ディートとイカリジンの比較

虫よけスプレーの成分 ディートとイカリジンの違い 効果に差はある?

虫よけスプレーに使用されている一般的な成分はディート。

ディートは6カ月未満には使用しないようにとの記載があり、6ヶ月未満の子に使用したい場合はイカリジンを含有しているものを選択することになる。

こう聞くとイカリジンのほうが安全なんだと思うが、調べてみるとディートも別に問題なさそう。

ディートとイカリジンで有効性や安全性についてまとめてみます。

基本情報

ディート

虫よけ剤として最も一般的に使用されている薬剤。
殺虫剤で使われるピレスロイド系とは違い、殺虫作用はなく、忌避効果により寄ってくるのを防ぐ。

中枢毒性があるとの文献があるが、試験方法に問題があるとされている。

濃度は12%以下、30%のものがあり、小児(6ヵ月~12歳未満)には12%以下のものを使用する。
(12%以上は医薬品、10%以下は医薬部外品)

※小児(12歳未満)に使用させる場合には、保護者等の指導監督の下で、以下の回数を目安に使用すること。なお、顔には使用しないこと。(薬食安発第0824003号)  
・ 6か月未満の乳児には使用しないこと。  
・ 6か月以上2歳未満は、1日1回  
・ 2歳以上12歳未満は、1日1~3回


イカリジン

割と新しいタイプ(2015年承認)

濃度は5%と15%のものが販売されている。

ディートより皮膚刺激性が低く、ディートでは使用不可とされている6ヵ月未満の小児にも使用可能。



有効性、持続性について

2015年3月6日 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録 より。

イカリジンを含む製品の審査報告書より。

"本剤は、新規有効成分として、イカリジンを原液100mL中に5.0g含有するエアゾールの忌避剤です

~中略~

(1)本邦の忌避剤における本成分の位置づけについてです。申請者の説明にあるとおり、本成分はディートと同等以上の有効性を示し、米国でも効果が認められております。

先ほども申しましたが、本邦での忌避剤はディートのみであり、機構では一部作用機序が不明な部分は残るものの、ディートと異なる機序を持つ可能性が示唆されており、本成分は、新たな忌避剤の選択肢となり得るものと判断いたしました。  

(2)本剤の有効性についてです。本剤の申請時の適用害虫は、蚊成虫、ブユ(ブヨ)、アブ、サシバエ、イエダニ及びマダニでした。このうち蚊成虫、ブユ(ブヨ)に対しては、いずれも2施設の実地効力試験において、また、マダニに対しては2施設の人腕を用いた忌避効力試験において、塗布後6時間まで、10%ディート製剤と同様に、100%の忌避率が得られていることから、これら害虫に対する有効性が確認できたと判断しました。

一方で、サシバエ及びイエダニについては、本剤を用いた効力試験が実施されていないことから、これら害虫に対する有効性が明らかではないと判断しました。

また、アブの実地効力は、1施設のみによる評価でしたが、施設の実施可能性を踏まえ、塗布後6時間まで10%ディート製剤と同程度の忌避効果が認められていることから、有効性が確認できたと判断しました。"


と、いうことで、効果はディート10%とイカリジン5%は同程度の強さで、どちらも6時間は100%の効果が得られたとの結果がある。



安全性について

イカリジンについて


2015年3月6日 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録 より。

本成分は、皮膚及び眼に対して刺激性が認められましたが、その後は回復しています。

~中略~

本成分は、皮膚及び眼に局所刺激性が確認されています。皮膚刺激性については、本剤の試験及びヒトパッチにおいて、いずれも刺激性が認められなかったことから、使用に問題はないと判断いたしました。また、眼刺激性について、軽度の刺激性を認めますが、一過性の反応であり、いずれも回復していることより、安全性上の特段の問題はないと判断いたしました。

~中略~

ヒト使用時における安全性について、本剤を1日□回使用したときの推定ばく露量と、動物での反復経皮投与毒性試験の無毒性量を比較すると、成人では約113倍、小児では約192倍となり、いずれも安全係数100以上が確保されております。

~中略~

イカリジンに関しては20年ほど使われています。論文の中で1件だけ副作用が出たということが示されておりますが、それだけです。ディートと比較すると、イカリジンは1件ということで少ないという状況です。  その1件の事象というのは、接触性アレルギー皮膚炎に関して事例が出ています。イカリジン配合製剤を使用した翌日に適応部位に紅斑を生じ、皮膚科を受診しているという報告が論文の中でされております


ディートについて

薬食安発第0824003号 平成17年8月24日 厚生労働省医薬食品局安全対策課長 
 ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について より

(1) ・ディートを含有する医薬品等は、我が国において多くの人が40年以上使用してきているにもかかわらず、現在まで薬事法に基づく副作用報告はない
・ 米国、カナダ、英国などにおいて、販売停止等の措置を講じている国はない。
・ デューク大学の研究グループが行ったラット皮膚塗布試験に関する報告については、関係する他の報告に比べ低用量でディートの神経系への影響が認められているが、試験方法等の不備が見られるため、現時点では評価は困難である。 

(2)  このような状況において、ディートを含有する医薬品等について、現時点では、販売停止等の措置を講ずるだけの科学的根拠はないと考えられる。 

(3)  現在、国内で流通している製品については、使用方法等の記載が不明確なものが多いことから、適正使用を推進する観点から、製品中のディート濃度を明記させるとともに、カナダにおける記載(6か月未満には使用しない、6か月から2歳は1日1回、2歳から12歳は1日3回)を参考に、使用方法の目安等を明記させる必要がある。 

(4)  デューク大学の研究グループが報告している低用量において認められた神経毒性については、再現性等を確認するために追加試験を行う必要がある。また、ディートの神経毒性について、今後も同様な研究報告に注目していく必要がある。


ディート(忌避剤)の安全性について 【平成 22 年 6 月 8 日 平成 22 年度薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会(第 2 回)資料(抜粋)】より

経皮投与群及び持続皮下投与群とも,十分な暴露が確認された. また,経皮投与群(60 及び 300 mg/kg/day)及び持続皮下投与群(7.2 mg/body/day) ともに,末梢及び中枢神経系に対する影響は認められなかった

その他
デューク大学の文献において、ディートの神経毒性が問題とされたが、デューク大のグループによって報告された低用量経皮適用による神経毒性の情報は、4 報全てで 実験方法に不備があり、常に少数例で論じられて再現性に乏しいことから、現時点では信用でき る科学的なデータであるとは考えにくいとされている。(審議会議事録 ディート(忌避剤)に関する検討会)


英国では神経毒性による死亡例が3例報告されているそうだが、英国でのディート濃度は15~95%となっており、超高濃度なものがある。

WHOは重度の中毒はそれほど多く発生することはない。通常、高濃度製品を大量飲んだ場合や数週間にわたって多量を皮膚に適用した場合に発生する。

まとめ

ディートは承認上年齢制限がある。
イカリジンは6か月未満でも使用可能。

ただし、安全性に関してはどちらも問題ないとする報告が多い。
(ディートの神経毒性は1文献で報告があるが、試験の方法に問題があり、根拠に乏しいとされている。)

ディート10%≒イカリジン5%:6時間作用持続

各国の規制状況はこちら
 2019年5月17日

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