)で大きかったこと、並びにエプレレノンでは禁忌とされている中等度腎機能障害患者及びアルブミン尿又は蛋白尿を伴う透析患者に本剤の投与対象と判断していることを踏まえ、血清カリウムに関する注意喚起の内容はエプレレノンと同等以上とする必要がある”と記載されている。

結局添付文書ではセララと同じ5.0で禁忌にとどまっている。


力価換算

ミネブロ2.5㎎ = セララ50㎎ (非劣性試験※2)
セララ50㎎ = アルダクトン50㎎ (? 常用量より)

ミネブロは2.5㎎が類似薬価比較方式でセララ50㎎と比較されて薬価が決定。


使い分けるポイント

上記内容を基に使い分けを考えてみると、

女性化乳房などのホルモン受容体による副作用がでなけれな、腎機能障害、相互作用の縛りが少ないアルダクトン(スピロノラクトン)

アルダクトンの併用禁忌であるタクロリムス、ミトタンの投与、アルダクトンの副作用があるならセララ、ミネブロ(ミネブロは高血圧しか適応がない)

セララと比較し、ミネブロのほうが高カリウム血症のリスクが高い可能性がある。

くらいでいいでしょうか。
現時点ではアルダクトン、セララのエビデンスのほうが豊富かと思うので。

※1 セララインタビューフォーム
※2 ミネブロインタビューフォーム
※3 アルダクトンインタビューフォーム
※4 ミネブロ審査報告書 7.R
 2019年2月15日

関連記事