デパケンRからデパケン細粒、シロップへの変更

バルプロ酸の徐放製剤から非徐放製剤の細粒、シロップへの変更 用量、用法はどうすればよい?

嚥下困難で変更したいという場面に何度か出くわしたのでメモ。

デパケンR錠は徐放性製剤のため粉砕ができない。
GEのバルプロ酸ナトリウム徐放錠もすべて粉砕不可。

てんかんで飲んでいる場合は、細粒やシロップへの変更による血中濃度の変動が心配。

鎮静目的で使用している場合はそこまで気にしなくてもいいのかと思いますが、それでも急激に上昇すれば肝障害、眠気等の副作用が出る可能性もあり、注意が必要。

では、どのような変更をするのが最も良いのでしょうか。


用法、用量の変更

これに関してメーカーサイトには以下の記載がある。

協和発酵キリン ホームページより

Q2 デパケンR錠からデパケン錠・細粒・シロップにはどのように切り替えたらよいですか?

A2 薬剤服用により症状が安定している場合、デパケンR錠からデパケン錠・細粒・シロップへの安易な剤型変更は推奨できません。
やむを得ず変更する場合、血中濃度の日内変動を近い状態で変更する目安は、1日投与量は変えずに服用回数を1回増やす方法が考えられます。 ただし、1日2回服用していた場合は変更に際し2つの考え方があります。

デパケンR錠分2投与→デパケン錠・細粒・シロップ分3投与 
デパケンR錠分1投与とデパケン錠・細粒・シロップ分2投与の日内変動がほぼ同程度であることから、投与回数を1回増やすとほぼ同様の日内変動のパターンを示すと推定されます。

デパケンR錠分2投与→デパケン錠・細粒・シロップ分2投与 
投与回数を増やすことでコンプライアンスの低下が懸念されるため、無理に投与回数を増やさないで切り替えます。 いずれの方法にしても剤型を切り替える際は、必要に応じて血中濃度モニタリングをしながら慎重に投与方法を決めてください。

 [参考文献] 武田明夫 他:てんかん研究, 6 (2) 196-203 (1988) [009-204] 


R錠分1と細粒・シロップ分2の日内変動がほぼ同等との記載。
なので分2なら分3でよいでしょうという推測。
インタビューフォームより実際の血中濃度を見てみます。


デパケンRと普通錠の血中濃度比較

細粒、シロップはデパケンの普通錠と同じ動態であるので、デパケン錠とR錠のデータを比較。

最大血中濃度、半減期

デパケン錠
デパケン錠600mg(n=8)を単回投与した場合
Tmax は 0.92±0.57 時間(空腹時)、3.46±0.66 時間(食後)
Cmax は 59ug/mL(空腹時)、50ug/mL(食後)
T1/2  は 8-9時間

デパケンR錠
デパケンR錠600mg(n=8)を単回投与した場合
Tmax は 10.26±1.51 時間(空腹時)、8.95±1.08 時間(食後)
Cmax は 28ug/mL(空腹時)、31ug/mL(食後)
T1/2  は 12時間




日内変動の比較 

既存のデパケン錠(非徐放錠)で治療中のてんかん患者11例を対象として、デパケンR錠(徐放錠)1日朝夕2回の分服若しくは1日朝1回服用した場合の薬物血中濃度の日内変動をデパケン錠1日朝夕2回の分服時と比較検討した。

結果は下図に示すごとくであり、デパケンR錠1日2回分服時の日内変動は最も小さく、デパケンR錠1日1回服用時と既存のデパケン錠1日2回分服時の日内変動はほぼ同程度であった。

最高血中濃度/最低血中濃度比
デパケンR錠1日2回分服時 1.17±0.16
デパケンR錠1日1回服用時 1.53±0.13
デパケン  錠1日2回分服時 1.55±0.19





単回投与時はCmaxの差が大きいが、定常状態になっていれば、R錠分1と普通錠分2でそこまで大きな差はないといったところでしょうか。

血中濃度のモニタリングをするのがベストなんでしょうが、実際なかなか難しい。
このデータを見る限り、てんかんでなければあまり気にせず変えても問題はなさそう。


まとめ

デパケンR(バルプロ酸徐放製剤)→デパケン錠、シロップ、細粒(バルプロ酸非徐放製剤)
用量は同じままで分1→分2のように用法を1回増やすと日内変動が同程度となる。

 2019年4月21日

関連記事