アルコールと睡眠薬、鎮痛剤の併用

飲酒時に睡眠薬や鎮痛剤は避けるべき? 飲酒時に禁忌の薬剤、相互作用のある薬剤

睡眠薬に限らず基本的にアルコールとともに薬剤を服用しないように指導する。

特にベンゾジアゼピン系や抗ヒスタミン薬などの中枢神経抑制作用がある薬剤は危険。
添付文書の相互作用にも記載がある。

では、痛み止め(NSAIDs)はどうでしょうか。
何でもかんでもダメといえばそこまでですが、ダメであるエビデンスはあるのでしょうか。
睡眠薬や鎮痛剤を常用している場合、お酒を飲む際は絶対薬を止めなければならないのでしょうか。

まずは添付文書の記載から。

アルコールと相互作用の記載のある薬剤

アルコールと禁忌の薬剤

オピオイド関係→呼吸抑制の危険性があるため
モルヒネ:急性アルコール中毒の場合
オキシコンチン:急性アルコール中毒の場合
コデインリン酸:急性アルコール中毒の場合
ジヒドロコデインリン酸:急性アルコール中毒の場合
タペンタドール(タペンタ):急性アルコール中毒の場合
ヒドロモルフォン(ナルサス):急性アルコール中毒の場合
メサドン:急性アルコール中毒の場合
トラマドール:急性アルコール中毒の場合

その他
メトホルミン:過度のアルコール摂取者→乳酸アシドーシスのリスク
ブホルミン(ジベトス):過度のアルコール摂取者→乳酸アシドーシスのリスク
クロザピン(クロザリル):アルコール中毒、昏睡の場合
マジンドール(サノレックス):アルコール乱用歴のある場合
シアナミド(シアナマイド):嫌酒薬
ジスルフィラム(ノックビン):嫌酒薬
ジアゼパム注射(セルシン):バイタル不良の急性アルコール中毒の場合
ミダゾラム注射:バイタル不良の急性アルコール中毒の場合
プロカルバジン:アルコール耐性を低下させるため


アルコールと相互作用の記載がある薬剤

中枢神経系薬剤→中枢神経抑制作用増強
睡眠薬(BZD系、非BZD系、バルビツール系、ロゼレム、ベルソムラ)
オピオイド関係
抗うつ薬(3環、4環、SSRI、SNRI、NaSSA)
統合失調症治療薬(D2遮断、MARTA、DSS)
AD/HD治療薬

アセトアミノフェン含有→肝機能障害リスク
PL顆粒、セラピナ、サラザック、ピーエイ
SG顆粒
カフコデ
カロナール、アセトアミノフェン
トラムセット

その他
アスピリン含有製剤:消化管出血リスク増強
アイファガン点眼:交感神経抑制作用に相加的に作用し、鎮静作用増強
アストフィリン:ジフェンヒドラミン含有のため鎮静作用増強
アタラックスP(ヒドロキシジン):中枢神経抑制作用増強
アレサーガテープ(エメダスチン):中枢神経抑制作用増強
インデラル(プロプラノロール):アルコールにより吸収変化、作用増強or減弱
オキサトミド:中枢神経抑制作用増強
ギャバロン(バクロフェン):中枢神経抑制作用増強
クロルプロマジン:アルコール不耐性の恐れ
クロルフェニラミン含有製剤(ポララミン等):中枢神経抑制作用増強
ケトチフェン(ザジテン):中枢神経抑制作用増強
コレアジン:中枢神経抑制作用増強
ザイザル:中枢神経抑制作用増強
サイクロセリン:アルコールの作用増強
スルピリド:中枢神経抑制作用増強
セレスタミン:クロルフェニラミン含有のため鎮静作用増強
セチリジン(ジルテック):中枢神経抑制作用増強
セフメタゾール注:ジスルフィラム様作用発現
チアプリド:中枢神経抑制作用増強
タリージェ:中枢神経抑制作用増強(注意力、平衡機能の低下)
トリクロルメチアジド:起立性低血圧を増強
テルネリン(チザニジン):中枢神経抑制作用増強
テグレトール:中枢神経抑制作用増強、過度の摂取は控える
デムサー(メチロシン):鎮静作用増強
トラベルミン:中枢神経抑制作用増強
ニポラジン(ゼスラン):中枢神経抑制作用増強
硝酸製剤(アイトロール等):血圧低下作用増強
ニトログリセリン製剤:血圧低下作用増強
ビ・シフロール(プラミペキソール):薬剤の作用増強、機序不明
フィコンパ:中枢神経抑制作用増強
ブロモクリプチン:アルコール不耐性の恐れ
フラジール(メトロニダゾール):アルデヒド脱水素酵素阻害
プリミドン:中枢神経抑制作用増強
ペリアクチン(シプロヘプタジン):中枢神経抑制作用増強
ボノピオン:メトロニダゾール含有のため
ミラペックス(プラミペキソール):薬剤の作用増強、機序不明
メキタジン:中枢神経抑制作用増強
ランピオン:メトロニダゾール含有のため
リリカ:認知機能障害、運動機能障害に相加的に作用
リンラキサー(クロルフェネシン):中枢神経抑制作用増強
ロゼックスゲル(メトロニダゾール):アルデヒド脱水素酵素を阻害するため
ワーファリン:アルコール常用者の場合、酵素誘導による作用減弱or肝機能低下で作用増強

※添付文書の相互作用に記載のあるものを抽出



精神系全般(ベンゾジアゼピン系、向精神病薬、抗うつ薬)は併用注意。
抗アレルギー薬は鎮静作用の強い一部の薬剤(ニポラジン、ポララミン、ケトチフェン等)が注意。
ザイザルは第2世代だが注意になっている。

抗生剤ではメトロニダゾールがアルデヒド脱水素酵素を阻害してしまうため併用注意。
セフェム系の一部(セフメタゾール等の静注剤)も同様。

アセトアミノフェン含有製剤は肝機能障害のため併用注意。



では、併用注意の場合、どこまでやめるべきなのか。
飲まないにこしたことはないこと前提でガイドライン等を拝見。


ベンゾジアゼピン系服用時のアルコールについて

アルコールはベンゾジアゼピン系の中枢神経抑制作用増強のほか、CYP競合阻害により相互に作用を増強する可能性がある。

ベンゾジアゼピン系とアルコールの併用によりふらつき、健忘リスクの増加だけでなく呼吸抑制も増強してしまう可能性がある。※1
(アルコール常用者の場合、CYP誘導によりベンゾジアゼピン系の効果が減弱することもある)

ガイドラインの記載
"「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」

【Q8】 睡眠薬は、晩酌後何時間くらい空けてから服⽤したらよいでしょうか?

【患者向け解説】 お酒(アルコール)を飲んだ時には睡眠薬は服⽤しないことが原則です。その理由は、アルコー ルと睡眠薬を⼀緒に飲むと、ふらつき、物忘れ、おかしな⾏動をしてしまうなどの副作⽤を⽣じやすくなるからです。お酒の酔いが醒めてから睡眠薬を服⽤するということも考えられますが、アルコールの影響が体から消失するには、⼀般に考えられるより⻑い時間が必要です。成⼈男性で、コ ップ1 杯のビールの代謝に約2時間を要します。晩酌後には睡眠薬を服⽤しないことが無難でしょ う。

【勧告】 アルコールと睡眠薬の併⽤は、副作⽤の頻度と強度を⾼める可能性があるため、原則禁忌である。 アルコールを代謝した後に睡眠薬を服⽤することは可能であるが、アルコール代謝は⼀般に考えら れているよりも⻑時間を要することに注意すべきである。"


その他の文献
ゾピクロン、ニトラゼパムとエタノールの相互作用
アルコールによりベンゾジアゼピン系の薬剤の作用が増強されなかったとする報告もある。※2
(副作用を見ているというより、睡眠効果を見ているので、増強効果がない≒一緒に飲むとよく眠れるわけではないと考えることもできるし、作用増強されないのであれば転倒
健忘リスクもそこまで上昇しないのでは?とも解釈できそう)



ベンゾジアゼピン系+エタノールによる副作用増強を調べている臨床試験を探してみましたが見当たらず。


鎮痛剤服用時のアルコールについて

添付文書上で引っかかってくるのはアスピリンとアセトアミノフェン。

アスピリンの併用注意の理由は、アルコールによる胃粘膜障害と本剤のプロスタグランジン合成阻害作用により、相加的に消化管出血が増強すると考えられる。

NSAIDs全般がPG合成阻害により潰瘍リスクとなるが、アスピリン以外は記載なし。
アスピリンの場合、抗血小板作用のほうも影響しているのでしょうか。

アルコール,NSAIDsどちらも胃潰瘍リスクであり併用しないに越したことはないが、併用によるリスク増強は不明。(見つかりませんでした。)


アセトアミノフェンは肝機能障害のリスク増強のため。(これは併用というより常用の場合の問題)
もちろん同時摂取で肝臓に負担がかかることは確か。




鎮痛剤継続服用中に、たまにアルコールを併用することでどの程度副作用リスクが増加するかはよくわかりませんでした・・・
またよい文献が見つかったら更新。


まとめ

薬剤服用時にアルコールを避けるべきということを前提に、

睡眠薬:中枢神経抑制作用増強、呼吸抑制リスク、酵素誘導or阻害による作用減弱or増強などが理論上考えられるが、臨床試験データ見当たらず

鎮痛剤(NSAIDs):NSAIDs、アルコールともに胃潰瘍リスクだが、たまに併用したからどうなるかは不明。

鎮痛剤(アセトアミノフェン):アセトアミノフェン、アルコールともに肝障害リスクだが、またに併用しらからどうなるかは不明。

※1 岡山医学会雑誌 第120巻 May 2008, pp。 91-94
※2 Int Clin Psychopharmacol. 1990 Apr;5 Suppl 2:105-13. 
 2019年6月15日

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